暴走書家

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『共犯者-4-』

 朝7時、ホテルのモーニングコールが鳴る。
 その音に、俺は目が覚めた。

 ベッドの横には、オトコはいない。
 だが、かすかに声が聞こえる。
 それは直接的な声ではない。
 ブラウン管からの……。

 そのオトコは既に着替えを済ませ、TVのニュースを見ていた。
 俺が目覚めたのに気付き、『おはよう』とにっこり笑いかけてきた。

「いつから、起きてたんですか。早いですね。」

「んー。1時間くらい前かな。」
「そんなに早く起きてたんなら、別に俺の事なんか待ってないで、帰ったら良いじゃないですか。」
「だってまだ答え聞いてないし。昨日僕が言った事、覚えてない訳じゃないでしょ?」

 そうだった。
 昨夜、俺は、このオトコから、『付き合って欲しい』、と言われたのだった。
 その答えを有耶無耶にし、そのまま寝入ってしまった。

「僕が先に起きてなきゃ、絶対、君、何も言わずに、帰ってたでしょう? だから待ってたの。」
「だからって、俺がOKするとは限らないでしょう。」
「まあ、そうだけどさ。無理強いはしたくないけどさ、取り敢えず、何回か会ってみても良いんじゃない? それとも、二度と会いたくない?」

 どうしよう。
 どうしよう。
 どうしよう。

 この人が差し伸べてくれた手を、俺は取るべきなのだろうか。
 俺は……。

「悩んでる? 絶対嫌、って訳じゃないんだね。ねえ、携帯持ってる?」
「あ、はい。」
「連絡先教えて。あと、名前と。」
 そう言って、手帳から紙を一枚破り、ボールペンと一緒に俺に渡してくる。

 嫌、ではないと思う。
 だからといって、良い、という訳でもない。
 そもそも、そんな気持ちでまた会ってしまっていいんだろうか。
 このオトコは知っている。
 俺に、好きなオトコがいる事を。
 このオトコは、それでいいんだろうか。

「あんたこそいいんですか? 俺に好きなオトコがいるって、わかってるんでしょ。」
「でも、恋人じゃないんでしょ? 何かしら(いわ)くはありそうだけど。言ったでしょ? 僕は君が気に入ったって。」

 なんだか、このオトコには、何を言っても無駄な気がする。
 観念して、俺は、紙に携帯の番号と、名前を書き込んだ。
「あ、良かったら、メールアドレスも、ここに書いておいて。」

 言われるまま、俺は書き込んだ。
 嘘の番号を書き込んでも良かったのだが、俺は本当の事を書いた。

「……もしかしたら、デタラメ書いてるかもしれないですよ。」
「まー、そういう時は、そういう時で諦めますよ。言ったでしょ? 無理強いはしないって。」
 そういいながら、オトコは紙を見ながら、自分の携帯に入力していっている。
「えーっと、喜多嶋直哉(きたじまなおや)くんね。んじゃあ……」
 俺の携帯が鳴った。
 新着メール1件。
 このオトコが送ったのか。
「あ、デタラメじゃなかったね、名前も本名?」
「はい……。 えーと、宮下雫(みやしたしずく)さん?」
「そうそう。登録しておいてね。あ、直哉くんて呼んでいい? 僕の事は雫でいいから。」
「はあ……」
「連絡しちゃ不味い時間帯とか、曜日とかある? ほら、仕事とかで。」
「あ、俺、不定期で、自宅で仕事してるから、寝てる時間以外なら大体、大丈夫です。」
「そうなんだ。じゃあ、とりあえず、メール送るから、電話OKだったら、メール返して。ちなみに僕も、昼間は、大概携帯出られるから、いつでもOKだから。」
「はあ。」
「不定期って、もしかして、今日もこれから仕事?」
「はい。」
「そうかぁ。残念。ゆっくり出来ないんだね。ゆっくり休み取れる時とかないの?」
「自分で調節すれば何とか。」

 うーん、と唸って、オトコは、自分のスケジュール帳をめくる。
「来週……は無理か。えーっと、再来週の木曜あたり空けられる?」

 随分、先の話だな。
「そんな先の事わからないけど……、多分。」
「前日に連絡入れるよ。あ、それまででも、別に用があったら、掛けてきてくれて良いから。」

 そうして、その日は別れた。
 電話掛ける……つったって、特に用はないからな。
 『付き合おう』とか言って、いきなり、そんなに期間をあけられるってどうよ?
 とりあえず、約束はしたみたいだけど……どうなる事やら。
 一応仕事の方は調整付けておくか。

 でもさ、それでもまだ、何か駄目だな。
 仕事が上がるとついつい店に足が向いてしまう。
 これって、あの人に失礼なのかな?
 でもまだ一回会ったばっかりだし……。

 それとは別に例のコとも会ってたりする。
 何かしたい訳じゃないけど、なんだかなぁ。
 そこコも俺も、まだ先輩に振り回されっぱなしだ。
 俺と先輩の関係もバレたみたいだし。
 そして、認めたくなかった俺の先輩への気持ちも。
 うーん、これもどこへ転がっていくのやら。


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