暴走書家

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『白香桜乱-3-』

 僕が、彼女に出会ったのは、ほぼ、仕組まれたお見合いだった。

 僕の家は、祖父の代に会社を立ち上げ、父が更に手を広げて、大きくした、今は、世間では、そこそこ名の知れたグループ企業である。
 ゆくゆくは兄が、跡を継ぐのだろう。
 次男である僕にも、それなりの責務は与えられており、同期として入社した人間よりも、その名前もある所為か、上司から、同じように扱っているのだろうけれど、どこか違う部分があった。
 跡を継がない、僕でさえそうなのだから、兄の時はもっと違ったのだろうと思う。

 兄の結婚は早かった。
 大学を出てすぐ、大学時代から付き合っていた彼女と結婚して、間もなく、子供が生まれた。
 両親が、賛成するも、反対するもなかった。
 その頃には、もう既に、兄の子が、彼女のお腹の中にいたのだから。

 彼女の家は、古くからの伝統のある、茶道の名家で、彼女自身の両親は、いないのだが、親代わりとして、育ててきた、彼女の実母の弟であり、現在の家元でもある。
 僕の父と、彼女の育ての父親がどうやって知り合ったかは知らないが、兄が勝手に結婚を早々と決めてしまったからか、『家柄』が欲しかったのか、彼女の方の家としても、彼女をどうにかしたかったからか、とあるパーティーで紹介された。

 今は、ワンピースを好んで着る彼女だが、その時は、着物を着ていた。
 その姿はその姿で、とても似合っていたと思う。
 紹介された時、挨拶が遅れて、見惚れるくらい、綺麗だったが、彼女は、僅かにも、表情を崩さず、僕があわてて挨拶をした時も、ただ無言で、興味なさげにしていた。
 何も言わない、彼女の代わりに、彼女の父親代わりの男性が、何かを話していたが、僕の耳には、あまり届いていなかったし、彼女も、その事を、気にとめる事は全くなかった。

 僕も僕で、あまり気の利いた事は話せていなかったと思う。
 彼女に何かを話し掛けても、何一つ返事は返って来なかったし、親代わりの男性が、何か話すようにうながしても、『いいえ。何も』と、ただ一言だけ発しただけだった。
 男性の方が、必死だったのではないだろうか。
 僕の事をさして『彼は、中々、優秀な人物でね』と色々、彼女に対して、僕が気恥ずかしくなるぐらいの事を説明していた。
 僕は、もしそんな事を僕自身の親の口から発せられていたら、確実に、途中で止めさせていただろう。
 会って、間もない男性だったから、それをどうやったら、角が立たないように止められるかどうかわからなかったし、そんな話をしても、彼女の方は、全くやはり、僕の方に興味を寄せる事はなかった。

 その男性に対して、やはり、他人から聞いても大げさに取れるのではないかと思われる説明も、きれる事もなく、本当にずっと無表情でいた。
 僕は、彼女に興味を持っても、仕方がないんだろうな、と思いつつも、本当に何一つ表情を変えない彼女にも、興味を持った。

 その後半ば無理矢理、それぞれの親に連れられて、そのホテルにある、レストランに行く事になったが、彼女は、それも別に気に止める事もなく、付いて来た。
 『そういえば、私はあまり詳しくないが、お前は、株をやっているんだろう? 彼の会社は、この不景気でも、中々好調らしいじゃないか』そう言った男性に対して、彼女は『ただの退屈しのぎですわ』と遮断した。
 男性も、彼女のその態度に慣れているのだろうし、それ以上は、男性が、彼女に何を言っても無駄だろう、親達は去り、僕と彼女、二人が、その場に残された。

 二人っきりになってしまえば、彼女は、依然、自ら何も話そうとしないし、僕も僕で、今まで付き合ってきた相手としたような話を彼女にしても、無駄だろうな、と思って、そのまま沈黙が流れた。
 どれくらいそうしていただろう。
 食事のための食器は全て既に下げられており、お茶の入った湯飲みだけが、テーブルの上にある。
 それを、時折、口にするだけ。

 『あの……こうしていても、つまらないでしょう? もう出ませんか?』そう提案した僕に対して、彼女は『私は別に構いませんわ。お先に、帰っていただいて、結構ですわよ』そう返答してきた。
 『はあ、でも、女性を一人残して帰るのは……。』やはり気が引けるのではないだろうか。
 『そのような事、気にしてくださらなくっても、構いませんのよ。ここから、家に帰るくらい、私、一人でも出来ますもの』
 『いえ、そうではなくて、ここにこのままいても、退屈ではないのかと。』
 『何故?』
 『何故……と言われても……』僕の方も困ってしまって、それでも、席を立つ事が出来なくって、再び、無言の時が過ぎる。

 うーん、こういうのって、気不味きまずくないんだろうか。
 初対面で、二人きりにさせられて、まるっきり無関心で、『かたわららに人なきがごとし』なのだろうか。
 僕が、ここにいてもいなくても、同じなのかもしれない。
 きっとそうなんだろうな。
 それなのに、ここにまだいる僕って何なんだろう。
 高飛車たかびしゃにものを言っているわけではないんだけど、相手を突き放しているような感じがする。
 そうすると、普通、相手は去っていくだろうな。

 彼女にとって、こういう事態は、初めてではないのではないだろうか。
 『失礼ですが、こういう風に男性と会わせられるのって、何度か、経験があるのですか?』
 『そうですわね。はっきりとは覚えていないけれど、3回くらいあったんじゃないかしら。』
 『いつもこんな感じなんですか?』
 『その時の相手によるけれども、私が何も話さないから、大概は、先に帰っていきますわ』
 『まあ、何となくわかります』
 『おわかりになるのに、お帰りにならないの?』
 『僕も、急いで帰る必要はないですから。』
 『あら、そう。』

 彼女は、どうもいい相手と、どうでもいい時間を、こうやって過ごしていて、何を感じているんだろうか。
 そんな彼女に対して、僕は何を感じているんだろうか。

 その時、僕は彼女に対して、何を言ったのか、忘れてしまったのだけれど、ふと、疑問に思ったことを口にしていた。
 そうしたら、彼女は、それまで、ずっと表情を変えなかったのに、ふっと微笑んだ。
 『面白い事仰られるのね』
 僕にとって、それはとても印象的だった。
 その一瞬の笑みが、頭に焼きついた。

 『あら……もう、こんな時間ね。そろそろお帰りになりませんこと?』
 『あ……そうですね。あの、またお会いできますか?』
 『わたくしと? 貴方あなたがお構いになりませんのでしたら。』

 そうして、彼女とその日は別れて帰った。
 家に帰って、一応親に、彼女と、再び会う旨を伝えたら、少し驚いていた。

 それから何度か会って、大して何か話をする訳ではないのだけれど、漠然とだけれども付き合っていき、彼女との生活をスタートさせる事になる。
 そして、色々、僕が知らなかった、新たな世界を知る事になるのだけれど。
 時折向けられる、彼女の微笑と共に。
 その微笑の誘惑に、僕はあらがう事が出来なかった。

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これはどうですか / 2009年01月05日(Mon) 20:18


 
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