暴走書家

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『まやかしの共有-1-』

 自分がオトコしか好きになれないのに気付いたのが高校の頃。
 そして、まともに恋愛出来ないって気付いたのは社会人の頃。
 元々、そんなに長く付き合った事はなくって、告白されて、俺も好きだな、と思えて付き合っていたんだけど、このオトコとずっと付き合っていくのかな、とか思い始めていて、相手も『好きだ』と言ってくれて、俺も『好きだよ』、と言葉にしていたんだけど、繰り返すうちにどんどん気持ちが冷めていく自分がいた。

 お互いいいオトナなんだから、それぞれのフィールドに恋人とは別の付き合いってものがあって、それはそれで、尊重してくれないと困る。
 それをいちいち勘ぐられて、疑われて、勝手に嫉妬されて。
「本当は、俺の事好きじゃないんだろ?」
 と問われて、始めの方は、『そんなことないよ。好きだよ』と言っていたけど、その気持ちも随分怪しくなってきて、もうそう答えるのが面倒くさくなってきていた。
「もう、そういうことやめて。何かその言葉を聞くたびに、どんどん貴方の事嫌になってきた。」
 これは、俺の我侭なのだろうか。

 仕事ならば、一応その場でそれなりに協調性をもって、仕事と割り切って付き合っていけるけど、プライベートで自分自身の時間が持てないのがとても嫌だった。
 どっちかっていうと、俺は独りでいる時間の方が好きだ。
 その時間がないと窮屈になってしまって、身動きがとりにくい。
 大学に入って独り暮らしを初めて、その気楽さに慣れてしまったら、卒業して一度実家に戻ったけれど、ゲイだという事を隠さなければいけないのと、それ以外でも、生活で血は繋がっているけど、親子という名の他人と一緒に住むのが苦痛で仕方がなかった。
 何とか理由をつけて、親元から独立して、生活を立て始めた。

 その自由になった時間を、恋人の為に裂くのも、次第に嫌気がさしていた。
 嫌々付き合っていると、益々相手の事が嫌いになって、そんな風に他人を嫌いになる自分の事も嫌いになっていった。
 それなら早く別れればいいものを、相手のしつこさにずるずると捕まってしまった。
 長引けば長引くほどいい方向には向かわないとわかっているのに。
 それで、思い切って俺の方から別れを切り出した。
 何発か殴られたけど、それくらいで済むのならそれでよかった。
 恋愛関係の破綻の原因がどちらか一方にあるとは限らないけれど、その相手から解放されて清々した。

 後になって考えてみれば、どうして、そのオトコと付き合っていた事さえ不思議で仕方がなかった。
 そのオトコのどこが悪いと言うんではない。
 そのオトコが俺の運命の相手じゃなかったとか、そんな事ではなくて。

 それでも、独りっきりでいると、何となく人恋しくなって、ふらりと、セックスの相手を求めて、ゲイバーに出掛ける。

 他人を人として好きになれなくっても、好みはある。
 が、即物的な快感だけを求めている俺にはそれほど選り好みは出来なくて。
 後腐れのなさそうな、適当な相手を見繕って、セックスをする。

 社会という共同幻想も、恋愛という幻想も持てる人間の方が不思議だった。
 それでも、世の中の多くの人間はそれを共有している。

 もちろん、俺も幻想なしで生きている訳ではない。
 多分、俺自身の人生もまやかしでしかないのだ。

「どうしたの、そんな暗い顔して。折角のいいオトコが台無しだよ。」
 そうにこやかに話しかけられた。
「はあ……」
 俺は気の抜けた返事しか出来なかった。
「奥の席で一緒に飲まない?」
 そう言われて、特に断る理由も見つからなくて。
 声を掛けて来たオトコの見た目も、かなりいい。
 どっちかっていうと好みだ。

「じゃあ、お近づきの印に。」
 そう言ってグラスをコツンと当ててきた。
 相手の会話のテンポが上手いんだと思う。
 ゆったりとした特有の空間が男を取り巻いていて、その空間に俺も知らず知らずの内に飲み込まれていた。

「名前、聞いてもいい?」
籐也とうや。」
 普段は教えないんだけど、何となく告げていた。
「俺は、想一そういち。よろしくね。」

 二人で飲んでいると、店の端っこで飲んでいるにも関わらず、一人の男が声をかけてきた。
「あー、想一さん、久し振り。珍しいじゃん、店に来るなんて。彼氏、どうしたの? 別れたの?」
「振られたの。愛想つかされて。」
「えー、別れたんなら、俺に声かけてくれてもいいのに。俺も、ロンリーなのに。」
「ごめんね。今度遊んであげるから。」
「ちぇー。想一さん、忙しいから、絶対遊んでくれないじゃん、っていうか、こっちの彼もカッコいいじゃん。ずるいな、想一さん。」
「いいでしょ? 俺が、先に声かけたから俺の勝ちね。」
「お兄さん、俺、政司まさしっていうの。縁があったら、今度、遊ぼうね。」
 そう言うと、ひらひらと手を振り背を向けて去っていった。

「籐也、政司の言ったこと本気にしなくっていいからね。」
「恋人、いたんだ。」
「別れたけどね。」
「恋人って欲しいもの?」
「は? 何?」
「いや、俺は別に恋人が欲しいわけじゃないから。」
「ふーん。別に俺も欲しい訳じゃないけど、何となく、かな。まあ、そんなんだから、いつも振られるんだけど。」
「恋人とかになったら、色々面倒くさくないですか?」 

「俺は、面倒なことはしない主義なの。相手の事はそれなりに尊重するけど、基本、マイペースを崩すことないから。それが原因で振られる事になってもね。」
「それなりに……って。」
「どう感じるかは、その人次第。俺は、自分が、自分勝手なこと知ってるからね。それでも、どうしようもないし。という訳で、こういう酷い人間だけど、暫らく俺と付き合わない?」
「え? 俺は別に、恋人を作る気は……。」
「だから、それでも、いいんだけど。」
「はあ。」
「どっちにしろ、取り敢えず、今日の目的は、セックス出来ればいいんじゃないの?」
「否定しないですけど。」
「そういう、欲望に忠実なところはいいね。んじゃ、行こうか。」

 オトコとホテルに行って、セックスをして、欲望を吐き出せればいい。
 それは、生理現象の一つなのだから仕方がない。
 独りで処理することはあっても、それだけでは物足りないから。
 その代用として、他人のカラダを使う。

「そういえば、籐也は、タチネコどっち?」
「相手次第。」
「うーん。じゃあ、どうしようかな。基本、俺も、どっちでもいいからなぁ。」
「誘ってきたの、想一でしょ?」
「籐也、後ろ使える?」
「え? あ、うん。」
「じゃあ、遠慮なく。させてもらいます。」

 そう言って、想一が覆いかぶさってきて、唇を重ねた。
 うーん、本当は、あんまりキス好きじゃないんだけどな。
 それでも、唇を開いて、想一の舌を受け入れて、絡み合わせた。
 あー、でも、この人キス上手いかも。
 舌で舌を愛撫されて、吸い上げられて。
「んふ……んん……」
 それから、するりと舌が抜けていって、今度は軽くちゅっと音を立てて、口付けられた。

 指先が、俺の肌を確かめるように撫でていく。
 そうして探られた感じる場所に舌を這わされて。
 やがて下肢に辿り着いた。

 勃ち上がりかけたペニスに触れられ、口に含まれていく。
 唇と舌、そして、指先を使われて器用に愛撫された。
 その愛撫を受け入れて、俺のペニスは十分に勃起していった。
 俺が感じているのを見届けて、想一は俺のアナルに指を這わせていった。

 ローションのぬめりを借り、指を挿入させていく。
 慣れてくると、挿入される指の本数が増えていった。
「ん……く……あぁ……」
「籐也、そろそろ、いい?」
「ん……うん。」

 指が抜き取られ、代わりにペニスがそこにあてがわれる。
 ぐいっと足を掲げられて、挿入されてくるペニス。
「くぅ……はぁ……」
 息苦しくってキツいけれど、それだけじゃない事を俺は知っている。
 何とか息を吐いて、力を抜こうと努める。

 その度に奥にペニスが入ってくる。
「籐也、動くよ。」
 そう告げられて、律動を開始された。
「は……あ……あぁ……」
 想一は決して焦らず、ゆっくりと腰を動かしている。
「んん……あぁ…!ソコ……あ…!」
 俺が、感じる場所を伝えると、想一は的確にソコを擦りあげてくる。
 その刺激に漏れ出てくるような快感がたまらなくって。

「あ…は…んん…ぁん……ああ!はぁ!」
 感じている声を止めることなんて出来ない。
「イイよ……籐也……もっと、感じて……」

 そうして、想一の手が俺のペニスに触れてくる。
「想一…そんなにしたら、もう、もたない……」

「籐也、いいよ。イっても。」
「んん!はぁ…あ!ぁあ……はぁん!」
 そうして俺は射精していた。
 想一の方も、その後すぐに達したようだった。

 帰り際に、メモを手渡された。
「これ、俺の携帯ね。また、遊びたくなったら、呼んでね。」

 想一の方は、俺の事を聞いて来なかった。
 だから、もし、また会うとしたら、俺が想一に連絡をした時だ。

 連絡を取るかどうか、まだ決めていない。
 取り敢えず、そのメモをポケットに突っ込んだ。

 俺を支配しているのは、幻想の中にある確かな肉感だけ。
 それでも、幻想の中でしか泳ぐ事が出来ない。
 生きている事全てが、夢、幻のようなものだから。
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