暴走書家

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『共犯者-1-』

 俺はゲイではなかったはずだと思う。
 それまでオトコに対してそんな感情もった事なんてなかったし、実際付き合っていたのもオンナばかりだった。
 実際付き合っていたオンナの事が好きだったし、それなりに上手く付き合っていたと思うんだけど、長くて一年、短くて三ヶ月くらいで別れてしまった。
 『嫌いになった訳じゃないんだけど』そう言われて振られる。

 決定的に何かダメージになる事があったんだろうか。
 その言葉が真実かどうかわからない。
 普通、どう言われれば傷付かずに別れられるんだろう。
 そんな風に優しく断ったほうが波風が立たないんだろうか。
 それはわからないけど、俺は取り立ててそれ以上別れていく彼女たちに問い詰める事はなかった。
 俺って優しくなかった?
 望めば大概の事はやったよ。
 それなのに駄目なの?
 別れ際に追いすがるなんてみっともないと思って、しなかった。
 でも、振られて別れて不思議と傷付いていない俺自身がいた。

 高校の時も、大学の時もそんな感じだった。
 大学二年の時、ちょうど彼女がいなかったとき、サークルのオトコの先輩に告白された。
 そういうタイプの人種がいるって事、知ってたけど、まさか身に降りかかってくるなんて思わなかった。
 流石に最初は丁重に断っていたんだけど、とにかく強引なところがあって、しぶしぶ折れてしまった感じだった。
 無理矢理、っていう訳じゃないんだけど、押しが強いっていうか、まあ、押されてしまった俺も俺なんだけど。

 俺のマンションに押しかけられて、そのまま抱かれた。
 強引なくせに変に優しくて、もしかしたら普通の人間だったら、こういうのは気持ち悪いって思うんじゃないかな? とか考えたけど、実際俺は嫌だとか思わなかった。
 他人の手によってもたらされる快感は不思議な感じがした。

 最初の内は異物感でしかなかったアナルも、次第に慣らされていく内に気持ち良くなっていった。

 大学のサークルで会う時は全然そんな素振りを見せないんだけど、抱かれるようになって、改めてその先輩を見直してみると、カッコイイかも、とか思ってしまった。
 実際、後輩にもよく慕われているようだ。
 でも、そんな中で、なんで俺だったんだろう? っていう疑問は残ったままだった。
 俺は聞かなかったし、先輩も俺に言わなかった。

 先輩に連れられて、何度かゲイクラブに行った。
 そこでは大学とはまた違った先輩の顔を見る事が出来てなんだか嬉しかった。
 そして、その場に何となく馴染んでいる俺がいた。

 俺の先輩に対する感情がどういうものかよくわかっていなかった。
 曖昧な感情のまま抱かれ、それを曖昧にしておく俺に対して、先輩は何も言って来なかった。

 どうしようもなく先輩に惹かれている事は確かだったと思う。
 けれど、それを認めたくない俺もいた。
 それなのに、俺は先輩に抱かれ続けた。
 先輩が俺を求めてくれるのが嬉しかった。

 セックスだけが全てだとは思わない。
 だけど……。
 先輩が抱くのは俺だけじゃないって知った。

 好きだと先輩にいった訳じゃない。
 言わないまま数年カラダを重ね続けて……。
 言うのが怖かったからかもしれない。
 言ってしまったら、認めた事になるから。

 先輩にとって俺が『唯一』の存在じゃないって知った時、初めて認識する事が出来た。
 もう、今更好きだなんて言えなかった。
 好きだって言って、相手にされなくなるのが怖かった。

 この数年、先輩にとって俺は何だったんだろう。
 俺にとって先輩は何だったんだろう。
 俺は、先輩の恋人になりたかったのだろうか。
 そうかもしれない、と気付いた時はもう遅くって。

 最初から認めていれば恋人になれただろうか?
 そんな事、今更考えたって始まらない。
 わかるのは、俺達はもう決して恋人にはなれないって事。

 俺は、先輩との関係を続けながら、他のオトコにも抱かれた。
 そういう店に行けば、俺を誘ってくる奴はいた。
 先輩の事を忘れたかったから、他のオトコに抱かれたのに、それでも染み付いた先輩への想いは消えてくれなかった。

 先輩に他のオトコとの事がばれても、先輩の俺に対する態度は変わらなかった。
 それが余計に嫌で、何か他の事に溺れたくて、以前よりずっと酒の量も煙草の量も増えた。
 忘れようと思えば思うほど頭に染み付いてきて離れなかった。

 俺は初めて人を好きになって、傷付いたんだ……。
 初めて自ら欲したものは手に入らないものだった。
 欲した事自体に気付かなかったんだ、ずっと。
 求められる関係に慣れすぎて、そこに安住してしまったから。

 先輩から離れたかった。
 先輩の傍にいたかった。

 そんな先輩に本気で好きなコ(勿論、オトコ)が出来たんだって。
 そして、そのコもまんざらじゃないんだって。

 そのコを見て、俺はそのコを傷つけたくなかった。
 俺はそのコにはなれないのに。

 結局、俺は、酒と煙草とオトコに溺れている。
 誰かに救いの手を差し伸べて欲しくって。
 その手をとる勇気なんてないくせに。
 待ってるだけじゃ駄目だってわかってるくせに。

 ああ……でも、溺れているのも気持ち良いなって。
 本当に、何やってるんだろう、俺って。
 どうしたいんだろう。
 このまま俺は溺れ死ぬのかな。

 そうしたら先輩は悲しんでくれるだろうか。
 悲しませたくないくせに、そう思う。

 先輩に会って世界の色が変わった。

 また今度、その色が変わって行く事があるんだろうか。


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