暴走書家

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『蛍-5-』

 中々スムーズには行かなかったけれど、何とか先輩と別れる事が出来た。
 全てを話した訳じゃないけど、やっぱり、先輩の事が好きな訳じゃないから。
 それは、多分失礼な事だから 。

 そして、僕は、貰った名刺の裏に書かれた携帯へ電話をかけた。
 常識的に考えて、何時頃なら、相手に失礼じゃないだろうか? とか色々考えた結果、やっぱり、昼間は仕事中だろうな(まあ、僕も学校だけど)とか、夜遅すぎても、迷惑だろうな、とか考えた挙句、21時頃掛ける事にした。

 数コールして、相手が出る。
「はい。もしもし。」
「あの、桂木悟かつらぎさとるさんですか?」
「はい、そうですけど、どちら様でしょう?」
「僕、古賀沼靖史こがぬまやすし、えっと、蛍ですけど、覚えていらっしゃいます?」
「あ、うん。覚えてるよ。どうしたの?」
「今、お電話しててもご迷惑じゃないですか?」
「大丈夫だよ。まだ、仕事場だけど。誰も周りにいないから。」
「すいません。お仕事中だと思わなくって。」
「いやいや、もう帰ろうと思ってたところだから、気にしないで。」

 以前会った時と同じ、優しいトーンの声と口調に安心感を覚える。

「今度、会ってもらえますか?」
「構わないけど。いつぐらいがいい?」
「桂木さんの方が、お仕事の都合があるでしょうから、そちらに合わせます。」
「古賀沼くん、高校生だよね、確か。」
「あ、はい。今、高2です。」
「あんまり夜は、やばいよね。飲みにも誘えないし。来週の日曜日のお昼間はどう?」
「大丈夫です。」
「じゃあ、お昼一緒に食べよう。古賀沼くんって、最寄の駅はどこ? わかりやすい待ち合わせ場所とかある?」
「えっと、○○駅です。改札口が、一箇所しかないから、わかりやすいと思います。」
「車止められそうなスペースある?」
「多分、大丈夫です。」
「了解。じゃあ、11時に迎えに行くよ。」

 良かった。覚えていてくれて。
 あの時、会ってくれるって言ってたけど、本当に叶うとは思ってなかったから。
 俺はしがない一介の高校生で、向こうは、一流国立大学の准教授なのだから。

 約束の日、駅の改札から出たできるだけ表から目の届きそうなところに立って辺りを見回していると、桂木さんがこちらに向かって来た。

「お待たせ、古賀沼くん。車、こっちに止めてあるから。」
 助手席を勧められて、シートに滑り込む。
「あの、どちらへ行かれるんですか?」
「ああ、そういえば言ってなかったね。私の家で構わない?」
「桂木さんがご迷惑でないなら。」
「んじゃ、そうしよう。途中で、スーパー寄って、昼食の材料買うから。」
「桂木さん、料理されるんですか?」
「自分でしなきゃ誰もやってくれないでしょ。まあ、総菜屋とかもあるけど、たまに利用するくらいかな。古賀沼くんは、何か食べられない物ある?」
「大根さえ入ってなければ。」
「OK」

 それから、スーパーに寄って、色々買い込んで、桂木さんは、天津飯と、彩り鮮やかなスープを作ってくれた。
「ご馳走様でした。美味しかったです。」
「お粗末さまでした。お口にあった用でよかったよ。お茶入れるから。リビング行ってていいよ。」
「はい。ありがとうございます。」

 急須と湯飲みを2個お盆の上に乗せて、やってきた。
「緑茶だけど、平気?」
「はい。」

「特別用があったわけじゃないんですけど、桂木さんと話がしてみたくって。」
「いいよ。何でも。別に。」
「あの、僕、先輩と付き合ってたんだけど、やっぱり、好きって訳じゃないから別れたんです。」
「オトコ、オンナ? 古賀沼くんって別にゲイって訳じゃないよね。」
「オトコの先輩です。そうですね、ゲイって訳じゃないと思います。でも特に好きな女性とかはいません。誰かを『好き』って思う感覚がわからないんです。」
「まあ、別に無理して、そういう風に思う必要もないんじゃない?」
「そういうものですか?」

「恋愛感情なんてなくったってセックスはできるでしょ。実際、古賀沼くんだってそうしてるんだし。そういえば、まだバイト続けてるの?」
「今は一応。でも、もうすぐ高3になって、受験生になるから、辞めようと思って。」
「古賀沼くんは、セックス好き?」
「え? 考えた事ないです。桂木さんは、好きなんですか?」
「うん? 気持ち良くなれるのは好きだね。」
「桂木さんって、結構相手の事考えてシますよね。」
「そりゃあ、お互い気持ちよくなくっちゃヤってる意味ないし。」
「恋人とか、好きな人とかいないんですか?」
「恋人はいないよ。好きな人は……って聞かれると微妙だけど。」
「なんで?」
「やっぱり、気にいった相手とセックスしたいじゃない? それが、好きな相手か、と問われると、まあ、好きだけど、恋愛したいって言うのとは違うからなぁ。」
「恋愛したい、って思わないんですか?」
「したい、と思って出来る事でもないでしょ。」
「まあ、そうですけど。」

「別に恋愛しなきゃ生きていけない訳じゃないし、セックス出来ない訳じゃないし。」
「でも、桂木さんのセックスって優しいから、勘違いしちゃう人もいるんじゃないんですか?」
「古賀沼くんは別に勘違いしなかっただろう? まあ、勘違いされても、一応は、『好き』でヤってる訳だから、それなりには付き合えるよ。ただ、相手の方が、その『好き』の原点の違いに気付いて、離れて行くかどうか、だね。」
「離れて行かなかったら?」
「それはそれで、別に良いよ。だって、私なりには『好き』なんだし。現時点のところ、やっぱり、その違いが嫌な訳だから、相手は離れて行くんだよ。」
「寂しくないんですか? そういうのって。」
「寂しいも何も、私自身が、そういう感覚しか持てないからね。古賀沼くんも恋愛感情がない、って言ったでしょう? でもさ、それとは別の次元で『好き』とか『嫌い』とか感じる事はあるでしょ?」
「まあ、そうですね。」

「だいたいさ、古賀沼くんも、まあ、以前の私もだけど、お金と交換に『ウリ』として、セックスしてるでしょ? そこに、そんな感情の入り込む隙間なんてないじゃない?」
「そうですね。逆にそんなもの持ち込まれたら商売やってられませんし。」
「そうそう。だから、古賀沼くんは、古賀沼くんの思うようにすれば良いの。感情って、その人固有のものだからさ、誰にも強制できないし、そうしようとするのは不遜な事なんだよ。だから、悲しいかな全ての人が全て両想いになれる訳じゃない。」

 恋愛感情があったって、両想いになれるとは限らない。
 それは当たり前のようで、自分が忘れていた事かもしれない。

「僕、あんまり考えた事がなかったけど、桂木さんとセックスするの『好き』ですよ。」
「それ、私を誘ってるの?」
「ええ。いけません?」
「素直なのはいい事だよ。ベッドに行く?」
「はい。」

 やっぱり、このオトコのセックスは優しくて。
 触れる唇も、快感をなぞっていく指先も、僕を感じさせてくれる。
 口淫を受けて、そのまま果ててしまいそうなほど煽られて。
 それが気持ち良いってわかるから、僕も、このオトコを感じさせたくてそのペニスを口に含んで愛撫する。
 そして、十分な硬度を持ったペニスを挿入されて、突き上げられて、感じるままに喘ぐ。

「あ…ああ!…はぁ…ん…ん…」

 感じているのを、隠す必要なんてない。
 そのありのままの僕を僕が受け入れて。
 その感情が、何なのか、なんて必要ない。
 このオトコを愛しているから、という訳ではない。
 でも、このオトコのセックスが上手いから、というだけじゃない。
 相性? そんなものなのかな?
 ココロの? カラダの?
 そんなことを問うこと自体ナンセンスなんだ。

「桂木さ…も……イきそ……」
「うん。イっていいよ。私も、もう……」

 射精したのは、お互い間もなくだった。
 快感の余韻に浸ってる僕のカラダに自ら放ってしまった精液を、桂木さんは、綺麗に始末してくれて、射精したばっかりで、敏感だった俺のペニスは、その指に反応してしまったけれど、それも、桂木さんが、もう一度、今度は口でイかせてくれた。

「古賀沼くんは、受験、どうするの?」
「一応、法学部志望。その先どうするかはまだ決めてないけどね。ちなみに僕、これでも成績優秀だから、桂木さんの大学合格圏内だよ。」
「ふーん。でも、私、社会学部だから、全然関係ないよ。」
「そうなんだ。」
「ま、何になるかなんて、まだ焦らなくっていいと思うけどね。」
「なれるかどうかもわからないしね。」

「大学生になったら、遊びに連れて行ってあげるよ。」
「お酒は20歳からじゃないの?」
「私は、そんなに良いオトナじゃないからね。」
「悪い教育者だなぁ。」
「モラルを学ぶのは高校まで。」
「でも、その高校生に手出してるじゃん。」
「反論はしないよ。でも、古賀沼くん、大人っぽいから、大学生でも十分通るよ。」
「見かけの問題?」
「違うけどね。」

 それでいて、全然悪びれた素振りはしないんだから。

「それで? 私に会って何か解決した?」
「んー、ちょっとは。ねえ、また会ってくれる? 本当の勉強も、聞いてみたい事あるしさ。」
「私で、お役に立つのなら。」
「これからは、靖史って呼んでくれる? 悟さん。」
「はいはい。」

 このオトコにとっては、まだ僕はコドモなんだろうな。
 でも、僕は、もう、『蛍』を卒業できる。
 そうして、少しずつオトナになっていくんだ。
 どんなオトナになるかはまだわからないけど。
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