暴走書家

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『偽装と真実の仮面-4-』

 相手に対する印象というものは、勿論一目会っただけではわからない。
 少ししゃべったからといって、わかる訳でもない。
 何かを装っているなら尚更、その本質を見抜くのは難しい。
 だが、人が何かを演じている時、それを見抜いてあげるのが親切なのか、そのまま騙されてあげるのが親切なのか、迷うところだ。

 誰にも悟られたくないから、仮面を被って、その自分という役を演じている。
 それに気付いて欲しいと、何らかのサインを送っていたとして、それが誰でも良い訳ではない。
 俺は、静香と結婚して始めの方は、静香を強い人間だと思った。
 実際、静香は、一人で生きる事が出来る為、強くあろうとしていたのだろう。
 けれど、やはり静香もやはり人間だという事。
 勿論、多少、他人と相容れないところがあったとしても、いや、相容れないことが多いと知っているからこそ、静香は自分の弱さを知っていた。
 俺に助けを求める訳ではない。
 静香は、それを望んではいない。
 俺に出来るのは、そんな静香を見守ってやる事だけだ。
 そして、その事を静香は望んでいる。

 晴彦の事は静香には話していない。
 静香に言ったところでどうなるものでもないし、静香としても、何とも言う事は出来ないだろう。
 あの晩飲みに出かけた事は知っているし、土曜日の夜に夕食を摂らず、他人と食事に行く。
 ただ、その事実を伝えただけだ。
 いいオトナなんだから、夜遅く帰ったとしても心配はない。
 ただ、住まいを共にするものとして、一応の報告は必要だ。

 週末はすぐやって来た。
 土曜と言えど、一応仕事はあったが、一旦家に帰り、私服に着替えて出直した。
 待ち合わせに遅れまいと15分程余裕を持って着くように行ったが、もう既に、そこに晴彦の姿はあった。
 携帯電話を持ってなにやらいじっている。
 それほどの人混みでもなかったので、すぐに声をかける事が出来た。

「ごめん。早めに来たつもりだったんだけど、待たせちゃったみたいだね。」
「俺、結構方向音痴だからさ、始めてくる場所にはどうしても余裕を持って来ちゃうんだ。やっぱり、人を待たせるのって失礼でしょ? でも、もし見つけられなかったらどうしようとか、心配してた。実際来てみて、そんなに広くなかったから安心したけど。」
「連絡先、聞いておけば良かったかな。昔と違って、今は携帯が普及してるから、電話を掛けるのも、メールで連絡をするのも便利だし。」
「そうだね。すっかり忘れてた。顔覚えてるから、いいや、とか思って油断してたかな。」
「俺も。でも、ちゃんと見つけられてよかった。本当は、俺が先に来て、晴彦を待ってるつもりだったんだけどね。」
「待つのってあんまり気にしないけど、人を待たせるのって、気を使っちゃうんだよね。」

「お互いそうみたいだね。待ち合わせ時刻より早く来るんだから。最も中には、遅れてきて平気な人間もいるみたいだけどね。」
「そうだよね。初回から遅れてくるのはどうかと思うけど、付き合いが長くなる内に、いっつも予定時刻より遅れてくる人間っているよね。」
「経験あり?」
「あるよ。本当に昔の話だけどさ、何人かで遊びに行こうっていう時に絶対遅れてくる奴がいたの。当時はさ、まだ携帯なんかなくってさ、始めは心配してたんだけど、そういう奴なんだとわかって、数回目からは、そいつにだけは、他の人間より早めの待ち合わせ時刻を設定しておくの。」
「今だったら、携帯があるから、状況を把握できるよね。」

「今は誰かと、待ち合わせなんて滅多にしないけどね。隆弘なら、何の連絡もなく、相手が来なかったら、何分経ったら、連絡取る?」
「うーん。15分くらいかな。電車一本分くらい。晴彦は?」
「俺も、それくらいかなぁ。もしさ、連絡が取れない場合、今日みたいに連絡先知らずに待ち合わせしてさ、もしだよ? 会えなかったら、どれくらいしたら帰ってた?」
「1時間くらいかなぁ。それ以内に会えたら、多分、道に迷ってたりしたんだろうし、それ以上は待っても、もう振られたとして、諦めて帰るんじゃないかな。」
「家に?」
「多分飲みに行ってるだろうけど。」
「もしかしたら、そっちで鉢合わせしてたりして。」
「その可能性もあるね。」
「まあ、どっちにしても、会えたって事で、良しにしよう。」
「うん。店、予約入れてあるから、行こうか。」

「結構混むの? その店。」
「店自体が広くないからね。それに一応隠れた名店だし。土曜の夜って事もあるし。」
「この間会ったの、火曜だったよね。あんまり期間なかったと思うんだけど、予約取れたんだ。」
「うん。なんとかね。」

 駅から5分と歩かない少し奥まった路地裏にその店はある。
 そんなに派手な店構えじゃないけど、一応、イタリア料理店の構えは取っている。

「へえ、結構、お洒落だね。えっと、『sottotetto』? 『ソットテット』って読んでいいのかな? イタリア料理だから、イタリア語とか?」
「うん。そう。俺も、店長に尋ねて知ったんだけど、『屋根裏』とか『屋根裏部屋』って言う意味なんだって。」

 店内に入ると、ほの暗く明かりがついている。
 奥に4人掛けのテーブルが二つと2人掛けのテーブルが6つ並んでいる。
 内装にも店長がこだわりを持っているようで、イタリアワインの空きボトルや中世イタリアを描いた絵画、ランプが掲げられている。

「すいません。20:00に予約していた『成瀬なるせ』と申し上げますけど。」
「はい。承っております。2人様ですね。こちらの席へどうぞ。ただいまメニューをお持ちいたします。」

 そうして席へと案内される。
 席と席は壁で隔てられていて、ちょっとした個室感覚だ。

「どう? こういう店。落ち着いた感じの店でしょ?」
「そうだね。さっき聞いちゃったけど、苗字、成瀬さん、って言うの?」
「うん。そう。成瀬隆弘。」
「俺も名乗ってなかったっけ。フルネームは神崎晴彦。」
「そういえば、この店、禁煙なんだけど大丈夫? そこら辺聞いてなかったな。」
「うん。俺、煙草吸わないし。」
「そう。良かった。実は、俺、煙草苦手なんだ。」
「俺は、相手が吸う分には気にならないけどね。まあ、でも、煙草って臭いが移るからね。」

 店員が、メニューと水の入ったグラスを持ってやってきた。
「どうする? 一応、コースメニューとかあるけど。」
「俺、イタリアンのコースって食べたことないや。パスタ単品でとかしか。」
「値段も手ごろだし、お勧めコースってことでいい? あ、ワインもいけるよね。」
「はい。」

 まあ、実際、『お勧め』って言うのは選ぶこっちとしては気が楽だ。
 でも、それを偽らない品物が出てくるからありがたい。
 決まった所で、店員を呼ぶ。

「注文いいですか? シェフお勧めのコースで。ワインもお願いします。」
「かしこまりました。」

 前菜がやってくるまでに晴彦と連絡先の交換をした。
 電話は苦手だ、という晴彦に、実は、自分も、と笑って答えた。
 メール自体も殆どしないと言う。
 それでも、万が一の為に携帯は持っているのだと。
 だから、機能にはこだわらず、何年も同じ携帯を使っていると言った。

 携帯電話は、今は多種多能な機能を持って、次から次へと新しい機種が出てくる。
 俺自身は、半年前ほどに、もう何年も使っているので、そろそろ買い換えてもいいか、というので、一応新しい機種を買ったが、その機能の殆どを使っていない。
 着信音も、始めから携帯に備わっている、クラッシック音楽を使っている。
 晴彦は、電話特有の音を使っているという。
 その方が、電話が鳴ったという気がするかららしい。

 やがて料理が運ばれてくる。
 本場、イタリアンではあるが、シェフの手を加えられて、日本人好みに味付けが多少変えられてあると言う。

「今回のコースにはないけどね、『キノコのチーズリゾット』が結構美味しいんだ。チーズが嫌いじゃなかったら、一度味わってみると良いよ。」
「食べたことあるんですか?」
「うん。俺、チーズが元々好きだからね。結構いろんな所のチーズリゾット食べてるよ。それが高じて自分でも作ったりするし。でも、ここのチーズリゾットには敵わないね。」
「へえ。もしよかったら、また、連れて来てくださいよ。一人じゃ、味気ないし。」
「機会があればね。サラダとリゾットくらいだったら、ランチでもちょうどいいかな。」
「他にも、色々隠れた名店、とか詳しいんですか?」
「詳しくはないけど、興味はあるね。ネットとかチェックしたりしてるし。グルメって程じゃないけど、やっぱり、美味しいって感じるもの食べたいじゃない?」
「俺は、あんまり興味なかったなぁ。お腹がふくれれば良いというか。確かに、この店の料理は美味しいと思うけど。」

「俺も、若い頃はそうだったよ。食べられれば何でも良いと言うか。歳を取ってくると、何か楽しみが欲しくなるんだよね。」
「歳を取るって、俺と3つしか違わないじゃないですか。」
「楽しみは人それぞれってことで、たまたま、俺が興味を持ったのが料理だったんだよ。」
「楽しみかぁ。俺は何だろうな。」
「深く考える必要はないけどね。」

 食事をワインを堪能し、食後に出てきた、コーヒーをすする。
「普段、インスタントしか飲まないなぁ。しかも、ミルクも砂糖も結構入れて。」
「それなら、一度、ブラックで飲んでみるといいよ。相性が良ければ、ミルクや砂糖はなくても美味しいよ。」
 俺の言葉に、晴彦はとりあえず、何もいれずに一口、口に含んだ。
「あ、ほんとだ。美味しいかも。」
「直挽きしてるからね。豆の種類にもよるけど、コーヒー自体の味が違うよ。」

 晴彦はその店を気に入ってくれたようだ。
 やっぱり、一緒に食事をして、会話をするのなら、美味しいものの方が良い。
 もちろん、好みは人それぞれだから、相手が、その店を気に入ってくれるかどうかはわからない。
 でも、自分が美味しいと思った店を紹介するしかない。
 自分の味覚に自信がある訳じゃないけど、自分が美味しいと思えない店を紹介する事なんて出来ないし。
 紹介するのはちょっと怖いけど、気に入ってくれた時はかなり嬉しい。

「隆弘、この後どうする?」
「どうしようか。」
「俺の家……って言えれば良いんだけど、残念ながら、他人が足を踏み入れる場所がないようなところに住んでるから……。」
「ええっと……俺も、似たようなものかな。」
「仕方ないから、ホテルにしよっか。」
「土曜の夜だから混むだろうなぁ。」
「それ専門は無理か。」
「普通のホテルなんて使わないけど……ネットで調べてみるか。幸い携帯があるし。」
「うん。」

 幸い、というか、何とか、近場でツインの部屋をとることができた。
 男同士だから、普通のホテルで、ダブルって言うわけにはいかないからな。
 普通のホテルだから、ゴムとかローションも常備していない訳で。
 お互い持ち歩いているわけではないから、専門の店に寄って買い物をしてから向かった。

「隆弘ってタチ?」
「どっちかって言うと、基本そうかな。別にネコが嫌なわけじゃないけど。」
「俺は、結構どっちでもいいかなぁ。」
「気分次第?」
「それと相手次第。」
「それで今日は? どんな気分?」
「え? 俺に選ばせるの? だって、基本的に隆弘はタチなんでしょ?」
「うん、そうだけど、何となく聞いてみたくって。」
「隆弘がシたいようにシて……。」
「うん……。」

 シャワーを浴びて、裸のまま抱き合って唇を重ねた。
 舌を口腔内に進入させて味あうと、先ほどのコーヒーの味がほんのりとした。
 お互いの口中がその味で満たされているから、本当に僅かにだけれど。
 舌と舌を絡め合わせて、吸い上げる。
「ん……」

 一旦、唇を離し、唾液で濡れた唇にもう一度口付けた。
 舌で口腔内を愛撫していく。
 今度は、舌を吸われて、軽く甘噛みされた。

 口付けながら、一方で胸に指を這わせ、乳首を刺激する。
 小さな突起を摘み上げると、その刺激に少しツンと立ち上がる。
「あ……は……」
 それに感じたのか、晴彦は、俺の唇から自分の口を離した。

 舌を解放されて、俺は、晴彦の肌に舌を這わせた。
 首筋を舐めおろし、鎖骨に軽く歯を立てる。
「んん……」
 そこから、先ほどまで、指で刺激していた、乳首へと口を移す。
 充血し、尖った乳首に吸い付き、歯で刺激を与える。
「あ……は……んん……も…隆弘……」
 その先を促されて、勃ちあがったペニスに触れ、口腔内に取り込んでいく。
 芯を持った幹の部分を指で押さえ、できるだけ深く、口に含む。
 その状態で、舌で刺激したり、吸い上げたりする。
 敏感なカリの部分に軽く歯を立て、今度は根元から先端に向かって舌を這わせる。

「く…あ…は……隆弘……もう…いい…よ…俺も…スるから……」

 体制を変えて、晴彦が、俺のペニスに口淫を加えていく。
 口の中でも十分に温かくって。
 その刺激だけでも、イけそうだったけど、その快感を十分味わって、晴彦にその行為をやめさせた。
 そうして、今度は、俺が、晴彦のアナルに指を触れさせる。
 準備してあったローションのぬめりを借りて、ゆっくりと挿入していった。
「ん…く……」
 挿入する瞬間の異物感はわかる。
 けれど、それも次第に慣れていくから。
 その為に、指で解しているのだから。

 アナルの入り口をくつろげながら、裡を指で刺激する。
「ん…は…あ……ソコ!……」
 晴彦がうったえた部分を擦りあげていく。
「ああ……は……も……」
「うん。俺も……」
 そろそろ我慢の限界だ。
 指を引き抜いて、ペニスにゴムを被せ、指の代わりにペニスを挿入させていく。
「は……あ……あ……はぁ……」
 キツくなり過ぎないように、晴彦は息を吐いて力を抜こうとする。
 俺もそれに合わせて、ゆっくりと挿入していった。

 奥まで挿入して、晴彦が落ち着くのを待つ。
「もう、大丈夫そう?」
「あ…うん。」
 了解を得て、抽挿を開始する。
 始めはゆっくりと、そして、徐々に速度を速める。
 それでも、きちんと晴彦が感じられるように、その前立腺に狙いを定めて、突き上げるようにする。
「…あ…はぁ…んん!…あ…ああ!」
 確かに晴彦も感じていて、ペニスは硬く勃ちあがったままだ。

「あ…イイ…!!……もっと……もっと、シて!」
 晴彦が望むように突き上げて、その晴彦のアナルに俺自身のペニスは締め付けられて今にも達してしまいそうなほど感じている。
 もっと、ずっと、味わっていたかったけど、やっぱり、終わりはやってくる。
 俺は、突き上げながら、晴彦のペニスを指で刺激し、射精に追いやる。

「ん……はぁ…あ…イく……!!」
 そうして、腹の上に精液を放出した。
 晴彦が達したのを見届けて、俺自身も射精する。
「ん…く…ぅ……」

 射精の快感から醒め、萎えたペニスを晴彦のアナルから引き抜いた。
 そのまま、ベッドの上に倒れこんで息を整えていると、俺の指に晴彦が指を絡めてきた。
「やっぱり、指、好きなの?」
「ん……そうだね。でも、もう自然にいじってしまうのは癖かも。」
 セックスの後の気だるさに身を任せて、指の感覚だけを味わっていた。

「シャワー浴びる?それとも湯船浸かる?」
「ん……シャワー……。」
「先に貰ってもいい?」
「うん。」

 名残惜しげに指を離して、シャワーへ向かった。
 少しぬるめのお湯で、火照ったカラダを沈めていく。
 一通り、汗を流し終えると、晴彦と交代した。

 そういえば、帰らない、とは言っておかなかったっけ。
 晴彦がシャワーを浴びているうちに、俺は、静香にメールを送った。

 俺はやはり狡い。
 静香は良い。
 事情をわかってくれるから。
 だが晴彦には、まだ何も伝えていない。
 いつ伝えるべきか。
 もし、罰を受けるとしたら、俺だけでいい。

 このまま晴彦と付き合っていくなら、いつかは伝えなければいけない。
 そうしたら、晴彦と終わりになるかもしれないけれど。
 深く知り合わない内に伝えるべきなのだろうか。
 俺はまだ迷っていた。

 それほど晴彦の事を知っている訳ではない。
 晴彦の事を知りたいと思う一方で、静香の事も気になっていた。
 静香を手放したくないと思う、この気持ちは何なのだろう。

 後ろめたいのは、晴彦に対して。
 すまない。
 もう少し考えさせて欲しい。

 シャワーを浴び終えた晴彦が出てきた。
 そうして、俺が寝っ転がっているベッドに入ってくる。
「指、握っててもいい?」
「ああ」
 そうして二人、深い眠りに落ちていった。
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