暴走書家

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『共犯者-2-』

 目が覚めたら全然知らないオトコとベッドの中にいて、何ていうのは初めてじゃない。
 大抵、昨夜どうこうして、っていうのは覚えていなかった。
 バーに行って、結構ハイピッチで飲んでしまう。
 そうなると、途中から記憶がなくなっていて。
 声を掛けられたオトコにそのまま抱かれてしまう事が殆どだった。
 
 変に覚えている方が嫌だった。
 多分、快楽を覚えただろうそのカラダは、翌朝残ったアルコールとその腰の気だるさがその証拠だった。
 そんなだるさを引きずったまま家に帰り、シャワーを浴びて仕事に取り掛かる。
 会社に行くなんて作業をしなくてもいいのがこんな気ままな生活を支えられる一つの要因でもあった。
 絵を描くのが好きだった俺は美大を卒業後、何とかちまちまとイラストレーターなんぞをやっている。
 儲かっている訳ではないが、それなりには食べていける。
 仕事をもらえるだけでもありがたいものだ。

 仕事の締め切りはあるけれど、時間的に拘束される訳ではない。
 俺が俺のペースで仕事をすれば良い。

 先輩はまだたまに俺のマンションに押しかけてくる。
 大概昼間の内に連絡が入るのだ。
 そうすると、俺は俺でその日は外に遊びに出ず、その夜を結局先輩と過ごす事になる。

 先輩と過ごした俺のベッド、そこで一人で眠るのはとても寂しかった。
 だから、先輩の来ない夜は、オールでホテルいることも多々あったし、相手のオトコの都合上それが無理でも、家に帰ってきてベッドを使わずにソファで眠る事が殆どだった。

 先輩も俺も他のオトコとセックスしてるわけで、それでも俺達はセックスをして、ちゃんとした会話なんかもなくなって、ただ気が向いたときだけにヤるだけの存在なのだ。

 こんな生活をいつまで続けるつもりなんだろう。俺は。

 ただ先輩の態度が少し変わって、好きなコができたと言われて、そんな事を言われる俺って、先輩にとって何だったんだろうって。
 そうして、好きなコに『友人』だって紹介されてる俺って……。

 セックスしているくせに『友人』って紹介できる先輩の神経もわからなくって。
 そのコもそのコでどんな感じがしたんだろう。
 俺が先輩とセックスする間柄だって知っているのだろうか。
 知ったらそのコはどうするだろう。

 先輩はその頃にはもう他のオトコと遊ばなくなっていた。
 紹介された時、健気なコなんだな、という印象を持った。
 先輩が一応、遊び人だった事を知っていて、でも『友人』だって紹介されたのは俺だけみたいで、やっぱり、先輩が『元』遊び人だって事を知っていて、何となく戸惑っているところを見るとちょっと面白かった。
 それと同時に、先輩の中では、俺は恋人ではなかったけど、一応、他のオトコとは違ってちょっとは特別な存在なのだと知った。

 先輩は先輩でそのコに真剣に付き合ってもらおうとして必死だった。
 そのコもそんな遊び人がそのコに本当に本気で好きだと言っててくれているのが不安みたいだった。
 俺から見てもそのコが可愛らしくて、不安で俺なんかにもすがってくるところがやっぱり健気でついつい構ってやってしまいたくなる所があった。
 俺が先輩と、そういう関係だっていうのもわかっていたみたいだった。
 そこら辺は、馬鹿な人間じゃないんだな、と思う。
 何となく、そのコに先輩が惹かれたのがわかった気がした。

 そのコを可愛らしいと思う半面、俺は結局、先輩の恋人にはなれないとわかってそのコが憎くもあった。

 俺ってイジワルなのかな?
 そういうコをいじめてみたくなるなんて。

 そんな俺なのに、先輩の事が心配で、俺に関わってくるそのコって……。
 必死なんだろうなぁ、と思う。
 勿論(もちろん)、誰にも相談きるはずもなくって、そこに『俺』、っていう存在があって。

 俺もまだやっぱり先輩の事好きなんだなぁ、と感じる。
 そのコと関わる事で、また一つ先輩の違った一面が見えてきて。

 『溺れるものは藁をも掴む』って言うけど、やっぱりそんな先輩に魅せられたそのコにとって俺は『藁』なんだろうな、と思う。
 そんなもの掴んだって、しょうがないじゃん? と思っても掴む事しか出来なくって。

 先輩も先輩で必死みたいで。
 だって、過去は消せないじゃん?
 両想いなんだろうけど、中々上手くいかなくって、なんで、まだ俺に手を出してくるのよ?
 そういうところが、そのコにはやっぱり不安なんじゃないの?

 モテるくせに、色んなオトコとセックスをして来たくせに、この先輩はそういうところに鈍感(ニブ)いんだな。
 だから結局、先輩は色んな人の気持ちに気付かずに傷付けてきた。

 でも、俺も、今現在いろんなオトコと寝て、その相手を傷付けたりしてるんだろうか。
 俺は基本的に、一夜限りで、誰か特定の相手に絞る事は出来ずにいた。
 だって、まだ先輩の事が好きだから。

 それに大体、俺って、オトコとセックスするけど、オトコの事が好きなのか? というと、そうじゃないと思うから。
 ただなんとなく、オンナとは付き合わなくなったけど。

 いやいや、『付き合う』っていう行為自体誰ともしてない。
 ただ、オトコに抱かれるだけ。

 ただ、誰かに、誰でもいいから、抱かれ続けて先輩の影を消したかったから。

 俺は絶対に言わないけど、そのコと先輩は上手くいくんじゃないかな? と思う。
 そのコの純粋な先輩への想いはわかるし、先輩のそのコへの態度もわかるし。
 だって、俺も、そのコと同じように先輩の事が好きだから。
 好きだから、先輩の事を見てきたから。

 勿論、俺はその架け橋になる気なんてないよ?
 それくらいイジワルさせてくれたっていいじゃん。
 俺だって、先輩に振り回されてきたんだから。

 俺にもまたいつか、好きな人が出来たりするんだろうか。
 先輩の本当の『友人』になれる日が来るんだろうか。

 先輩は多分、俺に『好き』だっていう気持ちを教えてくれた人。
 そして、それが必ずしも叶うものじゃないっていう事も教えてくれた人。

 何となく俺は、昔付き合った彼女たちが、俺に別れを告げていった理由がわかるような気がした。

 まだいろんなものに溺れている俺の『藁』になってくれるものはあるんだろうか?
 そして、俺は『藁』を求めているんだろうか?
 今まだ底なしの沼の中でそれはわからずにいた。


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