暴走書家

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あるバーのシリーズ(同類)

 その人に会って生活が一変した。
 それまでどこにも居場所が見つけられなかった。

 家には祖母と父親と新しい母親がいる。
 俺は誰とも血が繋がっていない。
 真の母親が浮気をして出来た子だった。

 俺が生まれて間もなく両親は離婚した。
 父親は自分が俺の父親でない事を感じていたらしい。
 だけど、それを祖母は知らなかった。
 母親が離婚する時、連れて出ようとしたみたいだったけど、有名な茶道家元で一家の実力者だった祖母が、跡取りの俺を連れ出す事を許さなかった。

 父親は血の繋がらない息子に愛情を注ぐ事はなかった。
 いつもそっけなかった。
 祖母は祖母で厳しくて将来の茶道家元であるよう、幼い頃から茶道、書道、柔道、剣道などを習わせた。
 家でも、稽古することを義務付けられていた。

 厳しい祖母と俺の相手をしようともしない父親。
 習い事は嫌いではなかった。
 真面目にやらないと祖母に大目玉を食らう。
 それぞれの先生は先生で厳しかったけれど、祖母や父親とでは取れなかったコミュニケーションがそこにはあった。
 上達すれば褒めてくれた。
 それが嬉しかったから、俺は習い事に精を出した。

 祖母は決して褒めてくれる人ではなかった。
 上達してもその上を更に要求する。
 要求するだけだった。

 誰だって人に認められたいと思う。
 それが俺の家庭の中では見つけられなかった。

 小学校も嫌いではなかった。
 勉強も頑張った。
 褒めて欲しかったから。
 スポーツも音楽も頑張った。
 習い事がない時は同級生達と遊んだ。
 今一付いていけなかったけれど、頑張る俺の事を『凄いね』、と言ってくれる友人が欲しかった。
 宿題やらを見せてくれと頼んでくる友人が好きだった。
 そんな時だけでも良い、俺の存在を認めて欲しかったから。

 厳しい家の言いつけで外で遊ぶ事は殆どなかった。
 友達は誕生日会を開いたりしてたけど、俺は行く事を禁止されていた。
 友達同士で家に泊まりあいっこをしている子達がいたけれど、俺はそんな事許されなかった。
 俺が家に帰っても自慢できる家庭ではなかったし、泊まりに行く事も禁止されていたから。
 もっと、仲良くなりたい。
 そう思ったけれど、それは学校の範囲内でしか出来なかった。

 俺が小学校5年生の時今の両親が結婚した。
 新しい母親が出来て、ますます俺の居場所はなくなっていた。
 母親は初めそれなりに努力していたみたいだけど、家族と上手くやりあう関係に俺は慣れてなかったので打ち解けられなかった。
 助け舟を出すはずの父親が父親だったのもあると思う。

 俺が中2の時義母が弟を出産した。
 正真正銘、父親の息子だった。
 年を重ねてきた所為もあるだろう、父親はその子に愛情を注いだ。
 家での実権は祖母から父親に移りつつあった。
 俺は家での居場所がますますなくなっていた。

 家に居つくことが少なくなった。
 習い事は何となく仕方なく続けていた。
 それでも、かなり身に付いていたと思う。
 そういった習い事をするからにはそれなりのマナーを必要とされる。
 それも自然と身に付いていった。
 ただ、良い子でいる事に愛想が尽きていた。

 学校も通う事が少なくなっていた。
 それでもいわゆる不良と付き合う事はなかった。
 そこに俺は打ち解けられなかったから。

 一人で街をぶらぶらしてる事が多かった。
 当初はお金がなかったので本当にぶらついているだけだった。

 夜の街を彷徨い歩いている時オトコに声をかけられた。
 俺のカラダを買いたいらしかった。
 オトコがどうするのか当時の俺にはわからなかったけれど、お金が手に入るというんで着いて行った。

 初めての相手が良かったんだと思う。
 酷く抱かれる事はなかった。
 苦痛はあったけれど、俺にも快感を味合わせてくれた。
 そして、俺のカラダが金になるという事を知った。

「綺麗な顔をしている」と言われた。
 自分の顔を何とも思ってなかったけどそれを褒めてくれる人がいた。
 色が白い肌に中性的な顔立ち。

 ただ、どこか不良に憧れる俺がいて髪は真っ黒から金髪に染めた。
 家に帰っても両親は何も言わなかった。
 学校に行っていない事も知っているだろうがそれも何も言わなかった。
 客と寝て家に帰らない日も出来たが何も言わなかった。
 食事も家ではせず、外でする事の方が多くなっていた。

 お手伝いさんが家事をこなしていたが、両親がそれに触れない以上どうして俺に触れられるだろう。
 家にいる時はご飯は作ってくれたがそれ以上に関心をもたれる事がなかった。
 昔から、ビジネスとして『お手伝い』をしているだけで、子守なんかもしなかったが、今となっては触れられない事の方が嬉しかった。
 家は、帰るべき場所ではなくなっていたから。
 元々、居場所がなかったんだ、こうなって正解だった。

 俺の顔はよく役に立つらしく、欲しい時に客が途切れる事はなかった。
 たまたま、俺が最初に声を掛けられた時はそういう地帯をふらふらと歩いていたらしい。
 俺は客を求めるようになって自ら進んでその地帯に足を踏み入れるようになっていた。
 多少強引な行為にも耐えてみせた。
 金を払ってもらっているんだから、当然だと思った。
 何日も客が取れないような酷い跡にならなければよかった。

 客に抱かれる事で自分が求められている気がしたから嬉しかった。
 金さえ払ってくれれば誰でも良かった。

 けれど、その人に出会った。
 決して善人なんかではない。
 初めて会ったのはやっぱり客としてだったから。

 俺の顔とカラダと、雰囲気が気に入ったのだと言った。
 そうして俺を愛人にしたいと。
 決して更正させようとするのではなく俺に事情を尋ねた。
 俺としてはどうでも良かったが、特に嘘を付く必要もないから正直に答えた。
 他のオトコと寝たいなら寝ても構わない。
 でも、その人が望む時は望むようにするようにと。

 その人は40歳だと言った。
 一流企業の企業弁護士をしているらしく金もたくさん持っていた。
 弁護士のくせに……と思うけれど、決して悪びれる風もなく金でオトコを買うオトコ。
 誰かれかまわず求められるのも良かったけれど、そうやって特定のオトコに求められるのも悪くはなかった。
 セックス自体も良かったと思う。

 俺に生きる場を与えてくれるならそれを受け止めようと思った。
 その人が俺には元々あった黒髪の方が似合うと言うので金髪にしていた髪も染め直した。

 その頃は中3になっていて、進路を選ぶ時だった。
 その人は自分の家に来ても良いけれど、一応俺の家に帰るように言った。

 帰るべき場所ではないとわかっていたけれど、まだしがない義務教育の身だ。
 帰る他なかった。
 ただ、その人の家に行っても良い、それが救いだった。
 遊び歩くまでは勉強をしていなかったので勿論学校の勉強はさっぱりわからなかった。

 そんな、成績が悪い俺に父親は高校に進学するように言った。
 それまで何の関心も示さなかったくせに。
 普通の高校は無理だった。

 ただ、父親の母校である全寮制の男子校はそれほど学力がなくても家柄がよければ入れた。
 父親は、その高校を勧めてきた。
 その人にも相談してみたけれど、それで良いのではないかという事だった。
 俺も、その人に会って進学することを年頭においていたから、受かりそうな高校があるのならそれで良かった。

 学校にも再び行くようになった。
 遅れた学力を取り戻そうと勉強したし、その人も協力して、俺に勉強を教えてくれた。
 全寮制の高校に入るのはその人と離れる事になるけれど、実家からも離れられるので嬉しかった。

 その全寮制の高校は東京で今いる京都とは離れていたけど、その人自身今は仮に京都にいるだけで本当の家は東京にあって、もうそろそろ、東京に帰るだろうから、という事で調度良かった。

 俺は昼間は学校で勉強し、それが終わると、その人の家へ行って勉強し、その人の為に料理を作る事も覚えた。
 料理する事自体経験しなくって初めてだったけど、レシピを買って料理をしそれを、美味しいと言って食べてくれるのが嬉しかった。
 俺は、料理が嫌いじゃないんだなと思った。
 夕食をその人の家で終え、たまにセックスをしたり、勉強を教えてもらったりして家へ帰った。
 そこからまた学校へ通う。

 そんな生活が続いた。

 その人の事もちょっと知った。
 その人自身家庭に恵まれていなかったらしい。
 一流企業の弁護士だと言ったけれど、父親はその会社の社長らしい。
 そして、母親はその愛人で認知はされていたけれど、父親不在の家庭に育ったと言う。
 その会社を助けるべく育てられて、今は顧問弁護士だという事だ。

 表の世界にも裏の世界にも顔が利くらしい。
 俺自身、その人になってみたかった。
 俺は社交性を身につけるべく、笑顔でいる事が多くなった。
 笑顔でいれば他人も寄って来やすい。
 元々、きつい顔立ちをしていなかった俺だ。
 その微笑みは温和な笑顔になっているようだった。
 その人もその笑顔を褒めてくれた。

 そういえば、その人自身も俺に笑顔で接してくれる事が多かった。
 その反面、その笑顔の中に何が隠れているのか決して読み取らせようとはしなかった。
 俺にも、それが出来るようになる、その人はそう言った。
 その人と俺は同類なんだと言う。
 昔のその人自身に自分を重ねて俺を拾ったんだと言った。

「愛人にはなれるけど、恋人にはなれない。」

 そう言われたけど、それで構わなかった。
 俺自身、恋人というものがどういうものなのかわからなかった。
 その人とはセックスはするけど、どこか、父親というものを求めていた。
 それを言ったら、そっちの方が愛人より背徳的だと言われた。
 そのくらい、その人は俺の中で大きな地位を占めていた。
 同類になれるんなら、なりたかった。

 その人のように。

 今はまだ子供に過ぎずその人の為に何も出来なかったけれど、いつか役立てる日が来るように努力しよう。
 料理やセックスでない他の立場として。

 その人にもいずれ恋人が出来るかもしれないし、俺にも出来るかもしれない。
 でも、そういった関係を超えてその人とは結びついていたかった。
 やっぱり、生きている事に執着できないけれど、生きてい続けるんなら、こう生きたい。
 そう思える事が出来た。

 俺を高校まで卒業させようとした家。
 金銭的に依存しているかもしれないけれど、いつか全額耳を揃えて返してやる。
 そうして、あの家から完璧に独立してみせる。

 大学にも多分行く事になるだろうけど、自分で働いて通おう。
 当面の資金ならその人が出してくれると言う。
 それならそれに甘えよう。

 その人との絆は大切だから。
 俺を本当に生かしてくれているのはその人だと思う。


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