暴走書家

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『雨上がりの背中-2-』

 「また、会える?」
 そうオトコが尋ねてきたのを、俺はとっさには答えられなかった。
 今日は俺にとって、特別な日だった。
 普段では、絶対に曝け出さないような自分を見られてしまったから。
 だから、何となく、やはりこのオトコにまた会うのは、何となく気が引けた。

「複雑そうな顔をしてるね。弱みを、見られたと思ってる? だから嫌? でも……もし、君がまだココロにわだかまりを持っているなら、それを知ってる俺と会うのも得策じゃない? 誰にでも良い訳じゃないでしょ? 今日は、たまたま俺だっただけで。」

 全てが、吹っ切れたわけじゃない。
 本当は、独りで抱え込むはずだった。
 それを、このオトコに曝してしまった。
 他人に、これ以上甘える気はない。
 けれど、そうでなくても、もし、また、このオトコと話が出来るなら。

「多分、まだ、雨が降ってるよ。だから、傘貸してあげる。俺は、よくあのバーに行くから、気が向いたら返しに来て。」

「俺に傘を貸したら、貴方はどうするんですか。貴方が濡れるじゃないですか。」
「そこら辺の、コンビニで買うよ。」
「それなら俺が買います。元々、貴方の傘なんだし。」
「嫌だな。これは、また会うために口実なんだよ。だから、俺の傘を君が持ってなくっちゃ成り立たない。」

 そう、この男が言うのは事実。
 この口実に、つけこんで、また俺と会おうというのか?
 でも、そんな口実は、本当は、ちょっとした契機(きっかけ)になるかもしれないけれど、確かな約束ではない。

「俺は、傘を借りても、捨ててしまうかもしれないですよ?」
「それならそれで仕方がないよ。でも、もし、君が、また俺と会ってくれるなら、話しかけやすいだろ?」
「本当に返すだけかもしれないですけど。」
「それでも構わないよ。元々、俺が、君の弱みに付け込んだみたいだし。」
「そんなに……付け込まれるほど、弱ってたとは思いませんけど。」
「でも、そう思えたほうが、楽に忘れる事も出来るよ。」
「それは……何の事についてですか?」
「色々と。」

 好きだった、友人の事だろうか、それとも、このオトコの事だろうか。
 楽に忘れる……忘れたい事を、本当にすぐに忘れられたらどんなにいいだろうか。
 忘却とは、人が生きていくために生み出した、力。
 それが、良い事なのか、悪い事なのかわからない。

「傘、お借りします。」
「うん。答えを出すのに急がなくていいから。焦って、答えを出そうとして、見失ったら何もならないからね。まあ、時間をかけて考えたからって、その方が、良い答えが出るとは限らないけどね。」

 考えて行動した方が良い事もあるし、考えずにただ、行動に移した方が良い事もある。
 そう、今日のように。
 けれど、与えられた猶予期間があるのなら、俺なりに考えてみたいと思う。

 そして、期間をあけて、会いたいと思った時、もしかしたら、このオトコに、別のオトコがもういるかもしれない、そんな可能性だってある。
 しかし、その時はまた、その時の話だ。

 そうして、そのオトコと別れて、家に帰って、落ち込まずにいられたのは、やはり、あのオトコと色々話せたからだと思う。
 そして、不覚にも泣いてしまった所為だと。

 翌日は、きちんと目を冷やして寝たおかげか、泣いた後は見られなかった。
 昨日のような一日を終えた後でも、日常というものはいつものようにやってきて、仕事に専念していられるのは、幸いだった。
 そうして、しばらく、仕事に没頭する日々を送っていた。

 けれど、それでは、まだいけない、と思ったのは、やはり、どこか、自分から逃げている気がしたから。
 また、そのオトコに縋ろうと思った訳ではない。
 けれど、機会があるのなら、会ってみたいと、思ったから。

 そのオトコは、『よく行く』と言っていたけれど、どれくらいの頻度で行っているのかわからない。
 もし仮に、今日行ったとしても、会えるとは限らない。
 それでも良い。
 俺は、鞄に傘を入れて、会社に向かい、仕事が上がると、そのバーへ向かった。

 実際は、会うのも、会えないのも、どっちも怖かった。
 だから、結果がどっちに転んだとしても、それを受け止めよう。

 店を、見渡してみても、そのオトコの姿は見えなかった。
 もしかしたら、まだ、店に来る時間じゃないのかもしれない。
 もう少しだけ待ってみよう。
 そうして、入り口の見える場所に座り、この一杯だけ、と決めて、酒を注文する。

 グラス半分くらいになったところで、オトコが、店にやってきた。
 そうして、入り口に目をやっていた俺と、必然的に目が合った。
 オトコが、俺の元へやってくる。

「やあ、久し振り。もしかして、会いに来てくれた?」
「一杯だけ飲んで、それで、会えなかったら帰るつもりでした。」
「じゃあ、ラッキーだったね。間に合ったんだから。」
「あ、はい。これ、傘。」
「律儀にどうも。」

「貴方こそ良いんですか? 俺に構ってて。よく店に来るんなら、他にお相手を探せば良いのに。」
「そんなに、モテるもんじゃないよ。まあ、出会いは大切だけど、そればっかりが目的でもないからね。」
「モテそうに見えますけどね。」
「ありがたいお言葉をありがとう。でも、実際モテたとしても、気に入った相手じゃなければ、意味ないしねぇ。君だって、オトコなら、誰でも良い訳じゃないでしょ?」
「まあ、そうですけど。」

「もう、グラス、空きそうだね。どうする、まだ飲む?」
「貴方こそ飲まないんですか?」
「俺? 俺は別にどっちでもいいかなぁ。」
「じゃあ、折角だから、もう一杯、一緒に付き合ってください。」
「OK。」

 それから、単純にアルコールを味わって。
 他人の会話の端々がこぼれる中、店に流れる、音楽に耳を傾けていた。
 その間、俺たちの間で会話はなかったけれど、特に、気を使う必要もなく、ただ、流れる時を感じていた。
 空いたグラスに残った氷だけが、カランと音を立てた。

「出ようか。」
「ええ。」
 店を出て、見上げた空は晴れていたけれど、都会の空には星は見られなかった。
「良かった。今日は晴れてて。」
「星は、見えないですけどね。」
「星か。あれも、不思議な存在だよね。それ自身が輝く星もあれば、その光を受け取って、あたかも輝いているかのように見える星もある。でも、もし実際見えたとしても、現実に目にする星は、もう、ずっと前に放たれていた光なんだよね。」
「地球もまた、そんな星の中の一つなんですよね。」
「そうだね。」
「例え見えなくても、そこにある星は、確かにあるんだから。」
「見えたとしても、もう存在しない星もあるしね。」

 星も命をもっている。
 それが、人間のそれよりずっと長かったとしても。

「星は、滅びる時、何か、想うんだろうか?」
「さあね。確かに、星は、生まれ、滅びるけれど、生命を持っているかどうか謎だね。無機体の集合だから。いや、生命体だったとしても、そこにココロが宿っているとは限らないし。」

 ココロがあるから、人は、人を好きになれる。
 そしてその逆も。
 時にわずらわしく思っても、確かに何かを感じるココロはそこに『ある』んだ。

「ねえ、俺が、貴方を抱いても良い?」
「いいよ。君が望むように。」
「貴方、タチなんじゃないの?」
「俺? まあ、基本はそうだけどね。別に逆が嫌いなわけじゃないよ。」

 このオトコが、それを、俺に許すのは何でなんだろう。
 それを、望んだ俺が思うのもなんだが。
 まあ、それは、後で考えれば良いか。

 重ねていく唇にその温度を感じる。
 軽く唇を開かれて、誘われるように舌を差し入れて、そのオトコの口内を味わう。
 舌を絡めあって、それを、吸い上げて。

 そして、先日、俺を抱いた、その、カラダに指を這わせていく。
 摘み上げた乳首にピクリ、とカラダが反応したのがわかった。
「ん……」
 そうして、尖っていく乳首に舌での愛撫を加えていく。
 過敏になった神経が、その刺激を快感に変える。

 感じている証拠に、そのペニスは勃起していた。
 そして、同じように、俺のペニスも。
 オトコの指が、俺の勃起したペニスを撫で上げた。
 それから、口で咥えられて。

「ちょっ……あんまりされると、長く、もたないよ。」
「うん、そうだね。」

 口淫から逃れて、今度は、その男のアナルに指を這わせる。
 ローションを使って、そこを解してゆく。

「いい? もう、イれても。」
「ん。うん。」

 多分、まだちょっと、キツいな、とは思ったけれど、俺も、そろそろ限界な訳で。
「…く…んん……はぁ…ん……」
 だけど、ちゃんと、このオトコが、感じられるように、腰を動かす。
 締め付けられて、つのる射精感を我慢しながら、抽挿を繰り返し、感じられる場所を擦りあげる。

「あ……は…あ…ああ……」
 漏れる吐息と、その声が、また俺の官能を刺激する。
 そして、たまらず、俺は射精していた。

 それから、まだ勃起している、男のペニスに手を伸ばし、扱きあげ、射精へと導く。
 挿入したままだった、ペニスが、その締め付けに僅かに反応してしまったけれど、そこはそこで、自制心を働かしてというか、抜き去った。
 『別に、我慢しなくてもいいのに』と、そのオトコには言われたけれど。

 一度射精して尚、勃ちかけたペニスを、男の口内に再び取り込まれ、その口淫によって、再び射精した。
 『溜め込むのは毒だよ』と。

 そして、俺が、実際溜め込んでいるのは、それでだけではない事。
 きっと、このオトコには見抜かれている。
 それが、毒なのかどうかわからない。

 それでも、もし、吐き出せる相手がいるのなら。
 それを受け止めてくれる相手がいるのなら。
 こんな幸運な事はないだろうと思う。

 もたれかかった背中に、もう少し、もたれさせてもらっても、きっと、この男は許してくれると。
 そんな、感じがしていた。
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