暴走書家

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『寂しい魚-2-』

 寂しいと感じた時、誰かに傍にいて欲しいものだろうか。
 もし、誰かが手を差し伸べてくれたからといって、その手を取るのには勇気がいる。
 不用意に手を差し伸べてはいけない。
 それはとても残酷なことだから。

 導いてくれる手を待ったとしても、その先に望むものがあるとは限らない。
 期待をしてはいけない。
 期待をさせてもいけない。

 でもその時とても飢えていたら?
 必死でその餌に喰い付いてしまうだろう。
 例え、それが気まぐれなもので、もう二度と会う事はなかったとしても。

「智也は寂しいの?」
 晴彦に問われた。
 俺は、寂しいんだろうか。
「晴彦には、そう見える?」
「ううん。わからない。でも何となくそう感じただけ。」
「晴彦は?」
「どうだろうね。わからないや。兄貴を失った時、絶望の淵に立たされたような気になったけど、今となってはもうどうしようもないしね。」
「泣いた? お兄さんが亡くなったとき。」
「一人で、部屋に閉じこもって、声を殺して泣いたよ。」
「俺は、泣かなかった。両親を亡くした時。その時はまだ、俺は幼すぎたんだ。死の意味すら分からずに。」
「今は?」
「泣く機会を失ってしまったからね。今更もう泣く気にならないよ。」
「智也にとって、生きていくために必要だったんだね。それが。」
 あの時、不幸だと感じていられたら、俺は少しは違っただろうか。
 でも人は、本当に不幸な出来事に当たったとき、その時を最悪な事態だと、どうして判断出来るだろうか。

「智也が俺と一緒にいたいと感じるのは、やっぱり寂しいからなのかな。」
「それは、晴彦がそうだっていう事?」
「感覚としてはよくわからないけど、そんな気がするんだ。俺が、智也と一緒にいたいのは、やっぱり寂しいからで、智也に必要とされる事で、俺は、少し生きていられるような気になるんだと思う。」
「晴彦は、俺に必要として欲しいの? 必要とされて欲しいの?」
 誰かが、誰かの存在を望む時、そこに自分と言う存在を刻み込む事で、生きている事を確認する。
 自分と言う存在は、とても不確かなものだから。
「俺は、智也が手を差し伸べてくれたとき、その手を取った。智也が俺を必要としてくれて、それが、俺にも必要だと思ったから。」
「俺が、晴彦を利用しようとしているとは思わなかったの?」
「別に、それでも良いと思ったんだ。俺も、もしかしたら、智也のその手を利用しようとしているだけかもしれないと思ったから。」
「俺達は、どっちも狡いのかな。」
「そうかもしれないね。」
 その時俺は、確かに笑っていたのかもしれない。
 実際、晴彦にもそう指摘された。
 『滅多に表情を変えない智也が、笑っている。』と。

「智也は、一人暮らしなんだよね。たまには、叔父さんの家に行ったりしてる?」
「一度も行ってないな。行っても話す事なんてないし。晴彦こそどうなんだ?」
「俺も、大学に入って一人暮らしを始めてから、一度も帰ってないよ。兄貴の事があってから家に居辛かったし、両親と顔を合わせるのもね。」

「始めから、あそこは、俺にとって帰る場所じゃない気がする。」
「俺は……どうだろう。」

 住処を見失った魚が、どこを漂うとも泣く泳いでいくのは、ただ泳ぐ事だけが、生きているという証だから。
 何も考えずにただ泳いでいられたら、そう望むのに、それは出来ない。
 出来ないのは、本当にそれを望んでいる訳じゃないから。

 大学時代というモラトリアムの中で、まだ、俺も晴彦も漂っていられる。
 目的も、目標も見出せずに、それでも日々を生きて、それでも何かしら道を見つけないといけない。
 ココロは中々成長できなくとも、時間はそれを待ってはくれない。

 それぞれ、お互いの大学生活はあるものの、晴彦は結構俺の家に居つくようになった。
 俺の部屋の方が広くて、片付いているからだそうだ。
 確かに一度、晴彦の家へ行ってみたが、一応足の踏み場はあるものの、あちらこちらにいろんなものが散らばっていた。
「俺なりには、これで、何がどこにあるかわかるようになっているんだよ。」
 そう、晴彦は言っていたが。

 俺の家は、亡くなった両親の持ち家で、そのまま一人で住んでいた。
 だから、普通の学生のワンルームマンションと比べられても困るのだが。
「こんな所に一人で住んでいて寂しくない?」
「別に。高校の時からずっとそうして来たから。」
「ここの税金とか、今は智也が払ってるの? 一戸建てにしては小さいとはいえ、都心でしょ?」
「ありがたいことに食うに困ったことはないよ。でも、晴彦だって、一応、両親が家賃や学費払ってくれてるんだろ? ウリしなきゃ食っていけないわけじゃないだろ?」
「まあ、そうなんだけどね。始めたきっかけも特にないだけに、辞めるきっかけも中々ね。まあ、大学卒業となれば足を洗うんだろうけど。」
「金はあっても困るもんじゃないからな。」
「いきなり社会に出るより、学生時代にバイトして、金稼ぐこと覚えておいた方がいいからね。」

「あ、そういえば、今日もう、これからバイトなんだけど。」
「カテキョだっけ?一流国立大生なんて、どこへいってもモテモテでしょ。」
「需要は結構あるね。塾講っていうのもあるけど、俺にはちょっと向かなくって。」
「んじゃ、俺も、早いけど、バイト行こっかな。」
「行ってらっしゃい。」
「早く終わったら、また来てもいい?」
「ああ。」

 晴彦の早く終わったら、と言う時刻もかなり微妙なのだが。
 日付が変わらなければ、晴彦にとっては『早い』うちに入るのだ。

 案の定、日付が変わるころになって、俺がそろそろ寝る準備に入ろうか、という時になって、晴彦はやって来た。
 その日の客や、次の日の大学の予定によってはそのまま来ない事もあるし、(朝食だけをたかりに来たこともあった)気付いたら、いつの間にか、横で眠っていた事もあった。
 でも、もちろん、家の合鍵を渡してるのは晴彦だけで、それを渡すまでに随分期間も経った。
 寂しさに擦り寄ってくる晴彦が嫌な訳ではない。
 むしろ、心地良いと感じてしまうのは、晴彦は、晴彦なりに俺に気を使っていてくれて、それでいて、俺の寂しさも見抜いているからだろう。

「ただいまー、智也。」
 俺の家に来るのに、『ただいま』と言う挨拶が当たり前のようになってしまっていた。
「おかえり。」
 そんな、慣れない挨拶も、いつの間にか交わすようになっていた。
「なになにー、智也、もう寝るの?」
「もう、こんな時間だよ。」
「まだいいじゃん。ね、シようよ。」
「お前、よくそんな元気あるな。」
「智也は別腹~。」
「あ、そ。」
「いっぱいキスしてよ。」
 そうして、唇を重ねてきて、俺も、晴彦の唇を堪能する。
 舌を絡ませあって、吸い上げて、口腔内を舌で味わって。
 一度離れていった唇に、晴彦は『もっとして』と再び唇を重ねてくる。

 唾液が飲み込めなくて溢れてくるほど唇をむさぼって、名残惜しげにチュッと音を立てて、唇を離す。
 晴彦の口から溢れた唾液を、俺は指でぬぐって、舐めとった。

 その指を、晴彦は手にとって、自分の口に含んでいく。
 唇をすぼめてその指を吸い上げるように舐める。

「俺、この指好きなんだよね。始めて、俺に手を差し伸べてくれたときもそう思った。指が長くてさ、細くてさ、ほんと、器用そう。」

 晴彦の口から解放された指を、今度は、晴彦の肌を撫でていく。
 もう、何度か抱いたカラダ。
 乳首をつまみ上げ、指で押しつぶすようにすると、晴彦の口から、吐息が漏れる。
「ん…はぁ……。」

 感じて、立ち上がった乳首を、今度は舌で舐め、吸い上げる。
「ソコ…も…ダ…メ……も……。」
「ああ。」
 俺は勃起した晴彦のペニスに手を触れ、扱きあげながら口に含んでいく。
「あ…はぁ……イイよ……。」
 硬度を増したペニスに更に刺激を加えていく。
「智也……それ以上は……も…イきそうだから……。」
 俺が、そこから口を離すと、今度は、晴彦は俺のペニス唇を寄せてくる。
 同じように愛撫されて、俺も感じて、硬く勃ちあがって。
「く……晴彦……。」
「ん…智也…イれて……。」

 ローションを垂らして、アナルに指を挿入して、その窄まりを解していく。
「あ……やっぱ…智也の指…イイ……。」
 指にご執心いただいてるのは嬉しいのだが、頃合を見計らって、指を抜き去り、代わりにペニスを挿入していく。
「んん……くぅ……はぁ……。」
「晴彦、痛くない?」
「ん。大丈夫。動いて。」
 晴彦にできるだけ負担がかからないように、感じられるように、俺は抽挿を開始する。

「あ…は…んん!」
「イイ…?」
「ん……あ…ソコ……もっと……!」
 締め付けられると、イってしまいそうになるけど、少しでも長く感じていたくて、感じさせていたくて、晴彦の欲しがる場所を突き上げる。

「あ…く……イイ……も…イ…くぅ。」
「んん。俺も…く……。」

 ギリギリまで我慢して、その熱を放出した。
 それからまた、シャワーを浴びて、パジャマを着てベッドに一緒に入った。
 横向きに寝ようとする俺の背中から晴彦は抱きついて、指に指を絡めてくる。
 俺は、そんな晴彦の指をぎゅっと握り締めた。
 そのうち、背中に感じていた、晴彦の呼吸が寝息に変わる。
 俺は、それから、眠りについた。

 今は、まだ、俺たちにはこの指が必要なんだ。
 二人で彷徨さまよっていれば、まだ寂しくないと。
 まだ、この寂しさを癒す温もりに触れていたいと。
 そう願っていた。
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