暴走書家

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『偽装と真実の仮面-6-』

 晴彦と会うようになってから、土曜の夜は、大概、一緒に食事をし、それからバーに立ち寄るか、そのままホテルに行くかのどちらかが多かった。
 一番初めに行ったような、凝った店にはあまり行かないけれど、それなりに、美味しそうな店を探して、食事を摂っていた。
 外食するならするで、それなりにプロの味というものを味わいたかったから。
 それは、静香と外食をする時も同じなのだが。
 そんな訳で、土曜日は、夕食を家で食べずにいたのだが、今週は、晴彦は遅くなるらしく、会いえるけれど、一緒に食事をするのは無理だと連絡があった。

「静香、明日だけど夕食、家で食べるから。」
「土曜日なのに? 会えないの?」
「いや、会うのは会うんだけど、夜遅くなるって連絡があったから。」
「わかったわ。」

 土曜の夜に夕食を摂る時は、静香に伝えておかなければならない。
 一人で外食する気にもならないし、静香は自分の分は作るのだから、それにあやかって作ってもらう。
 晴彦に会う前は、ずっとそうだったから。
 土曜日以外に、晴彦に会う時は、その時で、前もって静香に夕食はいらない、と伝える。
 平日に会うと、さすがに泊まる訳には行かないから、終電に間に合うように帰ってくる。
 土曜日に会う時は、大概泊まるから、朝食まで晴彦と一緒に摂ることになる。

 静香と俺との生活の間には、暗黙の内にそういうルールが作られていた。
 それで大きな齟齬をきたした事はなかったし、習慣化してしまえば問題はなかった。

 夜が遅いので、バーで待ち合わせをする事になった。
 定刻に間に合うように、いつも通り、15分くらい前に着くように家を出る。
 店に着くと、カウンターの端に座り、ウィスキーを注文する。
 待ち合わせの時間、23時になった頃、晴彦は現れた。

「隆弘、お待たせ。何とか間に合った。」
「忙しかったのか?」
「うん。ちょっと。でもそのおかげで、一仕事切り抜けたから。」
「そっか。お疲れ様。一杯、やってくだろ?」
「うん。マスター、クラッシックお願い。」

 『クラシック』とはブランデーをベースにして、オレンジ・キュラソー、マラスキーノ、レモンジュースをシェイクしたものだ。
 晴彦は、割と、あまり、辛めでないものを頼む事が多い。柑橘系の物がかなり好きらしい。

「もう少し暑くなったらさ、ビアガーデンでも行きたいよね。」
「そうだな。」

 そういえば、もうそんな時期か、と思う。
 春先に出会って、もう7月を迎えようとしているのだ。
 いつの間にか、時は経っていく。

 グラスを空けると、夜の街中に出て行った。
 行く、といっても、こんな夜遅くに行く場所なんて決まっているのだが。
 晴彦の家に入ったことがないし、もちろん、俺の家にも呼べる訳がない。
 だから、自然とホテルに行くことになる。
 そして今宵も。


「…ぅん…あ…あ…隆弘…あ…」
 俺が突き上げる腰の動きに合わせて、晴彦のカラダも揺れる。
 お互いのカラダを求め合うように繋げて、揺すり上げる。
 そしてその快感を分かち合う。

「あ…はぁ…も…イ…きそ……」
「俺も、もう…いいよ、イって……晴彦…」
 突き上げながら、勃起したペニスを擦りあげて、解放を促す。

「ふぅ…く……あぁ!」
「んん……くっ」

 射精を迎えて、快感の余韻に浸って晴彦は、俺の胸に頭を預けている。
「隆弘の心臓の音が聞こえる。」
 トクン、トクンと脈打つ心臓。
 その速度は、次第に落ちついていって、一定のリズムを刻んでいく。

「ねえ、隆弘。」
「ん? なんだ?」
「今度は、俺がイれてもいい?」
「あ、ああ。」

 晴彦は体勢を立て直して、俺の上に覆いかぶさってきた。
 そして口付けて。
 その舌先で求め合うのは、いつもと同じ。
 絡め合って、吸い上げて、甘噛みして。
 それが、お互いの官能を高めていく。

 そして、指で、肌を探って、感じられる場所を刺激していく。
 その感じられる場所を、舌先で追って、肌を、きつく吸い上げて。
「ん……」
 思わず吐息が漏れるのは、確かに感じているから。
「ここ、感じる?」
 そう問われて、乳首を弄られて。
「ああ……」
 生暖かい舌で舐められたのがわかる。
 そうして尖った先を吸い上げられて充血する。
 そこを、指で摘みあげられて。
「ん…あ……晴彦…」

 愛撫を受けて、ペニスが勃起していく。
 そうして、愛撫を加えている晴彦のペニスも硬くなっているのがわかる。

 カラダの位置を入れ替えて、お互いのペニスが、お互いの口元に来るようにして、口と、指で直接ペニスに刺激を加えていく。
 晴彦に咥えられて、充血し硬度を増す俺のペニス。
 そして、同様に十分に勃起していく晴彦のペニス。
 感じながら、感じさせて、それが興奮を誘う。
 俺も、晴彦も、丹念にそれを舐めあげ咥えこんでいく。

 晴彦は、それと同時に、ローションで俺のアナルに指を挿入していく。
 舐めあげながら、裡を刺激して、入り口を解して。

「晴彦……も…いいよ…」
「うん。」

 俺が促したのに対し、晴彦は、ゴムを装着し、亀頭をアナルに押し当ててゆっくりと挿入していく。
 始めはキツいけれど、慣れていくのはわかっているから。
 晴彦も、俺が慣れるのを待ってくれている。
 根元まですっぽり入り、カラダを密着させている。

「隆弘、もう大丈夫そう?」
「ああ。」
 それから、抽挿を開始する。
 内臓を引きずり出される感覚と、押し込まれる感覚が、繰り返される。
 奇妙な感覚だが、それがまたイイと感じてしまうのが不思議な所だ。
「あ…ああ!……はぁ!あ……」
「イイ? ここ。」
 俺のカラダが反応した場所を晴彦が刺激してくる。
「ん…んん!…あ!……」

「キツいよ、隆弘。俺、もう、イっちゃいそう……」
「も…ちょっと……あ…ああ!」
 そう言っている間にも、晴彦の動きは激しくなっていて、ガクガクとカラダが揺さぶられる。
「ダメ…も…イ…くぅ…!」
 そうして、俺のアナルの中で晴彦は射精した。

「ゴメ……。」
「いいよ。」
「ちゃんと、スルから。」
 晴彦は、再び、俺のペニスを咥え、指で、扱いてきた。
 今度はちゃんと射精を促すように強く刺激してくる。
 限界に近付いていた、俺のペニスは、やがて、精を吐き出した。

 精液で汚れた、指や腹をティッシュでぬぐっていく。
 それからまた、晴彦は、俺の指に自分の指を絡めてきた。
 でも、性欲は、もう満たされていて、それは、単なる戯れに過ぎない。

「汗かいたままだとカラダに悪いよ。」
「そだね。」
 名残惜しげに指を離し、晴彦はシャワーに向かっていく。
 そして、きちんとバスローブをはおり、出てきた。
 交代に、俺はシャワールームへ向かう。

 今夜こそは、といつも思うのだけど、なかなか告白できずにいる俺。
 きっかけが、中々掴めない。
 色々話をするけど、深く突っ込んだ話までは。
 そういえば、俺たちは、お互いの仕事の事も何も知らないんだな。

 知らなくても済む事だけど、知りたいと思うのは、相手のテリトリーに少しでも入っていきたいから。

 シャワーを浴び終え、ベッドにいる晴彦の元へと向かう。
 そうしたら、また軽く唇を寄せてきて、指を絡ませてきた。

「晴彦って、仕事何してるの? 今日は随分遅かったんだね。」
「俺? えーっと、あの、一応、小説書いてるんだ。」
「へえ、小説家。それで生活してるの?PNは?」
「一応生活できてる。PN考えるの面倒くさくって、本名使ってるけど。」
「神崎晴彦、だっけ?」
「うん。」
「結構不規則な生活なんじゃないの? 今まで、俺に合わせてて大丈夫だった?」
「うん。何とか、上手く調整してたし。晴彦は? 会社員?」
「いや、俺は、大学で助教してるの。主に研究かな。」
「へえ、何の?」
「『細胞工学』って知ってる?人工的操作によって細胞を加工したり,胚細胞(発生初期の細胞)を培養するの。」
「へえ、わかんないけど、先進的なことなんだろうね。」
「一応ね。本当にものすごく細かいことなんだよ。晴彦が、弄ってる指が、とても大切なんだ。」
「色々器用なんだね。隆弘の指。」

「始めのときから言ってたよね、俺の指が好きだって。」
「うん。なんかね、似てたんだ。俺を救ってくれた指に。あいつが、あの時、手を差し伸べてくれなかったら、今の俺はないと思う。」
「昔の恋人?」
「恋人……だったのかな? 一緒に暮らして、セックスもしてたけど、多分、恋人とは違ったんだと思う。あいつも、俺の事を、そういう風には見てなかっただろうし。」
「それでも、大切な人だったんだろう?」
「そうだね。全然違ったんだけどね、お互い寂しかったんだ。それを必死に隠して押し殺して生きていて、でも、それをお互い見抜いていたんだ。お互いの、寂しさを癒せればいいって。その為に一緒にいるのは心地良かった。」
「どうして終わりにしたの?」
「自分の弱さを認められて、それで、今度は自分の足で、しっかり立ってみようと思ったんだ。それが、ちょうど、あいつの大学卒業の時と、俺の小説家としての第一歩を踏み出せた時だったから。あいつといても、上手くいったと思う。だけど、別の可能性を試してみたかったんだ。」

「その彼が、何となく羨ましいな。そういう人間と出会えるって、そうそうない事だから。」
「でも、あいつと別れてなかったら、隆弘と出会ってないじゃん。それに、あいつと出会ってなかったら、多分、誰かと、真面目に付き合おうなんて思ってなかったと思う。」
「寂しい、って感じるのは人間として自然の摂理だと思うけどね。きっと、君達のはとても深かったんだろうね。」

「俺さ、兄貴の事が好きだったんだ。そういう対象として。もちろん叶わないってわかってたけど。それでも、その内、違うオトコの事が好きになれるんじゃないかと思ってた。兄貴は本当に出来のいい人間でさ。親も期待してたし、俺もそんな兄貴を尊敬もしてた。けどね、兄貴には、それが重荷みたいだったんだ。出来の良い人間である事、親の期待に答える事、弟の俺の尊敬を裏切らない事。それを演じるのに限界がきちゃったみたいでさ、優秀な大学に入ったんだけど、自殺しちゃったんだ。俺はまだ兄貴の事が振り切れてなくって、親も、まさか、兄貴がそんな事になるなんて思ってなかったみたいで、家族がバラバラになっちゃったんだ。寂しいのは俺だけじゃない、両親もそうなんだって、だから、悲しんでばかりいられないって。だから、わざと明るく振舞ってた。そんな俺を見抜いてくれたのが、あいつだったんだ。」

「……今、彼はどうしてるの?」
「知らない。探そうと思えば出来るだろうけど、してない。そういえば、あいつ、大学院に行くって言ってた。案外、隆弘と似たような道を進んでるのかも。」

「そう。会うのは怖い?」

「そうじゃないけど。過去からは卒業したから。」
「でも、晴彦の今があるのは、全部過去をひっくるめてだよ。辛い過去も、受け入れられたから、今があるんでしょ?」
「そうだね。もしあいつが、今幸せなら、会ってみたいと思う。」
「晴彦は、今、幸せなの?」
「そうだね。」

「人が人を好きになるって、例えどんな過去を持っていようが、いや、過去の全てが現在のその人を形成させてるんだよね。」

「それがわかっていても、正直好きだから、嫌な過去とか、昔の好きだったり、付き合ってたりした相手の事を話したくない。でも、話さないと、先に進めないんだ。だから、隆弘には、やっぱり知って欲しかった。」

 俺も、やはり話さなければならないんだろう。
 きっと、これはいい機会だ。
 晴彦が、作ってくれたこの機会を逃す訳にはいかない。
 結果、晴彦が、俺の事をどう思おうとも。
 それが、現在の俺であり、俺が選んだ人生なのだから。
 そして、話す事により、俺はきっと、一歩踏み出せるだろう。
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