暴走書家

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『蛍-1-』

 生活に不満があった訳ではない。
 生きてきて自分が不幸だと思った事もなかった。
 実際振り返ってみても、そんな出来事は思い当たらなかった。

 けれど、幸福だと感じた事もなかった。
 生まれてこの方、何か些細な事でもいい、感動した事があったか?
 それを考えてみても特に思い当たる事はなかった。

 所謂いわゆる『お受験』が流行りだした世代に生まれてきた。
 両親は勉強する事を押し付けてくるような事はしなかったけれど、勉強するのは嫌いではなかったし、元々、飲み込みが良かったのか成績は優秀だった。
 幼少の頃喘息を患っていた為、健康のためにと水泳を習わされた。
 その効果があったのかどうかわからないが、小学校も高学年になると、喘息発作は起こらなくなった。
 健康の為に習い始めた水泳だったが、辞める理由も契機きっかけもなかったので中学を卒業するまで続けていた。

 中学生にもなると、色めきだってくる。
 そういう感覚は分からなかったが中学2年の時同級生の女の子に告白されて何となく付き合った。
 そういう感情はわからないものの、美的感覚は一応ある。
 その女の子も、自分の容姿にそれなりに自信があるのだろう。
 付き合いだした時、周囲のオトコの同級生から羨ましがられた。

 別れた理由は特にない。
 卒業を契機きっかけに会う事はなくなった。
 彼女は地元の公立高校の進学し、僕は学校や塾での成績から両親の勧めもあり、私立の男子校の進学校の入学した。

 進学校、といってもたいした事はなかった。
 そんな高校の中でも成績は上位を占めていた。
 高校1年の夏を過ぎた頃、先輩に告白された。
 オトコの先輩にだ。
 そういう種類の人間が存在することを知らなかった訳ではなかったし、取り立てて嫌悪感もなかった。
 それでやはり何となく付き合った。

 主体性のない人間だと思われても仕方がないと思う。
 けれど、自分が何をしたいかわからなかった僕はその時に流されてみるのも良いと思っていた。

 付き合うといってもおおっぴらに何かをする訳でもない。
 付き合い初めて数ヶ月経ったころ先輩の家へ遊びに行き先輩の部屋でキスをしてセックスをした。
 キスをしたのは初めてではない。
 中学時代の彼女ともした事があったからだ。
 比べてみた訳ではないが、彼女とのキスも先輩とのキスもそれ程変わらなかった。
 人は何故キスと言う行為に深い意味を見出すのだろうか。
 初キスは○○の味、と美化されるが僕にとっては意味を持たない事だった。

 セックス自体もそうだ。
 セックスそのものを秘めやかな行為として公にすることはないが、そんなに隠し立てする事もないだろう。
 人間自体が、セックスという行為をもって誕生するのだから。

 赤ん坊はどこからやってくるの?

 コウノトリが運んでくるんだよ。

 そんな話はどうやって出来たんだろう。

 セックスは生殖行為以外の意味をどうしてもったのだろう。
 もちろん、男同士のセックスの初めからそんなものは存在しないが、男女の間だって避妊具をもちいて行われる。

 先輩とのセックスは先輩のほうが興奮しているように見えた。

 男性器は性的に興奮すると堅く勃起し、女性器はその男性器を受け入れるべく濡れるという。

 先輩は勃起したペニスを僕のアナルに入れたがった。
 男性同士の性行為に挿入と言う行為は必ずしも必須ではなかったが僕は特に拒まなかった。
 女性器のように濡れることのない僕のアナルは人工的に挿入を可能にする為、ローションが塗り込められた。
 普通の人間なら排便以外に意味を持たないその器官に挿入される。

 もちろん異物感はあった。

 キツく締め付けているであろう僕のアナルに先輩は快感に溺れ抽挿を繰り返す。
 次第に激しくなるその行為に痛みはあったが耐えられない程ではなかった。
 僕にのしかかって動く先輩の表情を冷静に見つめていた。
 先輩の呼吸が荒くなり、僕のアナルの中でコンドームに覆われたペニスが射精した。
 僕にとってはその行為は快感でも不快感でもなかった。

 射精して萎えた先輩のペニスが抜き出された後も僕のアナルには違和感が残っていたが。

 僕のペニスはというと、その行為によって勃起することも射精する事もなかった。
 ベッドの上で全裸で横たわる二人のオトコ。
 汗ばんだ先輩の腕に抱かれ、『好きだ』といわれた後も、僕は心の中で納得出来ずにいた。

 僕は先輩の事を嫌いではない。
 だからといって好きではない。

 初めてキスをした時、何かが変わるかもしれないと思った。

 初めてセックスをした時、何かが変わるかもしれないと思った。

 けれど、僕の中では何も変わらなかった。

 それが人間的欠陥だとは思わないが、僕は性的不能者ではない。
 精通はあったし、自慰だってする。
 その時のオカズはなんなのだろう。
 特に意識してやっていない気がする。

 ポルノ物を見ても、何故それで人が興奮するのか僕にはわからなかった。
 ただ裸のオンナ(もしくはオトコ)が映っているだけではないか。

 そして何故モザイクがかかっているのかも不思議だった。
 どうしてそんなに隠したがるのだろうか。
 モザイクなしの無修正版をみたこともあるがやはりそこにも意味を見出せなかった。

 人はこれを見て興奮するのだろうか。
 いや、ポルノと言うものはその為に作られているのだろう。
 太陽の下でおおっぴらにはならないけれど確実に需要があるもの。

 闇の中で光を放っているもの。

 僕はその光の正体を見てみたいと思った。
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