暴走書家

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『共犯者-5-』

 特に変わりのないまま日々は過ぎた。
 店にもちょくちょく顔を出していたけど、あのオトコと会う事はなかった。
 連絡を取ろうと思えば、携帯の連絡先を知っているから出来るんだけど、何となくそれをしたくはなかった。

 セックスをして、付き合おう、という話になったけど、別にあのオトコの事が好きになった訳ではない。
 勿論、嫌だ、という訳でもなかったが。

 連絡をする、と言って別れた。
 けれど、半信半疑だった。
 もしかしたら、連絡は来ないかもしれない……。
 でも別にそれはそれで良かった。

 そういえば、今週の木曜くらいって言ってたな。
 しかし、本当にその気があるのなら、もうちょっと向こうから連絡してきたらどうなんだ? と思う。
 まあ、特に連絡し合う事なんてないんだけど。

 オトコは宣言していた通り、前日の水曜の昼になってやっとメールをよこして来た。
『僕は、明日休めそうだけど、直哉くんはどう? 今晩から空いてる?』
『大丈夫』
 とだけ、簡潔に返した。
 その後、『夜、22時位はどこにいる?』
 どこで待ち合わせ、って事だろうか。
 どこら辺がいいかなんてわからない。
『この前の店』
 そこら辺が無難だろう。
『了解』
 以上終了。

 取り敢えず、また会う気はあるみたいだ。
 俺はまた、通い慣れたあの店へ、向かっていった。
 あのオトコが来るまでにはまだ時間があって、独りで飲んでいると、別のオトコに声を掛けられた。
 それが、今日でなければ誘いに乗っていたと思う。
 『すみません。約束があるので』そう言うと、『残念』と言って、オトコは去っていった。
 しつこくなくて、ラッキーだった。
 その気になれなくて、断る時でも、諦めの悪い奴はいる。
 そういう時は本当にうんざりするよな。

 22時を少しすぎたころ、オトコがやって来た。
「ごめん、遅くなって。」
 初めて会った時きと同じような全身、黒いいでたち。
 この男、黒が好きなのかな。
 黒でバリエーションを揃えるって難しいだろうな。
 普段もこうなのだろうか。

「出る?」
「雫さん、来たばっかりでしょ?」
「そうだけど、僕、お酒飲まないし。」
「俺、もう一杯くらいいきたいし、もう少しここで。」

「了解。直哉くん、飲み過ぎてない?」
「この間ほど酔ってないよ。」
「この間は、酔っていたって自覚あるんだ。」
「まあ、酔う為に来ているようなものだから。」
「ふーん。あ、マスター、いつものお願い。」
 『かしこまりました』といってマスターが飲み物を作りにいく。
 いつもの……この前と同じ飲み物か。

「雫さんは、よくこの店に来るんですか?」
 初めて会ってから、今日になるまで、見かけた事なんてない。
「二月に一度、来るか来ないか、くらいだよ。」
「それなのに、いつものって言うだけでマスターに通じちゃうんですね。」
「ああ、個人的に友人だから。はは、役に立たない友人だよね。殆ど来なくって、その上売り上げにも貢献してないんだから。」

 本当に、のん気そうだな、このオトコは。
「この後どうするんですか?」
「うーん? どうしよっか。どうしたい?」
「どうしたい……って、何も考えてなかったんですか。」
「僕の家来る? あ、禁煙だし、お酒ないけど。」
「え……。」
 いいのか? そんなに、簡単に自宅にオトコを入れて。
「あ、それとも直哉くんの家行こうか。」
 いやいや、だから、そんないきなり殆ど知らない人間に自分のテリトリーに入って欲しくない。

「俺の家は……嫌です。」
「じゃあ、僕の家来る?」
「雫さんが構わないのなら。」
「僕? 僕は全然良いけど?」
 警戒心、というものが、このオトコにはないのだろうか。
 俺は良い、自分のベッドで寝なくて済むのなら。
 どうせ、どこに行ったって、ヤる事は同じなんだから。

「じゃあ、行こうか。」
 そう言って店を出る。
「もう少し言った所の駐車場に車止めてるから。」
「車なんですか。」
「通勤もプライベートも大概、車。だから、お酒飲まないの。」
「はあ……。」
「直哉くんは車、運転しないの?」
「俺はペーパードライバーですから。」
「まあ、これだけ、公共交通機関が発達してれば、そっち使った方が良いんだろうけどね。」

 車を走らせること30分程度。
 そのオトコのマンションに着いた。
 独りで暮らすには結構贅沢な造りだ。

「賃貸ですか?」
「いや、僕の。」
「金あるんですね。」
「ないよー。でも自分家が欲しかったからローン組んで馬車馬のように働いてるの。」
 冗談めいてオトコが言った。 
 綺麗に片付いた部屋。
 というより、あまり物がないのか。

「ベッドは?」
「寝室はそっち。それで、こっちが仕事部屋、あ、あと、ここがトイレに風呂。」
 寝室にはシンプルにクローゼットととベッド。仕事部屋にはパソコンとまるで小さな図書室にいる気にさせるような本棚と本。
「なんか、すごい量の本ですね。」
「ああ、どうしても、この趣味だけは辞められなくってね。おかげで余計に金が掛かって。」
 苦笑するオトコ。

「……シャワー借りますね。」
「ああ、うん。泊まってくでしょ? パジャマ置いておくよ。そんなに体格変わらないから、僕ので大丈夫でしょ。」
「ありがとう。」
 取り敢えず、お礼を言って、シャワーに向かった。

 俺が出て行くと、オトコが交代でシャワーに向かう。
 やっぱりどこに行ったってヤる事は同じなのね。
 禁煙、って言ってたし、あー、煙草吸えないのが辛い。
 煙草って暇つぶしになるのにな。

 仕方無しにベッドにごろんと寝っ転がり天井を見上げて、ぼーっと過ごしていた。
 程なくしてオトコがやってくる。
「眠い? このまま寝る?」
「は? ヤらないの?」
「嫌、なんか、そのまま寝入りそうな感じがしてたから。」
「煙草吸えないからつまらなかったの。」
「ああ、ごめんね。僕、吸わないから灰皿なんてないし、部屋に煙草の臭いが染み付くの好きじゃないから。」
「……おかげで、欲求不満なんだけど。」
「ごめん。」
 くすり、と笑って俺に覆いかぶさってくる。

 重ねられる唇が気持ちいい。
 舌を絡められて、吸われる。
 そうして、何度も、何度も角度を変えて、重ねられる唇。

 前回のセックスで、覚えているのか、俺の感じる部分を男の手が器用に撫でていく。
 俺のペニスが、確かに高ぶってくるのがわかる。
 そしてオトコのペニスも。

 そのまま口淫を施されて。
 すっごく気持ち良くって。
 舐められながら手で扱かれると、もうたまらなくて。

「あ…ダメ…も…イっちゃいそう…。」

「我慢できない? 良いよ。イっても。」

「え……あ……ちょっと……あ……んん!」
 結局、堪えきれず、俺は放ってしまった。
 そんなに溜まってたか? 俺って。
 そんなはずはないんだけどな。

 俺が放ったものをベッドサイドにおいてあるティッシュでぬぐわれた。
「ちょっとは落ち着けた?」
「え?」
「緊張してたんじゃない? いきなり他人の家に来て。」
 え? そうなのか? そうだったのか?
「ちょっと脱力……」
「そう。良かった。」

「雫さんは……シないの?」
「まだ、直哉君、キツいでしょ。イったばっかりなんだから。」
「あー、煙草吸いたい。」
「ごめんね。コレで我慢して。」
 そうして、また唇を重ねられた。
「これ、煙草の代わりになるの?」
「口寂しくはないでしょ。」

「雫さんは、煙草嫌いなんですか?」
「自分で吸おうとは思わないね。昔は、吸ってた事はあるけど、20歳で止めた。」
「よく止められましたね。」
「元々ニコチン中毒になるほど吸ってなかったしね。まあ、後は、税金をぼったくられてるような気がしてね。その分、本にお金がつぎ込めるようになったし。何かしらに依存はしてるよ。」
「そういうもんなんですか。」
「まあ、人それぞれだよ。結構、何かに依存してる人って多いんじゃない?」
「セックスとか?」
「あはは。そういう人もいるよね。」
「不健全ですかね。」
「さあね。何とも言えないな。」

「依存してるな。俺も。いろんなものに。昔は、もっと無関心だった気がするのに。」
「無関心ねぇ。どっちがいいとかは言えないね。どっちも、自己防衛本能みたいなものだから。」
「自己防衛本能……ですか。」
「人間の感情なんて、単純なようで難しいのよ。」
「悩むだけ無駄ですかね?」
「いやいや、大いに悩んで成長しなきゃね。」
「いつになったら悩まなくってすむんですかね。」
「生きてる限り、無理じゃない?」

 悩んでも、悩んでも、答えなんか出なくて。
 傷つくのが怖くて、見えてるはずのものを見えないようにしてきた。
 そこには、永遠に続くトンネルがあるような気がしたから。
 そこに射し込む僅かな光を、俺は見逃そうとしていたのかもしれない。
 それでも今は……。

「雫さん……」
「ん?」
「シよう。」

 今は、このオトコが、抱いてくれるから。

 再び加えられる愛撫に反応していく。
 オトコの触れる指先から、熱が上がっていくのがわかる。

「あ……ぁ……んん……」
「直哉くん……。」
 指で解されたアナルにオトコのペニスの先端が触れ、ゆっくりと挿入されていく。
「あぁ……!」

 内壁を擦られる感覚に堪らず腰が揺れる。
「直哉くん、そんなに締め付けたら駄目だよ。もう、僕ももたない。」
 そんな事、言われたってどうしようも出来なくて。
 突き上げられて、それでも離れてしまわないようにこのオトコにしがみついて。

 俺のペニスも、オトコの手で扱かれて。
「く……ん……」
 オトコが射精したのと前後して、俺もオトコの手の中に放っていた。

「直哉くん、湯船浸かる?」
「どっちでも。」
「じゃあ、お湯、溜めてくるね。」

「湯船で溺れないでね。」
「はい……。」
 かけ湯で汗を流して、湯船に浸る。
 疲れが溶け出ていくようだ。
 温かいお湯に身体が包まれている。
 落ち着けたけど、それ以上入っているとそこで寝てしまいそうだったから、惜しみながらも出た。

「雫さん、お先、ありがとうございました。」
「先に寝ててもいいよ。明日は急がないんでしょ?」
「はい。」

 そうだ。
 明日は完全にオフなのだ。
 どうするつもりなんだろう。
 そういえば、俺って、普段、家で仕事してる所為か、オン・オフの切り替えがあんまりないよなぁ。
出歩く方じゃないし。

 うとうとしかけていた頃、オトコが風呂から上がってベッドに入ってきた。
「直哉くん、もう寝た?」
「ん……」
 生返事をした俺に、『あ、ごめん、そのまま寝てていいよ。おやすみ』と言ってこめかみにキスされた。
 このオトコ結構、キスするの好きなんだなぁ。
 それが別に嫌じゃなかったりする。
 これって、このオトコを受け入れ始めている証拠なんだろうか。
 まあ、今考えても仕方がないか。

 『おやすみ』、口に出ない言葉を心の中で呟いた。


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