暴走書家

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『寂しい魚-4-(完)』

「んん……あ…は…晴彦……ん……」
 晴彦のペニスを受け入れ、俺は快感に喘いでいる。

「智也、ダメ…そんなに……締め付けちゃ……」
「まだ待って……はぁん……く……ぅん……」
 アナルの中に圧倒的なその存在を感じ、それを飲み込むように締め付けてしまうのはどうしようもない。

 一刻でも長く、それを感じていたくて、お互いのその存在を求めていて。
 しかし、それを永遠に求めている訳にもいかなくって、その動きは次第に性急になっていく。

「智也、智也……。」
「ぁ……晴彦、イイ…あ…ソコ…もっと……!突いて…!」
 その感じる場所を、もっともっと刺激して欲しくて。

「智也、俺、も…イきそ……」
「うん、あ!……ああ!…はぁ…あ、あ!俺も、もう……」
 十分感じているのに、晴彦の手でペニスを直接的に刺激されて、俺たちは、達した。
「んん!くぅ!」
「あ…はぁん…く…!」

 出会って、俺たちは、何回カラダを重ねただろう。
 もう2年が経とうとしていた。
 お互いをお互いが何回抱いたかなんて数えてやいない。
 そんな回数になんて意味なんてないから。
 気付けば2年も一緒にいられたという事

 寂しくて仕方がないのに、その寂しさをひたすら覆い隠そうとして生きていて、俺達は、その皮膜の奥底に眠っている寂しさを暴きたて、癒し合った。
 もし出会わなければ、強がって生きる事で、何とか生きられたかもしれない。
 けれど、弱さを知る事も大切なのだとわかった。

「智也、もう少し、このままにしていてもいい?」
 射精して、萎えたペニスを、俺のアナルにイれたまま、晴彦は尋ねた。
「ああ、うん。」
 それでも、それ以上は、性欲は湧かなかった。
 ただ、カラダの温もりを感じていたかった。
 それでも、物理的に締め付けてしまって、ペニスが、感じはじめそうになると、やがて晴彦は、抜き去った。
「ん…ふぅん……」

「あ、感じちゃった?」
「馬鹿」
 そう言って、晴彦の唇に俺の唇を寄せた。
 唇を押し付けて、触れるだけの口付けをかわす。
 まるで、慈しむように。

「明日は、お互い、大学朝からだろ? もう寝ようか。」
「そうだね。」
「じゃあ、おやすみ。」
「おやすみ。」

 お互いの転機がそろそろ訪れ始めている。
 もう、俺達大学4年になる。

 いつも通りの朝を向かえ、いつも通りに大学に向かう。
 俺は、どんな未来を望んでいるのだろうか。
 その構図をはっきり描ける人間なんていないだろう。
 漠然と描いたとしても、現実はそれに追いつかず、軌道修正しながら、生きていく。

 だが、何の構図も設計もない人間にはなりたくなかった。
 『他人の為に役立つ仕事に就く』そんな曖昧なそれでいて、そんな大義名分が立つ仕事につけるのはほんの一握りの人間に過ぎないだろう。
 そもそもそれが、本当に『他人の為に役立っているのか?』そう問われた時、はっきり答えられる人間がいるのか?
 それはどうかわからないが、様々な職種があり、それが、どういう理由にしろ誰かに必要とされているから、職業として成り立つのだ。
 複雑に絡まりあった現代と言う社会は、その複雑さゆえに道を見失いそうになる。

 例え道を一時見失ったとしても良いではないか。
 また、歩く事が出来るのなら。
 そう立ち直れる力こそが、生きていく為に必要なのだ。

 俺は、運よく、というか、努力の甲斐があって、何とか大学院への進学を決めることが出来た。
 学ぶべき事は沢山ある。
 俺は、それを追求していきたいと願っていた。
 大学院への進学は、その為の、俺の一歩となる事だろう。

 一旦家へ帰り、着替えてバイトに出向き、コンビニで夕食の弁当を買って帰ると、既に晴彦が家にいた。
「ただいま。晴彦、今日は、バイトは?」
「あ、良いの。休み休み。それより見て、これ。」

 嬉しそうに晴彦は、とある文芸雑誌を俺に手渡してきた。

「? これがどうしたの?」
「ほら、ここ、ここ。」

 晴彦が指差した作品
 新人賞受賞作『いつか晴天を信じて』神崎晴彦かんざきはるひこ

「え? これって、もしかして……。」
「うん。そう、すごいでしょ?」
「晴彦がパソコンに向かってたのってずっとこれ書いてたんだ。」
「本当はさ、出品する前に智也に読んでもらおうかと思ったんだけどさ、完全に自信があった訳じゃないし、万が一、受賞できたら、驚かせたいな、って思ってて。」
「晴彦が、こういうの好きだって全然知らなかった。」
「だって、内緒にしてたもん。」
「取り敢えず、おめでとう。」
「それでさ、やっぱり、こういう風に認められてみるとやっぱり嬉しくって、そうしたら、また書きたくなって、でも、始めから、これで食べていくのって難しいと思うんだ。だからさ、大学は、ちゃんと卒業するけど、何でもいいから文章が書きたくって、出版社でバイトしようかな、と思ってるんだ。やっぱり本が好きだからさ。」
「へぇ、良いんじゃない?」
「今やってるバイトもさ、もうそろそろ潮時だと思ってたから、これを期に辞めようと思って。」
「そうなんだ。」

「……智也とさ、出会えたから、俺はこれが書けたんだと思う。どうでもよくなりかけていた、自分の事を考えるようになって、そうしたら、他の人間の事も興味が湧いてきてさ。他の誰でもなく、あの時、智也が、俺に手を差し伸べてくれたから。」

「俺も、晴彦に会えて良かったと思ってる。晴彦に会って、色んな事を知った。俺が、自分の足で、未来への一歩を踏み出そうと決められたのは、晴彦が傍にいてくれたから。俺は、ずっと、寂しいなんて知らなかった。一人でいるのは当たり前だったから。俺もね、何も見えなかったんだ。楽しい事も、悲しい事も、嬉しい事も。」

「俺達は、お互い、本当はすごく寂しかったんだね。」

「でも、それを始めは認められなかった。時間をかけて、少しずつ、俺達は成長していったんだ。」

「誰かと抱き合えば、それは治まると思ってた。だから、いろんな人と寝た。けど、それだけじゃ埋まらないものもあるんだって知った。智也は、特別だったから。」

 全ては過去形。
 そう、お互い多分わかっていたんだ。
 俺達は、始まった時から、終わりがくる事が見えていた。
 そんな関係だってある。
 終わってしまうからといって、それまで過ごしてきた時間が無駄になる訳ではない。

 始まりも、その過程も、終わりも、全て俺達には重要な事なんだ。
 寂しくて仕方がなくて、それを慰めあう為にカラダを重ねる。
 それはそれで、悪い事ではないんだ。
 多分、そうやって、関係を続けている人達もいるのではないかと思う。

 人と人とを繋ぐ絆が、どんなカタチであったとしても、それは非難されるべき事ではないだろう。
 ひたすら傷を舐めあって、寄りかかって生きたって、それはそれで良いのだと思う。

 ただ、俺達は、違う道を模索しようとしている。
 寂しかった過去は消せないし、消そうとは思わない。
 そして、これからも、寂しさを感じる事はあるだろう。

 狭い水槽の中で、寂しさに溺れていた二匹の魚達。
 大海原から吊り上げられて、そこでも必死にもがいていた。
 そして、そこで、けっして一匹きりじゃないんだよと知った。
 息をして、泳いで、餌を食べて、生きて。
 全く一匹きりだったら、多分何も気付かずにそのまま、それはそれで過ぎていたかもしれない。
 それが、時間というものの残酷さ。
 そのどうしようもない残酷なものの前に諦め去ってしまうのか?

 俺達は、決して一人では乗り越えられなかった壁を、二人で何とか乗り越えた。
 そして、俺たちは、それぞれの未来を見つめている。
 そう、それぞれの未来が。

 二匹の魚達は、大海原へと帰っていった。
 今は、まだ、何者にも出会えなくても、もしかしたら、また誰かと会う事があるかもしれない。
 そう、他の誰かと。

 晴彦は、殆ど帰ってなかった家を引き払い、新しい家へと引越しの準備をしている。
 俺の家に置いてあった自分のものも荷造りしてしまった。

 お互いが与え合った影響は消える事はない。
 もしかしたらたまに思い出すかもしれない。
 そして、もしかしたら、どこかで顔を合わす事があるかもしれない。
 でも、その時は、もう、今までの俺達じゃない。

 俺達は、お互いが不要になったんじゃなくて、新たなる道を探しているから。

「最後に、握手してもいい?」
 そう尋ねてきた晴彦の手を俺は握った。
 そうすると晴彦は、もう少し力を込めて握り返してきた。

「この手がなかったら、俺は駄目になってたかもしれない。本当にありがとう。」
「それは俺も同じだ。」
「ふふ……それでね、本当に智也の指、好きだったよ。」
「ありがとう。俺は、晴彦の本を読むたび、もしかしたら、晴彦の事を思い出してるかもしれない。」
「俺は、何かを書くたび、きっと智也の事思い出してるような気がする。」
 
 そうして、お互いはお互いの思い出の中に。
 その方が、より鮮明に残る事もあるから。

 お互いに、恋人が出来たとしても、特別な存在でいられるんじゃないかと思う。
 もしかしたら、その恋人に嫉妬されるくらい。

 俺達は、もう一度手を握り合って、別れた。
「さよなら。」
 別れは寂しいけれど、それ以上のものがあるから、今は一人で立っていられる。
 そして、前へと歩き始める。

 二匹のいた水槽の中には、藻だけが、ゆらゆらと揺れていた。
 もしかしたらまた迷い魚がやってくるかもしれない。
 その魚達は、どんな未来を望むのだろう。
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