暴走書家

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『まやかしの共有-9-(完)』

 どんなに生きている事を希薄に感じても、やはり俺は生きている限りは、生きなければならない。
 そんな中で、どうやって生きていくのか。
 雫さんが話した事は、一つの意見であり、丸々、そのまま俺に当てはめる事は出来ないし、雫さんもそうは考えていないだろう。
 けれど、俺が、悩み問い続ける上で、一つの足掛かりになる事は確かだと思う。

 マジョリティの感覚を受け入れられず、俺の感覚もまた、マジョリティに受け入れられる事はなくて、それでもそれが欲しくて、その裏返しとして、妬んで、憎んできたのだろうか。
 そうだとしても、マジョリティの価値観を認識しておかない訳にはいかない。
 そして、数多あまたのマイノリティの存在も。
 受け入れる事は出来なくても、その存在を認識しておく事、全てのマイノリティを把握できなくても、もし、その存在を知った時に、無視する事は出来ない。

 自分自身を好きになれない現状で、誰か他人を好きになる事は出来るのだろうか。
 好きか嫌いか、それ以外の感覚、物、人間においても、二分化されるものではない。
 俺は、どうしても、極論に走りがちだが、その危険性を知らない訳ではない。
 黒か白かはっきりとさせる事。
 必要な場合もあるが、グレーゾーンの存在もまた、その黒と白の割合がどうであれ、認めなければならない。

 イエス、ノーをはっきりとさせる欧米文化と、曖昧性の中に、色々な意味を含めてきた日本。
 近代化の中で、欧米文化を取り入れ、あたかも、そちらの方が良い様な捕らえ方がされてきたが、どちらが、本当に良いのか、それもまたわからないだろう。
 それぞれ、その歴史の中で築き上げてきたものだから。
 ただ、やはり、閉鎖的であった日本が、世界の中でその一部として存在していく為には、受け入れる事も必要だし、築き上げてきた文化を保存する事も大切だろう。

 現に、日本の文化で世界に受け入れられているものもある。
 諸外国に学ぶ事もまた必要で、そうやって成長していく面もあるのだろう。
 アイデンティティと言う概念を持たなかった日本人は、自己を確立する事はやはり苦手なのだろう。
 どんな俺であっても、それは俺であり、それを認めなければならない。
 そして、どんなカタチであれ、他者や社会と関わっていかなければならない。

 想一は、『俺が望む限り』と言った。
 今、俺は確かに想一の色んな面で存在を望んでいる。
 では、想一は、望まないのか?
 関係を続ける事を。
 いや、望んでも、必ずしも叶う訳ではない事を、知っているからだろう。

 長い時間でなくとも良い、共に過ごせる時間がある事、それはそれで有意義だ。
 そして、ごくたまに普段よりは長い時間を共に過ごす事、それもまた別に楽しみである。
 以前は、絶対に踏み込んで欲しくなかった自分の家も、想一なら構わない、と思い出したけれど、短い時間を過ごす時は、想一の仕事の合間であって、想一の家から遠く離れる訳にもいかず、多少長く時間が取れても、想一は、自分の家の方が寛げるようだから、結局は、想一の家で過ごす事になる。

 想一は、以前は、仕事の合間の数時間を、相手と過ごす事はなかったと言った。
 仕事の合間といったって、色々あるだろうし、俺にも俺の仕事があり、都合があるから、そうそう頻繁に会っている訳ではないが、想一が想一なりに俺に対して、多少歩み寄りをみせたのは、やはり、雫さんが、始めに言った、『時間を作らせる』という言葉が、効いているのではないだろうか。
 そして、久し振りに今日は少し長く時間が取れそうだ。

 行きつけの店で食事をして、休憩を取ってから、ベッドの上で縺れ合う。
 背中をベッドに預け、下から、求めるように想一の腕が俺の首に巻きついてくる。
 そんな想一に口付け、舌を絡ませて、口腔内を味わう。

「…ふ……ん……」

 一旦、離れた唇から吐息が漏れ、それを奪うかのように再び口付けて。
 軽く触れるような口付けが次第に深まって交じり合った唾液は、どちらのものなのか。

 想一の肌に這わせた指がカラダのラインをなぞっていき、唇を首筋に落して、吸い上げる。

「……ぁ……」
 そのまま、舌先で肌を撫で、鎖骨に軽く歯を立てた。

「…は……ぁ……」

 乳首に辿り着いた指が、そこを弄ると、勃ち上がってくる。
 勃ち上がった乳首を、摘んで転がす。
 そこに唇をあてて舌先で同じようにして、甘噛みする。

「……ぁ……ん……籐也……」

 お互いのペニスに手を伸ばすと、そこは、欲望の兆しを見せている。
 一旦、想一が、カラダを起こし、俺のペニスを模る様に舐めて口に含んでいく。
 舌を強く押し当てて、深く飲み込んでから、唇と舌で刺激し、硬さが増してくる。

「……想一……んん……」

 完全に勃起した俺のペニスから口が離されると、今度は、俺が、想一のペニスを咥えていく。
 唇で扱いて、吸い上げて、硬度が増すのを味わいながら、アナルに指を伸ばし、解していく。
 解しながら内壁の感じる部分を探り当て、そこを指で刺激する。

「あぁ……ん……ぁ……籐也……も……」

 指を抜き去ると、アナルとゴムを着けたペニスにローションを垂らして、挿入していく。
 入り口のキツさを味わいながら、奥まで挿入しきって、そこで、一旦動きを止める。
 そのまま、想一に軽く口付けて、唇を離してから抽挿を開始する。

「……んん……ぁ……あぁ…っ……ぁっ…!」

 内壁の感じられるその場所をペニスで擦るように抽挿する。
 ペニスをギリギリまで引き抜いてから、突き上げると、想一の口から、声が漏れる。

「……イイよ……籐也……ソコ…!……あ…っ…!」

 俺も、想一も限界まで感じている。
 そして、射精を促すようにペニスに手を這わせ、扱いていく。
 想一も、アナルを締め付けて、俺のペニスに刺激を与える。

「……籐也…!……イ…く……んん……ぁあ…っ…!」
「ん……く……ぁ……」

 やがて、二人とも射精を向かえた。
 萎えたペニスを引き抜くと、想一が俺に覆いかぶさってきて、唇を求めてくる。
 その口付けに答えて、唇を重ね合わせる。

 ゆっくりと、想一の愛撫によって、再び欲望が昂ぶってくる。
 それは、想一も同じで。

 アナルに想一のペニスを受け入れて、突き上げられて、その快感に酔いしれる。

「…あ……ぁあ……ん……想一……っ…!……ぁ…っ…!」

 その僅かな時を、少しでも長く感じていたかった。
 それから、絶頂を迎えても、それは、終わりではない。

「…想一……もう少し、このまま……」
「ん…。」

 萎えてもまだリアルに繋がっていると感じられる。
 それが、例えまやかしでも、少しでもそこにリアルがあれば。
 そして、それを、共有していければ。

 ペニスが抜かれ、シャワーを浴びて、情痕を洗い流して、ベッドの上に身を投げる。
 何かを話したり、話さなかったり。
 そして、時たま、想一は、いつもベッドの脇に置いている紙とペンを手にとって、そこに、何かを描いている。
 インスピレーションも大事だから、と、こんな時にでも、仕事に繋げていく、そういう想一が嫌いではない。

「そういえば、籐也、あのバーによく行ってるんだって?」
「よく……って言えるかどうかわからないけど、たまに通ってる。」
「雫とも、まだよく話してるの?」
「一時期ほどは、もうあんまり。マスターとも、雫さん相手とは違う話をしたりするし、独りでも、楽しめるから。」

「そっか。まあ、でも、紹介して良かったよ。あそこは、結構、客を選ぶから。」
「俺も、想一に会えて、あの店を紹介してくれて、感謝してる。」
「籐也は、俺に何を見てるんだろうか。」
「何だろう。『自己』は『他者』なくしては、ありえない。俺にとって、一番近い、『他者』が想一なんだと思う。観ている世界は、全然違っても、幻想は共有し合えるって、雫さんは言ってた。」

「共有、ねぇ。価値観が違っても、その相性が合えば、やっていけるんだろうね。」
「想一は、雫さんには絶対的に踏み込めない領域があった、って言ったけど、敢えて、踏み込もうとは思わなかったの?」
「思わなかった、とは言わない。でも、出来なかった。そして、しなかった時点で、結局は同じなんだ。」
「考えて、そして、何らかのカタチで行動に移す事か。」

 思うだけでも、行動するだけでも、足りないものがある。
 俺にとって、行動とは、他者との対話にある。
 幾つになっても、仮初の答えを出しながら、問い続けていく。
 その時、その時のベストであって、よりベターな答えを求めて、俺の人生を模っていく。

 どんなに自己否定をしても、他者を否定しても、それは認めざるを得ない俺だから。
 そして、想一がそんな俺を否定しないから、俺は想一と共にいられる。
 俺も、想一が観ている世界を、否定せずに見守っていきたい。

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