暴走書家

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『共犯者-6-』

 夜中に目が覚めた。
 オトコが横で眠っている。
 一応、ダブルサイズのベッド。
 いつもは、ここで、この人は一人で眠っているんだろうか。
 何か不思議感じだ。
 一度、トイレに立ったが、またベッドに滑り込みそのオトコの横で眼を閉じた。

 次に目覚めた時は、オトコはもう横にはいなかった。
 起き上がるのが面倒くさくって、ベッドの上しばらくゴロゴロしていた。
 何をしているんだろう、俺は。
 あー、腹が減ってきたな。
 そんな事を考えていると、オトコが寝室に戻ってきた。

「ああ。起きたんだ。おはよう。」
 もうすっかり着替えてしまっている。
 しかし、このオトコ、やっぱり黒い服を着ているんだな。

「朝食の用意が出来たんだ。お腹減ってない?」
「雫さんが作ったの?」
「うん。直哉くんのお口に合うかどうかはわからないけど。」
「いただきます。」

 それは、結構ちゃんとした朝食で。
 見た目も匂いも美味しそうだった。
「いっつも自炊してるんですか?」
「中々面白いよ、料理って。直哉くんはしないの?」
「外で軽く食うとか、コンビニ弁当とか。」
「まあ、今はお手軽に惣菜とか手に入るからね。しなくても、確かにやっていけるよね。」
 こんなにちゃんとした朝食をとったのはどれくらいぶりだろう。
 高校時代に実家にいた頃でも、両親が共働きだったから、手料理なんてちゃんと食べた記憶がない。

「ご馳走様でした。今日どうするんですか?」
「え? 特に考えてなかったけど、何かしたい事とかある?」
「俺は、別に何もないですけど。」
「僕も特にないね。」
「いつも休みの日って何やってるんですか?」
「うーん。本を読んだり、仕事をしたり。あとはぼーっとTVを眺めたり。アウトドア派じゃないんだよね。」
 何だよ、1人で出来る事ばかりじゃないか。
 つーか、俺と一緒にいて本当に何するつもりなんだ?

「お茶飲む? 緑茶嫌いじゃない?」
「あ、はい。」
 お湯を沸かして、急須にお茶っ葉よお湯を注ぎ込んで、湯飲みにお茶を注いでで手渡してきた。
「まだちょっと熱いけど。」
「あ、どうも。」

「直哉くんって幾つ?」
「あ、26です。雫さんは?」
「僕? 34歳。」
 まー、確かに年は上だと思ったけど、34歳って『オジサン』なのか?
 基準はわからないが。

「直哉くんの好きなオトコってどんな人? 元々は別にゲイってわけじゃないんでしょ?」
「気になるんですか?」
「興味はある。」
 
 この人は俺と先輩とのことを知らない。
 知ったらどうするだろうか。

「……大学のサークルの先輩だったんです。何でかわからないけど、誘われて、その時は、好きかどうかなんてわからなかったけど、流されて、セックスして有耶無耶なまま付き合って、でも、結局、先輩の相手って俺だけじゃなかったんですよ。それが嫌で、もしかしたら、俺は先輩の事が好きなんだ、って気付いたんだけど、先輩は、俺だけを見てくれている訳じゃないから、もう『好きだ』とも言えなくって。報われる事がないのはもうわかっているんですけど。」
「まだ付き合いあるの? その『先輩』と。」
「今はもう昔とは違うけど。先輩には、何か、本気で好きなオトコが出来たみたいで。って本人から直接紹介されたんだけど。『友達』だって。」
「その相手は知ってるの、直哉くんが、ただの『おトモダチ』じゃないって。」
「知られてます。俺が、先輩の事まだ好きだって事も。」
「ふーん。複雑だねぇ。ま、でも気持ちの切り替えなんてすぐに出来る訳じゃないからね。」

「それで、俺がまだ先輩が好きだって言っても、雫さんは、俺と付き合おう、って言えるんですか?」
「そりゃあ、君の事が気に入ってるし。」
「まだ2度しか会ってないのに?」
「回数なんて関係ないんじゃない?」
「俺は、雫さんの事好きにならないかもしれないよ?」
「先の事なんてわからないよ。でも、好きじゃなくても、嫌じゃないんでしょ? 僕といるの。」
「そりゃあ、そうだけど。でも俺、雫さん以外のオトコと寝るかもしれないよ? それでもいいの?」
「んー、どうだろう。僕、あんまりそういうのどうこうしようとか思わないんだよね。それとも、直哉くんは止めて欲しいの?」
「わからない……。」

 本当にわからない。
 誰かに止めて欲しいのだろうか。
 今俺自身がやっている事を。

「あのさ、オトコの僕が誘っておいてなんだけどさ、『オトコ』を好きなのはその先輩が特別なんじゃないの? なんで、女の子と遊ぼうとか思わないの?」
「わからない。もしかしたら、どっちもそんなに好きじゃないのかもしれない。」

 わからない、ばっかりだな、俺って。

「……実は怖いんですよ。自分の家のベッドで眠るのが。」
「うん?」
「先輩の事思い出してしまいそうで。だから、外で、オトコとホテルに行くことが多くって。」
「家にいる時はどうしてるの?」
「寝るのはソファ。ベッド捨てるのも出来ないし……。」

 このオトコにこんな事話してどうするんだろう俺。

「気が向いたら、僕のところ寝に来てもいいよ。遅くても良いんなら、夕食、作ってあげるし。」
 期待してた訳じゃない、だけど、嬉しくって。
「たまに、来ても良いですか?」
「良いよ。でも、一応前もって連絡はしてね。」
 年上の、このオトコの言葉に甘えさせてもらっても良いのかな。
 そんなこと話している間に時間は随分経っていたみたいで。

「もう昼近くか。昼御飯、何か食べたい物ある?」
「いや別に。」
「じゃあ、何か食べられないものは?」
「……グリンピース。」
「了解。んじゃ、ちょっと、買い出し行ってくるね。適当にくつろいでくれいていていいから。」

 オトコはそういうと、出て行った。
 適当と言ってもなぁ。
 俺は何となく、オトコの仕事部屋に行ってみた。
 本当にすごい量の本だ。
 色々種類もあるみたいだし。

 あ、この本。 『海の底の底』
 俺が装丁のイラストを描いた本だ。
 そういえば、ちゃんと中身読んだ事なかったなぁ。
 その小説をぱらぱらめくって読んでみる。

 そうしている間にオトコが帰ってきた。
「何? 本読んでたの?」
「うん。この本、俺がイラスト描いてんだ。」
「へぇ。あ、ホントだ、『喜多嶋直哉』って書いてある。」
「こういう話、好きなんだ。」
「そうだね。割と好きかも。待っててね、今からご飯作るから。」
「うん。」

 そうして、また俺はその小説の続きを読み始めた。
 短編集だから読みやすい。
 それから、ご飯を食べて、特に何をするでもなく二人で過ごして。
 結局、夕食も一緒に食べて、そのまままた泊まって。
 セックスはしなかったんだけどね。

 また朝が来て、朝食を摂って、さすがにこれ以上は、このままここにいる訳にもいかないし、このオトコにも仕事がある。
 朝、オトコが仕事に行くついでに車で家まで送ってもらった。
 仕事に行く時はスーツなんだ。
「スーツ姿って初めて見た。」
「仕事中はさすがにラフな格好は出来ないからね。」
 そうして別れ際に鍵を手渡された。
「僕、仕事遅くなること多いから、適当に家来てても良いよ。んじゃね。」

 そうして去っていく車を見送っていた。
 たまには、遊びに行っても良いかな。
 そう思う。
 大切に鍵を握り締めた。


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