暴走書家

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『蛍-6-』

 ひとつの『蛍』を卒業した時、僕は、僕の中に、新に『蛍』を創り出した。
 古賀沼靖史という人間が、真面目な高校生なら、家族や、学校とは別のところで持つ顔を自分の中で『蛍』と名付けた。

 その名前は、何の意味も持たないけれど、僕の中で、古賀沼靖史として生を受け、育ってきた世間との価値観の違いに疑問を持っていて、僕自身が模索したもの。
 そして、新しい『蛍』を解放してくれた人。

 僕は、その人の事をよく知っている訳ではない。
 一応、年齢、名前、職業、住所を知っているわけだけど、それが、その人の本質を掴んだ事になるか、といえば、そうではない。

 向こうにとっても、同じ事だ。

 それが、暗黙の了解の内に僕たちは会う。

 始めて会った時、『忙しい』と言っていたのは本当で、そうたびたび会う事もなかった。
 会えない時間に想いを募らせるような相手ではない。

 僕は、『受験』という人生の一つの階段を登ろうとしていたし、その先に何かが見える訳ではなくても、取り敢えずは大学に行く、親や学校の手前、良い大学に入ることが出来れば、それはそれで、古賀沼靖史としての一つの役目を果たす事になる。

 他人が僕に貼るレッテルをいちいち気にしてなんていられない。
 僕が見た他人、と言うのもやはり、僕のフィルターを通した視線でしかないのと同様に、他人が僕を見るのも同じ事だ。

 そうして、また、悟さんに会いに行くのは、その人が、古賀沼靖史と言う人間も、『蛍』と言う人間も両方知っていてくれるから。
 僕が、また新に『蛍』を生み出した、と言った時、悟さんは笑っていたけれど、多分、それを認めてくれていた。

 模試の成績も中々良かった。
 高3を向かえ、本格的に大学受験に向けた模試が増えてくる。
 模試自体は経過地点でしかないから、それに一喜一憂する訳ではないけれど、やっぱり、成績が良いのは、悪い気はしない。

 進学校だけあって、学校の授業だけでも、かなり高レベルの受験対策をしてくれるけれど、親の勧めもあって、より確実に大学に合格する為に、予備校にも通い始めた。
 そうなると、課題もかなり増えてくる訳で。
 嫌いな訳じゃないけど、休日は確実にそれに当てられる。

 それでも、まだ責任感と言うものをそれほど感じなくて良い部分、僕はまだ学生で、選択の余地が沢山ある訳で。
 何とか、悟さんに時間を作ってもらって、僕は、与えられた課題の山をもって、『友達の家に勉強に行ってくるから』と親に伝えて、悟さんの家へと向かった。

「靖史くん、勉強忙しいのに、私の家になんて来ていて良いの?」
「たまには気分転換したいもん。悟さんこそ、大事な休みなのに、僕に構ってていいの?」
「構うほどの事なんてしてないでしょ。」
「後で、いっぱい構ってもらうから。」
「はいはい。取り敢えず、ちゃんと課題やったら?」
「わかってるよ。」

 リビングのテーブルに課題を広げ、それをこなしていく。
 この段階で、家でやる事とは変わりない。
 悟さんは、悟さんで自分の事をやっているし。
 こういう時に、相手を邪魔しないのは、絶対の領域。

「悟さんはさ、独りでいるのって寂しくない?」
「何? 急に。」
「だって、今、恋人いないんでしょ? 誰かと一緒に暮らしたい、とか思わないの?」
「別に、寂しいから、恋人を作る訳じゃないよ。そういう人もいるけどね。あえてそれは否定しないし。生活するにしたって、独りには独りの、二人なら二人の、それぞれメリットもデメリットもあるから。そんなに簡単な事じゃないよ、同棲するって。」
「したことあるの?」
「ないよ。大概そこまで行く前に別れるから。友人から話しを聞くだけ。」

「悟さんって、いつから独り暮らししてるの?」
「大学入ってから。家が田舎だからね。東京に独りで出てきたから必然的に。」
「親は知ってるの? 悟さんがゲイだって事。」
「いや、知らないよ。」
「結婚しろ、とか言われないの?」
「言われるよ。それが気不味いから、仕事が忙しいって言って実家には殆ど帰らないな。」
「親って孫の顔見たいものなのかなぁ。」
「さあね。親になってみた事ないからわからないよ。」

「僕はさ、基本的に独りでいる事の方が好きなんだよ。両親と暮らしてるけど、あんまり干渉とかしてこないし。このまま、志望校行くと、家から通えそうなんだよね。そうすると、独り暮らしするのって贅沢かなぁ、って思うんだけど。やっぱ、養ってもらってる身じゃない?」
「独り暮らししたいの?」
「いつまでも、親元にいる訳にいかないじゃない?」
「そうとも言い切れないけどね。まあ、一緒に暮らしても、いつか、はやって来るけどね。」
「それって、親の方が早く死ぬって事?」
「そうそう。私の家は、姉がいるから、そっちに頼ってる。私がしてるのは金銭的援助だけ。」
「お姉さんは結婚してるの?」
「うん。別姓になってるけど、幸運な事に、実家近くに住んでるからね。」

「そっかー。僕、一人っ子なんだよね。どうなるんだろ、この先。」
「さあ、どうだろうね。家、それぞれで事情が違うし、親の考え方も違うだろうからね。まあ、若い内に我侭言ってみるのも良いんじゃない? 受け入れてもらえるかどうかは知らないけど。」
「正直想像できない。自分が、大学行って、仕事について、結婚して、子供を作って、とか。」
「それを私に求められても困るけど、そういうものじゃないの? 別に先の事なんてわからないよ。」
「まあ、そうだよね。」

「靖史くんじゃなくて、『蛍』の方は、何を望んでるの?」
「何だろうな。すっごく微妙。まあ、どっちにしろ、独りで食っていけるようにはなりたいけどね。」
「仕事しなきゃ、生活できないからね。」
「うん。」

「あー、やっと課題終わった。」
「お疲れ。」
「帰らなきゃいけない時刻まで、まだ時間あるから、ベッド行こう。」
「どれくらい時間あるの?」
「えーっと、まだ十分2時間ぐらいは。」
「それは、十分すぎるくらいだね。」
「時間がないよりいいじゃん。」
「まあ、そうだけど。」

 こういう時は、悟さんは十分時間をかけて丁寧に愛撫してくれる。
 それに従順に反応していく僕のカラダ。
 耳朶を甘噛みされて、首筋をなぞられる。
 乳首に触れられて、指で、舌で弄られて感じる。
「あ……はぁ…ん……」

 その上、勃起したペニスを擦られたら、もうたまらなくって。
「あ…あ…ダメ……も……イきそ……。」
「いいよ。1回イって。」
 そのまま、促されるように射精した。
「あっ!ああ!」

 一度、解放されたけど、まだ足りない。
「ね、キスして…。」
 ゆっくりと降りてきた唇が、僕の唇に重ねられる。
 今はまだ、この人に甘えていられる。
 その舌を求めるように絡めあって、吸い上げる。
「ん……」

 でも、それだけじゃ、ダメな時はきっとやってくる。
 それは、何となくわかっているんだけど、でも、必要なのは、今だから。

「靖史くん、イれるよ。」
「うん。」
 そのペニスが、僕の快感をちゃんと刺激してくれるのがわかっている。
「…ん…あ……はぁ…。」
 前立腺を擦るように突き上げられる。

 見上げれば、うっすらと汗をかいた、悟さんの顔があって、とても、色っぽかった。
 漏れでてくるような快感をゆっくりと、的確に与えてくれる。
「あ…イイ!…お願い…もっと…!」
 願えば、ちゃんと与えてくれるから。

 そこには、快感以外の何物も入る込む隙間もない。
 だって、今欲しいのはそれだから。
 純粋な、快楽というのは存在するのだろうか。
 僕が願うもの、僕が望むもの。
 それに対して、貪欲でいられたら。

「ああ!…イ…く…。」
「んん。」

 放たれた精液が、僕の腹を汚す。
「そのまま、動かないでね。ベッドにこぼれるから。」
 言われた通りに、そのままティッシュで拭われるまで待つ。
「今、何時?」
「17:30」
「もうちょっと、このままいても良い?」
「ああ、良いよ。」

「本物の蛍って、見たことある?」
「いいや。ないね。」
「どんな風に光を放つんだろうなぁ。」
「見てみたいの?」
「うん。だって、想像だけだから。」
「東京でも、見られるところ、確かあるよ。」
「え? そうなの?」

「うん。もう見られる時期じゃないかな。受験の息抜きに見に行く?」
「え、いいの? 悟さん、仕事忙しいんでしょ?」
「1日くらいなら、ね。大丈夫だよ。調べて、連絡するよ。」
「ありがとう。」
「晴れるように、祈ってて。」
「大丈夫。僕、日頃の行い良いから。」
「それを言われると、ちょっと辛いな。」

 知らないから、憧れるというのもある。
 でも、もし知ることが出来るなら、知ってみたいとも思う。
 理想と想像だけで生きていけたらいいけれど、現実はそうじゃないから。
 例え、現実との間にギャップがあったとしても、それを受け入れたいと思う。
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