暴走書家

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『共犯者-3-』

 土曜の夜、もう随分時間が経ってしまった。
 仕事を終えてしまって、自分の部屋にいるのが嫌で、いつものように店に来ていた。
 基本的に誰かとつるみたい訳じゃない俺は声を掛けられない時は独りで飲んでいた。
 例え独りでも店に来る方が何倍もましだった。

 今日はもう駄目かな、そう思いかけていた時、一人のオトコから声を掛けられた。

「君、一人?」

「ええ……」
 誘いの常套句だ。
「良かったら、あっちで一緒に飲まない?」
 ふーん、すぐホテルに行く訳じゃないんだ。
 まあ、良いか。面倒臭いけど、結局は同じ事なんだろう。

 俺はそのオトコとカウンターへ向かった。
「マスター、いつもの、お願い。君は? 何か飲む? もう随分飲んでるみたいだけど。」
「じゃあ……」
 と俺は、さっき飲んでいたものと同じものを頼んだ。
 『いつもの』で通じるんだ。
 常連さんなのかな?
 他の客の事なんか気にした事はなかったからわからない。
 ただ、わかるのはまだ俺が寝た事のない人間だっていう事くらいだ。

「ねぇ、良かったらオジサンと付き合わない?」
 にっこり笑ってそう言われた。
 はあ? 付き合う? これは本格的に面倒かも。
「俺、誰かと付き合うなんて思ってないですから。」
「ふーん。」
 そういってじっと見つめられる。
 なんだか嫌だな、こういう風に見つめられるの。

「好きな人がいるから? それとも誰か1人に縛られたくないから?」
「だったらどうだって言うんですか。」
「いや、別に?」
「どっち? それとも両方?」
「あんたに関係ないじゃないですか。」
「まあね。でも、僕、君の事何となく気に入ったから。」
「何となくって、だって会ったばっかりじゃないですか。」
「それが何かいけない?」
「いけなくはないですけど……。」

 ヤバイ、俺、もしかして押されてる?
「ねえ、どっち?」
「……両方です。」
「ふーん。やっぱり。好きな人って、オトコだよね。でもさぁ、君ってゲイに見えないんだけど。」
「何で、そう思うんですか。」
「ただの感だけど。」

 相変わらず、その人はにこにこ笑っている。
 この人、意外に鋭いのかな。
 そう思って、さり気にその人を観察してみる。
 自分で自分のことを『オジサン』と言うけれど、それほど、『オジサン』には見えない。
 まあ、俺よりは年上だろうけど。
 そのくせ、自分の事を『僕』って言うんだ。

 耳にかかるかかからないくらいの漆黒の髪。
 眼鏡の奥で優しく微笑む、漆黒の瞳。
 柔和な、そして綺麗に整った顔立ち。
 黒いタートルネックのニットに黒いズボン。
 全身黒い中で右耳に光るブルーのピアス。

「俺に好きなオトコがいるってわかってても、俺と付き合おうと思うんですか?」
「別に気にしないけど。大体、好きだって言っても、付き合ってないんでしょ? こういう場所であんな表情してるんだから。」
「あんな表情って……。」
「うーん。上手く説明できないけどね。誘っているっていうかさぁ、でも何か拒んでいるっていうか。」

 そういうのってわかるものなのだろうか?
 無意識でも、俺はそんな感じなのだろうか。
「そんなに俺ってわかりやすいですか?」
「どうだろうね。僕がそう感じただけだから。他人が君の事をどう見てるかなんて僕にはわからないし。」

 この人、怖いかもしれない。
 でも、なんだか……。
 壊して欲しい、どこかで、そう願っているのかもしれない。

「ヨかったら、考えてもいいよ。でも、その前に、もう一杯。」
「あ、もう駄目だよ。飲みすぎでしょ? 酔っ払い抱いてもつまらないんだけど。それに、酔っ払ってたらイイかどうかもわからないでしょ。」
「じゃあ、あんたの、残っているのだけ頂戴。」
 そう言ってそのオトコの半分くらい液体の残っているグラスを勝手にとり飲み干した。
「………何これ? 酒じゃないじゃん。」
「ん? 柚子茶。僕、お酒飲まないから。ちょっと甘かった?」

 ガキかこの人は。
 訳のわからない人間だ。

「じゃあ、ホテル行く?」
「んー。っていうかさ、君が好きな人は確かにオトコなんだろうけど、ゲイじゃないんでしょ? それなのに、僕とホテル行こうとか思う訳?」
「誘ってきたのはあんたじゃん。」
「確かにそうだけどさ……。」
「別にあんたが誘わなくっても、他のオトコと寝てたよ。」
「まあ、君が承諾したんなら良いんだけどね。」

 そうして店を出てホテルへ直行した。
「この時間からだと、オールになるけど、良い?」
「はい。」
 別に明日早い訳でもない。

 強引ではなく、けれど、力強く口付けられた。
 歯列を割って入ってくる舌を絡めとられる。
 口腔内を舌で愛撫されて確かに感じた。

 細くて長い指が器用に俺のカラダを這い回り快感を煽っていく。
 確かに感じた所を更に舌で舐められて背筋がゾクゾクとした。

「あぁ……はぁ……」
 勝手に声が上がる。

 もう勃ち上がりかけているペニスに触れられ、ゆるゆると扱かれる。
 そうするともうたまらなく快感で。
 硬度を増していくペニスの先端に舌が触れ、口で咥えられて、舐め上げられた。

「んん……はぁ……あ…っ…もう……」

「イきそう?」

「あ……でも…まだ…」
 
 オトコはローションを手に取り、俺のアナルを解していく。
 受け入れる事を知っている俺のアナルは従順に反応していく。

 オトコは勃起した自身のペニスにゴムを被せ、ゆっくりと俺のアナルに挿入していった。
「いけそう? 大丈夫?」
「ん。動いて。大丈夫。」

 俺の了解を得て、オトコは抽挿を始める。
 前立腺を擦られて、快感に喘いだ。

「ああ!あん……はぁ……ん」

 ソコを突かれるたび、イきそうになる。
 何も考えられない。
 考える必要なんてない。
 今はただ快感を追っていれば。

「は…あ…も……イ……く……!!」

 言うやいなや、俺は射精していた。

「んん……くぅ」

 俺がアナルを締め付けて、オトコも達した。
 オトコは萎えたペニスを俺の中から抜き去る。

 しばらく動けないでいる俺からオトコは離れ、浴室に消えていった。
 そこから、お湯で濡らしたタオルを持って戻ってくる。
 自分の腹の上に射精してしまった俺の精液を、丁寧に拭き取ってくれた。

 その指先は、さっきまで俺を感じさせていた動きとは異なっていて、それでも優しい動きだった。

 素直にヨかった、そう思う。
 だけど、それでこのオトコと付き合うのか、というのはやっぱり別の話で。

 なのに、俺は何となく、またこのオトコと会っても良いような気になっていて。
 ただ、セックスが良かっただけだろ?
 それなら今までだって、別にそんな奴いたじゃないか。

 どうしよう。
 このオトコの手を、取ってみようか。
 迷いはある。

 やっぱり、先輩を忘れられない俺。
 だけど、好きなオトコがいても良いと言ってくれたこのオトコ。
 このオトコの笑顔は、ただ優しいだけじゃなくて、いや、優しそうだから怖いのかもしれない。

「どう? 動ける?シャワーいけそう?」
「ん……大丈夫。」
 のろのろとベッドから抜け出てシャワーへ向かう。

 まだ、酔っているのかな、俺は。
 酔っている? 何に?
 シャワーから出て、ベッドに横になると、睡魔に襲われてしまった。
 まあ、いっか、考えるのは明日の朝で。

「君、明日、何時に起きる?」
「んんー、7時くらい。」
「了解。」

 それだけ会話をして、もう、その後の俺の意識は薄らいでいった。


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