暴走書家

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

『まやかしの共有-2-』

 自分自身に人間としての感覚の欠如に気付いていて、それがどうしてそうなったのか、何の所為でそうなったのか、原因を探してみても見つからなかったし、社会や周囲の人間の所為にしてみたって、結局俺自身が変われる訳ではないので、そんな責任転換をしてみても仕方がなかった。

 全て俺自身の所為なんだよ、なんて卑下て見ても虚しいだけで、そんな事をして他人の同情を拾ってもらおうなんて考えていなかった。
 例え同情を向けてもらったとしても、俺は受け入れることが出来ない。
 捻じ曲がった視点でしか物事を捉える事の出来ない俺は、結局、他人と深く関わらない事で、自分自身の中に浮き上がる苛立ちや嫌悪感から避けて通るしかなかったのだ。

 そうやって、俺が今まで切り捨て、諦めたものを惜しいとは思わない。
 多分、多くの人を傷つけて生きてきた。
 俺の無配慮さは、自覚出来ないが故にその暴力的である事を止める事が出来なかった。

 人は傷つけ合って生きていくもの、そう言われても、他人を傷つけるかもしれない、不安、そしてもしかしたら、自分も傷ついているのかもしれないと言う不安。
 それが俺の精神が成熟していない故なのか、もし仮にそうだとして、どうやったら、ある程度、社会に適合した感覚を持つ事が出来るのか。
 そんな事を考えていても、社会人になって何年か経ってしまうと、現状を受け入れることも視野に入れなければならないと感じ始めていた。

 もっと歳をとれば、独りでいる事が寂しくなるだろうか?
 それとも、今まで通り変わらないだろうか。
 仮に、寂しくなったからといって、その寂しさを埋めるために他人を利用することは俺には出来ないだろう。

 人はいずれ、独りで死んでいく。
 その時誰かに看取られようが、そうでなかろうが、独りで死ぬ事には変わりないのだ。
 現代というこの時代に、親は子に看取られることを期待していないだろう。
 嘗てあった、その数珠状の連鎖は、もう断ち切られてしまっている。
 何の情も感じない親だが、俺は、もしかしたら、両親を看取ることがあるかもしれない。
 けれど、俺は、決して我が子にそれを求めてはいけないと思っている。
 もちろん、ゲイである俺に子供を作ることなんて出来るはずないのだが。
 いや、例え、ゲイでなかったとしても、俺はそういう風に人を愛せないだろう。

 他人を愛せない以上に、血の繋がりという幻想的な呪縛を俺は何より嫌っていた。
 離れて暮らしてみると良くわかる。
 血の繋がりなんて、縋ろうとしても虚構でしかないのだと。
 DNAに何の意味がある?
 科学が発達して、二重螺旋構造も解明されて、病気の因子となることまで解明されて。
 実際に実の親から捨てられて、養護院などで育った人間にそれを解こうとは思わない。
 そういう意味では俺は、恵まれた人間なのだから。
 何をもって恵まれたと言うのかわからないけれど。

 他人との距離のとり方がわからなくて、自然と遠めに距離をおいてしまうのは、俺がゲイである事を他人にばれたくない、と願うのもあって、何の面白みもない、付き合いの悪い人間、というレッテルを貼られているのだった。

 ゲイバーに行けば苦痛の何割かは和らぐ。
 少なくとも、ここでは俺はゲイであることを隠す必要などない。
 根本的な、人間との付き合い辛さは直りはしなかったが。

「あれ、貴方、この間、想一さんと一緒だった人でしょ?」
 独りで飲んでいると話し掛けられた。
 中々思い起こせなかったが、確か……、あ、名前聞いた気がするけど、思い出せない。
「えーっと、君は……」
「覚えてない? ショック。俺は、いいオトコは一発で覚えてるんだけどな。」
「顔は覚えてるよ。名前は……ごめん、忘れた。」
「政司。覚えておいてね。独り? 想一さんは?」
「別に、彼と付き合ってる訳じゃないし、あれ以来会ってないよ。」
「そうなの? 想一さんは、結構、お気に入りみたいな感じだったんだけど、じゃあ、今晩暇なの? 俺と、どう?」
「君は、彼の事が気に入ってるんじゃないの?」
「俺がその気でも、向こうにその気がないんだから、しょうがないじゃん。それに、例え、貴方が、想一さんと付き合ってるんだとしても、想一さんはこういうの気にしないよ。」

 想一。
 前に俺と寝たオトコ。
 そして、一方的に連絡先を押し付けてきたオトコ。
 そのメモを捨てられなくて、何となく、携帯のメモリに入れてしまったけれど、結局、掛けたことは一度も無かった。

 他人に何かを期待するのは嫌だ。
 期待されるのも嫌だ。
 俺には答える事が出来ないから。
 想一は連絡先を俺に知らせる事でどうしようとしていたのだろう。
 政司というオトコは俺なんかよりずっと想一との付き合いは長いんだろう。

「ねえ、どうする? 俺と遊ぶ?」
 普段ならその誘いにのっていたに違いない。
 けれど、俺は何となく想一の事が気になっていた。

「ごめん、俺、用事思い出したから……。」
 そう体よく断って。
「ちぇっ。残念。まあ、いいや。また今度会おうね。」
 そう言って、政司は俺の元を去っていった。

 店を出て、俺は初めて想一に連絡を入れた。
 数コールして、応答する。
「はい。もしもし。」
「あの……覚えてますか? 籐也ですけど。」
「ああ、ちょっと待って、場所変えるから。」
 通話中のまましばらく待つ。
「お待たせ。久し振りだね。連絡くれて嬉しいよ。」
「俺が、本当に連絡するかなんてわからないじゃないですか。」
「まあ、そうだけど、実際くれたじゃない?」
「掛けてくるかわからない相手を待つのって、しんどくないですか?」
「ずっと待っていたよ……って、言いたいところだけど、名前聞くまでさっぱり忘れてた。」

 その答えは、あっけらかんとしていて。
「今、どこにいるの? これから会う?」
「あ、この前の店の前です。会いたいとか別に思った訳じゃないんですけど。」
「んー、じゃあ、何で連絡してきたの?」
 そんな事言われても、俺にもわからない。
「まあ、いいや、俺、これから、やっと時間作れそうだから、会おうか。」
「わかりました。」
「今から、1時間くらいかかるけど、いい?」
「あ、はい。」

 ひたすら店の前で待ち続けて。
 1時間も待っているとそのうち何回か、このまま、帰ってしまおうか、という気になったけど、何とか我慢して、その場に留まり続けた。

「お待たせ。」
 やっとそのオトコはやって来た。
「忙しかったんですか?」
「ええ? ああ。何とか一段落ついた。」
「すいません。俺の都合で呼び出して。」
「いいって。もし俺に都合が悪ければちゃんと断ってたし。」
 断られる可能性もあったんだ、そうだよな、この人にもこの人の都合っていうものがあるんだし。

「あんまり長い時間取れないですけどいいですか?」
「ん? いいよ。別に。」
「じゃあ、行きましょうか。」
「今日はお任せします。」

 そうして、そのままホテルに向かった。
 先に想一がシャワーを浴び、俺が続いてシャワーを浴びて出てくると、想一は少しうとうとしていた。
 俺が、声を掛けると、はっとしたように気がついて。
 横になったまま、俺の首に腕を絡ませてきて、耳元で囁かれた。
「今日は、籐也が抱いて……」
 そのまま、ベッドに体重をかけて、想一の唇を奪った。
「んん……ふ……ん……」
 想一の腕はしっかり俺の首を捕まえていて、離そうとしない。
 その力強い口付けに負けじと俺も、舌を絡ませる。
 濃厚な口付けは、それだけでも刺激的だった。

 そこから、俺が想一の肌に指を這わせていくと、やっと、俺の首は解放されて、その先の愛撫を促す。
「は……あ……」
 この間の時とは違う、感じて、吐息を漏らす想一に俺も興奮していた。

「イれて……いい…?」

「あ……うん…」

 一応了解を取って、指を埋めていく。

「……は…あ…くぅ……ん……」

 乱暴に扱う気はない。
 丹念にアナルを解していった。

「…ああ……ぁん…も……いいよ…イれて……」

 俺のほうも十分に勃起したペニスにゴムを被せ、想一のアナルに挿入していった。

「籐也……ゆっくり……」

「うん……」

 締め付けのキツさに一気に押し入りたかったけど、何とか我慢した。
 それから、ゆっくり抽挿を開始する。

「ああ……籐也……ソコ…イイよ…」

 想一が感じていると告げた場所を重点的にペニスで擦りあげる。

「んん…はぁ…ああ…!」

 快感に顔を歪ませる想一の表情はとても扇情的で。

「想一……想一……」

「ん……籐也!ああ!くぅ……」

 今は、ただ、快感だけを追っていればいいから。
 快感を与え合う、そのカラダが欲しいのだ。

「籐也……もっと突いて!」

 その快感に貪欲でいて何が悪い?
 お互いの事を何も知らなくとも、こうやってカラダを求める事は出来るのだ。
 俺は……俺は……。

 でも、もうそんな事を考えている余裕はなくて。
 想一が達して、そのアナルが俺のペニスを締め付けて、俺も達していた。

「あー、疲れた。気分よくって、このまま寝ちゃいそう。」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫。ちゃんと家まで帰りつくから。」
「想一、もしかしたら始めから疲れてなかった?」
「最近殆ど寝てなかったからね、仕事が一段落して、ちょっとほっとしてたんだ。」
「すみません。疲れているのに付き合わせてしまって。」
「いいって。いい運動したから、今夜はぐっすり眠れそう。」

「そんなに、忙しいんですか?」
「俺、基本的に仕事人間だからね。どうしても、仕事を優先させちゃうんだわ。おかげで、仕事以外の人間関係はボロボロ。」
「それで、恋人に振られたんですか?」
「そうそう。一応誠実に付き合ってるつもりなんだけどね。まあ、難しいわ。俺が、こんな人間だから、付き合ってても、相手が浮気しても、どうこう言うつもりもない。放っておく俺も悪いんだからね。でも、それじゃあ、付き合ってる相手としては物足りないんだろうね。相手の望むものを与えられないのも決定的なんでしょ? 『付き合ってる』って言う価値観自体が違っちゃってるんだから。」

「都合のいい相手が欲しいわけ?」
「そうなっちゃうのかな。そういうつもりは全然ないんだけど。相手にそう取られても仕方ないよね。」
「籐也は、どういう相手が欲しい訳?」
「俺? 俺は……よくわからない。俺自身含めて、誰も好きになったりしないから。それでもいい、って言ってくれても、そう思われるのは重たいから。別に、不特定の人間と寝たいわけじゃないけど、でも、一人に絞って、縛られるのは嫌なんだ。我侭だってわかってるんだけどね。」

「我侭、か。でも、自分の事を一番考えられるのは自分だからね。コドモみたいに何でもかんでも手に入るとは思ってないでしょ。籐也が何を一番大切に思ってるかわからないけど、大切な何か、があればいいんじゃない? それで人生そうそう上手くいくものじゃないから。」
「後悔しても始まらない?」
「違う違う、人生、後悔の連続なの。一度失敗しても、二度も、三度も失敗し続けるんだから。だからって、妥協する訳にいかないもの。」

「失敗から学ぶ事はないんですか? 失敗して傷付かないんですか?」
「ある程度は学んでも、同じような過ちを繰り返す。そうそう賢く生きれるものじゃないよ。それに傷付いてもも、傷付けても、ボロボロになっても、どうしようもないの。」
「俺は、自分が傷付いたと思った事は殆どない。強がりじゃなくて、そんな風に関心を持てない。いつも、ずっと、俺は幻想の中で生きて、それを誰かにわかってもらいたい訳じゃない。独りで、幻想の海を彷徨っているから。」

「感覚を共有してると思うのだって、共同幻想でしょ。わかった振りをしてるだけ。若しくはそう思い込んでるだけ。他人を理解しようとする事は大切かもしれないよ。だけど、それで、わかった気になったら終わり。勘違いしてる事にさえ気付けなくなる。」
「俺はそれが怖いから、必要以上に他人に近付かない。」
「籐也がそれで良いなら、良いんじゃない? 他人の人生に口出しするなんて野暮な話だから。」
「想一は俺の中に何を見たの?」
「別に何も。カッコイイオトコだなー、と思っただけ。」

「中身が最悪でも?」
「いちいち考えてないよ。俺はずるいから、ちゃんと逃げ道を作っておく人間だから。嫌になったら、速攻逃げる。それに、君にも逃げ道を作ってあげたでしょ。」
 このオトコは、俺を追い詰めたりしない。
 それが、このオトコなりの生き方で、常に自分にも、相手に逃げ道を作っている。

 そして、また、このオトコと会ってもいい気になったのは、このオトコが常に逃げ道を用意してくれているから。

「また遊んでくれますか?」
「籐也にその気がある限り。」

 そうして、強大な遊具に俺は取り込まれた。
スポンサーサイト

PageTop
 

コメントコメント


管理者にだけ表示を許可する
 

 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。