暴走書家

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『蛍-3-』

 快感を快感として受け入れる事。
 ただ純粋に快感を追い求める事は悪い事ではないんだろうか。

 セックスをする。
 そこに快感がある。
 その快感を恋愛感情として錯覚する事はない。

 カラダを許すのはその人ココロを許しているから。
 僕が先輩とセックスをするのは果たしてそうだからだろうか。
 考えてみても特に僕は先輩の事が好きな訳じゃないと思う。

 普通が何かはわからないが、きっと先輩の方が普通の人間なんだ。
 男同士だけど、恋愛感情を持ってセックスを求めて。
 僕にはそれがわからないから、他のオトコともセックスをする。
 これは先輩に対する裏切り行為なのだろうか。

 先輩に話せば、そうだと言われるだろう。
 だが、態々話すような事でもない。
 先輩、僕はこう言うオトコなんだよ。
 それでも好きだって言えるんですか?

 どうすれば人を愛せるのですか。
 愛さなければいけないのですか。
 愛を知らない人間は欠陥人間なのですか。

 性愛だけが愛ではない。
 それはわかっている。
 両親は僕を愛してくれていると思う。
 愛情に飢えた人間が必死に愛情を求める事もある。
 また逆に、愛情が怖くて必死に愛を拒む人間もいる。
 そして僕はどちらでもないのだ。


 だが性愛の代償行為としてのセックスは存在する。
 僕はどちらかというと、欲望としてのセックス、単純な快感を求めるセックスの方が好きだ。
 僕に恋愛感情をもたれてもどうしようもない。

 そういった感情とは別のところでカラダを売っていても、勘違いしてくる人間はいる。
 そうして、束縛したり、独占したりしようとする人間もいる。
 僕はまだカラダを売ることを辞めようとは思わないよ。
 もし、僕にそれを辞めさせる事があるとしても、きっと決して誰かを愛したからじゃないと思う。


「ねえ、君、名前なんていうの?」
 シャワーを浴びてでてきた僕に男は尋ねた。

「名前なんて聞いてどうするんですか? 僕はただの男娼。そしてあなたはお客です。」

「名前を呼んだほうが気分が乗るんだけど。」

「セックスに擬似恋愛を求めているのですか?」

「偽物なんて寂しいよ。確かに君は僕にカラダを売っているのかもしれないけれど、僕は君が気に入ったんだ。」

「名前なら好きなように呼んでくださって結構ですよ。」

「何かの代用じゃない。君の名前を呼びたいんだ。私の名前は『ソウヘイ』思想の『想』に平和の『平』って書くんだよ。出来れば君に僕の名前を呼んで欲しいな。その方が求められているって感じがするから。」

「それが、お客であるあなたの望みならそうします。でも、あくまでもあなたはお客で、僕は男娼です。」

「セックスしている間だけはせめてそれを忘れたいんだけどな。できれば、その後も……。」

「あなたに買われた時間だけはあなたの望むようにします。けれど、それ以上は無理です。」

「そういえばまだ君の名前を聞いてなかったね。」

「……『蛍』。僕はそう呼ばれています。」

「本名じゃないよね? 下の名前だけでも良い、本名を聞きたいな。」

「名前に本当も嘘もあるんですか? 例え仮に親が付けた名前だとしても、それは記号でしかありません。別に本名が嫌いだという訳ではありませんが、今、あなたの目の前にいる僕は『蛍』という名を持つ人間です。」

 そう、僕は『蛍』。
 僕がそう名づけた。
 夜の世界でカラダを売る僕。
 せめてそこで光っていたかったんだろうか。
 自ら闇夜で光を放つ虫、蛍のように。

「蛍くん……」
 男はその名を囁き、僕のカラダを愛撫していく。
 男性の象徴であるペニスをしごきたてていく。
 その手によって勃起する僕のペニス。
 そこには確かに快感がある。
 そして、快感以外の何も求めない。

 男に乞われその男のペニスを口で愛撫する。
 得意という訳ではないけど、何度かこなすうちに少しずつこつを覚えていった。
 吐息を漏らし、更にペニスを硬くする。

 男同士で、生殖行為、と言うのも変だけれど、何故人のセックスは性器に挿入し、射精するだけでは済まないんだろう。

 手淫や口淫。
 それも、セックスの一つの段階なのだと知った。
 前戯を好む人間もいるし、面倒臭がる人間もいる。

 まあ、どちらにしてもそれに興じる人間に興味があるんだけどね。
 他人を知り、己を知る。

 やはり人間というのは不思議な生き物だ。
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