暴走書家

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『蛍-2-』

 セックスに恋愛を混在させたのは誰なのだろうか。

 食欲・性欲・睡眠欲。
 それを三大欲求と言う。

 ただの欲望としてのセックスは純粋なものだろうか。
 その欲望はどこからやって来るのだろうか。

 食べなければ人は死ぬ。
 眠らなければ人は死ぬ。
 けれど、セックスをしなくても人は死なないだろう。

 僕は先輩とセックスをし、好きだと言われたけれど、セックスをする為に先輩のその感情は必要だったのか、好きだからセックスをしたくなるのか、不思議でならなかった。

 それからも先輩と付き合っていたけれど、僕の中で何か変化するものはなかった。

 ただの欲望としてのセックス。
 どちらかというと、そちらの方に僕は興味があった。

 そしてその内、年齢を誤魔化して僕は自分のカラダを売る事を覚えた。
 お金に困っていた訳ではない、何か特別欲しいものがあった訳ではない。
 ただ単にそういう商売が成立している、その事に興味があった。
 人が自分の金をどう使おうと勝手な事だ。
 カラダを売ることが不道徳だとか、先輩と付き合いながら他の男とセックスをすることが不貞だとかいう感覚はなかった。

 需要と供給、両方にニーズがある。
 世の中の商売はそれで成り立っているのではないか。

 客をとってみると、それはそれで中々面白かった。
 何を思ってオトコ達はセックスを求め、僕のカラダを抱くのだろう、と考える。

 ホテルに行ってセックスをする。
 そんな短い時間だけれど、人間観察をするのは嫌いではなかった。

 僕個人で商売するのはやはり危険だった。
 だから、そういう商売を管理する事務所に所属していた。

 回ってくる客の中にはたまに苦手な人間もいた。

 僕を金でセックスの相手として買っておきながら、売春行為を非難する人間もいる。
 変に正義感を持った人間だった。
 カラダを売る人間は落ちぶれた可哀想な人間だとでも言いたいかのようだった。
 もちろん、金に困ってカラダを売る人間もいるだろう。
 じゃあ、どうしろというのだ?
 仮に僕がカラダを売ることでしか生計を立てられない人間だったとして、そんな説教で何か状況が変わるというのか?
 何も変わりはしない。

 言葉だけの偽善者め。
 おまえは聖人面しているつもりか?
 男娼を汚らわしい、というのなら、そのオトコを買っているお前は何なんだ。

 相手の人間を汚らわしいものとして扱い、自分はそれと対比して自分は綺麗な人間でいたいのだ。
 そのくせ、性欲は否定出来ずにいる。
 そして、その矛盾から目をそらしている。
 セックスはそれ自体神聖な行為でも、汚れた行為でも何でもない。

 それでも客は客だ。
 馬鹿馬鹿しい人間にあたってしまったな、と思いはしても、その人間の発言を否定したりはしない。
 正義・道徳なんて言葉を僕自身の口から発するのは嫌だった。
 反発して激昂を買うのも嫌だった。

 仕事を初めてまだ間もない頃にそういう目にあった事がある。
 プライドの高い男だった。
 そしてそのプライドは脆い男だった。

 初めは温厚に僕に対して語りかけていた。
 カラダを売るような真似をしなくても世間にはいろんなバイトがあると。
 もっと自分のカラダを大切にしなさいと。

 カラダを売る事は自分を大切にしていない事なのだろうか。
 別に自暴自棄になってカラダを売っている訳ではない。
 ただ、興味があったから、セックスを商売にしているのだ。

 その男を皮肉った僕の言葉に、逆上された。

 顔を殴られ、両手を戒められ、慣らしもしないアナルに勃起したペニスを挿入された。
 苦痛以外の何物でもなかった。
 いきなり挿入されたアナルは傷つき、血を流した。
 少しでも身じろぎするとまた殴られた。

 男が射精し、興奮から冷めるまで開放される事はなかった。
 相手を殴り、傷つけ、犯す事で自分の優位を保とうとしていた。

 怒りが男を興奮させ、その興奮に酔っていた。
 その酔いに任せて男は僕を犯したのだ。
 そして多分、男は犯しているという事実に更に酔っていた。

 その行為が終わって一息ついた頃、顔を殴られ、アナルを犯されベッドの上で血を流して傷ついていたのは確かに僕だったが、現に犯した張本人であるはずの男の表情の方が傷付いていた。
 自分のプライドが許さない、か。
 愚かなオトコだと思う。

 自分の行った行為の結果を見るのが怖くて僕を一瞥いちべつもしようとしなかった。
 人を殴る事にも慣れていないんだろうな、と思う。
 暴力という行為を嫌っているのだろう。
 そして、自分の理性というものを過信しているのだろう。

 男は血のついたゴムをゴミ箱に投げ捨て、自分の財布から金を取り出すと、それを床に放り投げ身繕いして部屋から出て行った。

 そのオトコがその後どうなったかは知らない。
 いや、そんな客に限らず、いちいち寝た客を覚えてはいない。

 アナルの傷がかさぶたになり血が止まると、僕は身を起こし、事務所へ向かった。
 僕は犯され傷ついたアナルよりも外目に見える顔の殴られた後のほうが気になった。
 あーあ、腫れるだろうな。

 事務所に戻ると、殴られた顔を見て案の定心配され、僕はあった事をそのまま話した。
 災難だったな、と言われ、傷になったアナルに塗るように抗生剤の軟膏をもらった。

 受け流す術べを身につけなければ。
 人間を相手にする以上、気を付けなければいけない。

 強そうに見えても、弱いからこそ、偽りの殻を作って必死で守ろうとしている人間がいる。
 その殻がその人にとって本当に必要なのかどうかはわからない。
 ただ、僕はカウンセラーでもなんでもない。

 僕自身の事すらわからないというのに。

 全ての行為に意味がある訳ではない。
 いや、意味のない行為が溢れている。
 行為一つ一つに意味を見つける必要なんてない。

 今僕に出来る事、今僕がしようと思っている事、それで良いのだ。
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