暴走書家

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『蛍-8-(完)』

 悟さんに宣言していた通り、僕は、希望の大学に入る事が出来た。
 学校や両親の手前上、他にも二つ私立の大学を受けて、合格をしていたが。

 そして、それを悟さんに報告すると、いつの間に約束になっていたのだか知らないが、悟さんが宣言したとおり、大学に入学した後、悟さんが遊びに行くというゲイバーに何軒か連れて行ってもらった。

 それぞれの店に集う人間模様も、中々興味深かった。
 法律を学ぼうとしている僕が、こんな事をするのもなんだけれど、大学生になれば、大体の人間がしている事だ、とアルコールを勧められた。
 いや、これは、勧める方も勧める方で、犯罪なのだが。

 悟さんに適当に色んな種類のお酒を試しに飲んでごらん、と言われてそれぞれ口にしてみる。
 お酒と気付かないほど、口当たりのいいものもあるし、渋みをもったもの、辛味のあるもの、それぞれだった。
 どれが一番好みだったかと問われて、僕が感じた中で、正直にその中の1品をさした。
 結構、アルコール、いける口なんだね、と言われた。
 試しに、と出されたものを、全部ではないけれど、かなり飲んでいたみたいだ。

 一番最後に紹介された店は、悟さんが一番よく行く店なのだという。
 店によって、それぞれ、特徴はあるものの、そのバーは、その中でも、特異な雰囲気を持っていた。
 僕が行った時調度、と言うか、僕が行くから、態々呼んだのかわからないが、オーナーもいた。
 そして、オーナーとマスターに、悟さんが僕の事を紹介してくれた。

「雫、マスター、こっちが、ケイくん。『蛍』って書いて、『ケイ』って読むんだ。」
「あ、蛍です。よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしくお願いします。」

 僕の事を、『蛍』と紹介した悟さんは、どういうつもりだったんだろう。
 その意図はわからなかったけれど、僕は、その後、自分でも、その界隈では『蛍』と名乗った。

 そして、大学で、学びながら、将来の事について考え、大学で学ぶ事が、実社会で役に立つことばかりではないけれど、それでも、何か、役に立てることが出来るなら、と、司法試験の勉強を始め、在学中に、合格する事が出来た。

 悟さんとは、たまにバーで会う事もあるけれど、高校卒業と同時位に、セックスをすることはなくなっていた。
 悟さんが最後に紹介してくれたバーはとても俺にとって居心地のいい場所だったし、マスターの出してくれるお酒も、気に入っていたので、よく通ったけれど、セックスする事を目的で通うところではないから、そういう相手を見つける為には、仕方がなく、別の店に顔を出していた。

 そうして、少しずつ時は過ぎていく。


「んん……あ……はぁ……イイよ……蛍……」

 ウリをしている時に、ごくたまにタチをすることはあったが、基本的には、殆どがネコだった。
 今でも、もちろん、タチもネコもするけれど、いつ頃からだろうか、相手を抱くことの方が多くなったのは。
 現に、今の相手を抱いている。

 多分、僕が、タチをする時のスタンスは悟さんの影響を結構受けていると思う。
 そして、ネコとしての快感は僕自身がよくわかっている。
 抽挿しながら、感じることの出来る、アナルの内壁を擦りあげる。

「あ……ぁあ……ん……蛍……もう…イきそう……」

 限界が近付いていることを伝えられて、僕も、その突き上げるスピードを増していき、相手が射精するのを待って、締め付けられたアナルの中で、僕自身も達していた。

 僕にしては、この相手との付き合いは長い方だと思う。
 相手は、大学を中退して、フリーターをしている。
 まだまだ、色々遊びたいらしく、気軽に相手が出来るから、一時の相手としては、申し分ない。

「蛍は、ここ、地元なんでしょ? やっぱり、ここで就職するつもり?」
「そうだね。特に別の土地に行く理由もないし。」
「そっか。俺さぁ、実家、岩手なんだけど、俺が、いつまでも、フリーターしてるのが気に入らないらしくて、実家帰ってきて、ちゃんと就職しろ、って言われてるんだよね。」
「へえ、それで、どうするの?」
「確かに、いつまでも、フリーターしてる訳にもいかないしさ、実家帰る必要がある訳でもないけど、まあ、金銭面でも、今ちょっと辛いし、一度、実家帰って、仕事探してみるわ。」

 とまあ、そんな感じで、その関係は終わりを告げる事になった。
 僕は司法修習期間が終わり、勤務地などの事を考えて、弁護士の道へと進む事を決めていた。
 悟さんとそんな話をしていると、それなら、雫さんの方が詳しいし、実際、良い弁護士事務所を知っているから、雫さんの方に、話を通しておいてくれると言われた。

 弁護士会で開いてくれる就職説明会のも参加しながら、雫さんの知り合いがやっているというところの話も聞いて、結果的に、雫さんの知り合いの『高部法律事務所』に籍を置く事決めた。
 雫さんにも、お礼を言わなければ、と、雫さんの都合を聞いて、雫さんがオーナーを勤めるバーで落ち合った。

 悟さんにしてもそうだけれど、雫さんは派手ではないけれども、その存在感は独特のものだ。
 一見、侵し難いその雰囲気と、その整った顔立ちをしているけれど、温和な笑みが、それを払拭している。

「蛍くん、就職決まったんだってね。おめでとう。」
「いえ、こちらこそ、紹介していただいて、ありがとうございます。」
「でも、決まったのは、蛍くんの実力だよ。勿論、これから、その実力と可能性を試されるわけだけれども。」
「はい。それはわかっています。」
「蛍くんが、どういう弁護士になりたいのかはわからないけれど、あそこの事務所は、色んなタイプの仕事をこなしているから、初めの内は、色々学べる事も出来るだろうし、蛍くん次第で、あそこで、働き続ける事も出来るし、独立するなら、それはそれで、協力してくれると思うよ。」

 雫さんは、僕の本名を知っている。
 それでも、こういう場所だからか、僕の事を蛍と呼ぶ。

「ええ。そうですね。ですから、そういうところを紹介してくれた事を感謝してます。」
「まあ、悟から、君の事は少しだけ聞いているからね。賢い子だから、って。実際話してみて、しっかりしているのはわかるし、高部さんも、そういうのが、わかるから、蛍くんを採用したんだろうね。」
「悟さんとは、お付き合い長いんですか?」
「悟と? そうだね。知り合ってから、もう随分経つんじゃないかな。」

「悟さんも、この店好きですよね。僕も、とても気に入ってます。」
「そう? そう言ってくれると嬉しいよ。」
「この店に惹かれる人とも気が合うような気がします。でも、声掛け禁止なんですよね。」
「建て前上そうしておかないとね。基本的には、アルコールと雰囲気を楽しむ為の店だから。」

「建て前上、なんですか。」
「ナンパ目的で来られたら困るけど、この店にいて、この店に馴染んで、そういう人に惹かれてしまった場合、お互いを止める気はないよ。」
「そういうものなんですか。」
「だって、そうでしょ? 職場恋愛とかだって、別に職場は、相手を探す為の場所じゃない。まあ、たまに、そう言う人間もいるけど、本来は、仕事をする場所でしょ? ただ、出会いが、職場だったってだけで。だから、ここが、別に、出会いの一つの契機きっかけになっても、構わないよ。」

 雫さんが言うことは一理ある。
 セックスだけを目的にするのではなく、出会いの契機きっかけとして、様々な場所がある。
 その出会いを、どういう方向に向けていくか、どういう感情を持っていくかは、その人それぞれだろう。

「でも、そういう建て前があったら、声を掛けたり、それに答えたりするのは難しくないですか?」
「そうかな。まあ、もし、ここで惹かれ合ったとして、そういう誘いをかけるのは、別に他の場所でもいい訳じゃない?」
「それは、そうですけど。」
「何か不満? ふふふ、じゃあ、試してみる? 私と。」
「え?」
「私、今の蛍くんの事、結構気に入ってるんだけどな。蛍くんは、誰にも、恋愛感情を持つことはないんでしょ? 私も、別に蛍くんと恋愛したい訳じゃないし。でも、そういうのもありだって、思ってるでしょ?」

「……まさか、雫さんに誘われるなんて、思ってませんでした。」
「それで? 蛍くんは、嫌?」
「嫌だなんて……思いませんよ。むしろ、興味はあるかもしれません。この店を作った人だから。」
「じゃあ、商談成立ね。……ああ、でも、今夜っきりね。悟にばれたら、やばいから。蛍くんも、それで構わないでしょ?」
「ええ。僕も、悟さんにばれるのは、嫌だなぁ。」
「今夜限りの二人だけの秘密ね。まあ、私と蛍くんは寝たからって、関係が変わる訳じゃないから。」

 そういえば、僕と雫さんの関係ってなんだろう。
 常連客と、その店のオーナー?
 いや、それ以外にも、悟さんを通した知り合い?

「ホテル行きます?」
「ん~。私、あんまり、ラブホ、好きじゃないんだよね。私の家でもいいでしょ? 車でそんなにかからないよ。」
「はあ。いいですけど、車で行くんですか?」
「私の車、すぐ近くに止めてあるから。」
「え? でも、飲酒運転じゃあ……。」
「あ、蛍くん、知らなかったっけ。私、ここに来ても、アルコール一滴も口にしないよ。」
「はあ、そうなんですか。でも、この店に来て、お酒飲まないなんて少しもったいない気がします。」
「確かに、マスターの腕は一級品だからね。」

 そんな風に会話をしながら、雫さんの車に乗せてもらって、雫さんのマンションに辿り着いた。
 マンションの部屋の作り自体、とても広いものだったけれど、それ程大して物はない。
 それでも、その部屋が閑散としているように感じないのは、実用物以外にも、ほんの細やかな装飾品が、適度に置かれている所為だろう。

「ねえ、今夜、私にどの名前で呼んで欲しい?」
「え?」
「だって、基本的に、『蛍』で通しているでしょう? でも、私は、本名も知ってるし。」
「『蛍』にしてください。こういう時に、本名で呼ばれるのって、慣れてないんで。」
「わかった。」

「ん……」
 口付けられて、優しく割り込んできた舌先が、口腔ないを探り、舌を絡ませられていく。
 少し強く吸われた舌に、思わず喉が鳴った。

 雫さんのすんなりとして長い指先が僕のカラダを這っていき、その刺激に快感を覚える。
 指先で感じた箇所を追いかけるかのように舌が、更なる刺激を与える。

「あ……はぁ……」

 指での愛撫で、勃ち上がった乳首を口に含まれて、舌で、転がされ、そして、歯で甘噛みされる。

「……ぁ……雫さん……ん……」

 感じて勃ち上がってくるペニスをその手で、握られて、根元から先端まで、丹念に扱いてくる。
 それだけでも、十分硬くなってきているのに、更に唇で包まれ、口淫を受ける。

 それから、ローションをたっぷり絡ませた指をアナルに挿入してきて、入り口を和らげながら、前立腺を刺激してくる。

「雫さん……も……」
「うん。蛍くん……」
 耳元でそう囁かれて、まるで、愛されているかのように錯覚させられる。
 そして、今、セックスをしている、この瞬間だけでも、確かに、雫さんは相手の事を愛しんでいるのだろう。

 ペニスが挿入されて、抽挿を開始され、感じる場所を、突き上げてくる。
 何度も、何度もそこを擦られて、射精感が高まってくる。

「ぁ……はぁ……ん……イきそ……」
「うん。いつでもいいよ、イって。」

 そうして、更に突き上げられながら、ペニスも刺激させられて、僕は、放っていた。
 雫さんも、同じように達していたようだった。

 雫さんは、ゴムを始末し、僕が、放った精液も、ティッシュで拭ってくれた。

「雫さんは、恋人、作らないんですか?」
「んん? なんで?」
「何となく。相手が放っておかない気がします。」
「そう? そんなんでもないよ。それに、恋人じゃなくても、良い関係でいられるっていうのも良いものだよ。」
「それって、セックスも含めて、ですか?」
「そうだねえ。含めても、含めなくても、両方、かな。」

「え? もしかして、雫さんって、決まった相手とかいるんですか?」
「やだな。そんなこと気にしないでよ。蛍くんを誘ったのは私なんだから。」
「まあ、そうですけど。」
「私は、蛍くんが、これから、どうやって生きていくか、興味があるな。蛍くんが、自分の感覚を大切にして、どういう風に他人と向き合っていくのか。私には、見守る事しか出来ないけれど。蛍くんが、私の店を、気に入ってくれたと言うんだったら、そこで、何か、感じてくれると嬉しい。悟も同じなんじゃないかな。」

 僕の感覚。
 感情の中に生まれてきた違和感と、多くの人が共有している感覚の中で、そこに居る事が出来ない事。
 それでも、それが僕という人間なんだと。
 悟さんも、雫さんも、それを認めてくれていて、見守ってくれている。
 そんな中で少しずつオトナになっていける。

 いつか、誰かと出会うかもしれない。
 悟さんや、雫さんとは違った立場で、『蛍』と『古賀沼靖史』とその両方を認めてくれる人が。
 そしてもし、一生、出会う事がなくても、僕が僕である事には変わりないんだ。
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