暴走書家

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『幸せのカタチ-2-』

 俺は、いわば捨て子だった。
 産まれて間もなく捨てられていた。
 幸運にも発見されたのが早かったので、置き去りにされたまま死ぬ事はなかった。
 何も、身元を示すようなものが残っていなかったので、捜索しても、手懸りはなかったし、名乗り出てくる親もいなかった。

 戸籍もなかったので、俺が発見された市長の職権によって、戸籍及び、住民票が作成された。
 姓は首長の姓を拝借する事もあるようだが、俺の場合、俺の捨てられた場所、その木の根元から『橘』という姓がつけられた。
 そして、そんな状況でも、少しでも幸せに生きることが出来るように『幸生』と名付けられた。

 乳児院で3歳まで育った後、児童養護施設へと移管された。
 養子縁組などで、里親の元へ引き取られて行く場合もあるが、俺の場合は、そうはならなかった。
 そこには、色んな事情を抱えた子供たちがいた。
 やむをえない理由で、育てられなくなった子供や、虐待されている子供もいた。
 いずれにせよ、普通の家族と言う『カタチ』の元で育つ事の出来ない子供達だった。

 児童養護院にいても、場合によっては、そこで、虐待や児童間でのいじめが起こったりすることもあるようだが、俺の場合は、それはなかった。
 義務教育を終え、特別育成費の支給によって公立高校へと進学した。
 少しでも、俺の存在を認めて欲しい。
 だから、頑張って勉強したし、成績もかなり良かった。

 けれど、やはり金銭面から、大学進学は出来なかったし、特に、大学に進んでやりたい事とかそういうものもなかった。
 より、自分の存在を世間に認めてもらいたいというのもあったのだろう、全くその存在は知らないけれど、その面では感謝しよう。
 恵まれた体躯とルックスで、モデルへの道を歩み始めた。

 始めから、そんなに仕事が与えられるわけではない。
 けれども、少しずつだけれど着実にモデルとしての俺を認めて貰える様になっていった。
 『名声』という『カタチ』。
 それが、手に入るようになった。

 それから、『金』という『カタチ』。

 世間的に見たら、俺の生まれは『不幸』なのかもしれない。
 けれど、俺は、それを『不幸』だと感じてこなかった。
 ただ、『幸せ』というものもわからなかったが。

 だから、俺は、世間が描く『幸せ』に拘った。
 『幸せ』に『生きる』事。
 どうやったら、俺は、『幸せ』になれるのだろうか。

 もし、俺がゲイでなかったら、そうやって育ってこなかった『家族』という『カタチ』を求めていたかもしれない。
 ゲイである事、オトコしか愛せない事、それがわかっていた。
 それなのに、無理して、結婚して、子供を作ろうとは思わなかった。
 俺は、当然、オンナを愛せないし、恐らく、子供も愛する事が出来ないだろう。

 いや、本当は、『愛する』という事自体が微妙だったのかもしれない。
 だから、ずっと、望みながらも『恋人』という『カタチ』を持てなかったのだろう。
 望む、と言っても、俺自身、その感覚がよくわからないから、世間が羨むもの、その『カタチ』を追っていた。

 その『カタチ』を得る事が出来たら、俺は『幸せ』になれるかもしれないと思った。
 トップ・モデルとして、名を馳せる事が出来た俺。
 幸運にも『名声』と『金』を得る事が出来た。
 特に、拘りがなかったけれども、『金』を元手に、俺が住む場所、それを、俺の物として、マンションを購入した。
 そうやって、『住処』としての『カタチ』を手にする事が出来た。

 そして、『恋人』としての、雫。
 忙しい中での、お互いの逢瀬に、特に不満はなかった。
 そんな雫に抱かれる事、抱く事。
 『恋人』と『セックスをする』という『カタチ』。
 それは、今まで、他のオトコと『セックスをする』という事と、同じではないと思った。

 『セックスをする』という『カタチ』自体、変わった事ではない。
 『セックス』によって、同じように『快感』を得ても、どこか違っていた。
 『カラダ』の『相性』とか、そういう問題ではないと思う。
 いや、勿論、『相性』も良かったのかもしれないが。
 多分、相手が、雫だったから。
 他のオトコでは駄目だったと思う。
 例え、『恋人』にと望まれても。

 別に、雫との『セックス』に溺れていた訳ではない。
 それは、『金』にしても『名声』にしても同じ事。

 雫に求められて、俺も、雫を求める。

 雫の唇が、俺の唇と触れ合って、その感触を確かめるようにしっとりと重ねられ、雫の首に、腕を回し、より近くに引き寄せる。
 重ねられるだけだった、口付けが、深くなっていく。
 開いた唇から、舌を差し入れ、絡み合った舌が、その触覚を、味覚を味わっていく。

 雫の指先が綺麗だと思うのは、惚れた欲目なのだろうか。
 別にそれでも構わないのだが、業界で、いろいろな人と会ってきたけれど、それだけではないと思う。
 その指先が、優しく器用に、俺の肌に触れてくる。

「…ぁ……は……んん……あ……」

 刺激され、敏感になった乳首を摘み上げられる。
 そこに通っている神経の存在を、快感として受け止める。

「は……ぁ……イイよ……雫……」

 まだ、触れられていないペニスも、勃ち上がってきている。
 俺の欲望は、忠実に雫を求めている。
 そして、そのペニスを直に触れられて、その手で扱かれてくる。

 俺も、雫のペニスに手伸ばし、同じように雫も求めてくれているのだと言う事がわかる。
 お互いの手の中で、お互いの手によって、ペニスの硬度が増してくる。

 雫が空いた方の手で、俺のアナルに触れてくる。
 ローションを使って、指よりも確実な物を受け入れられるように解されていく。
 けれども、その指の存在も、やはり、気持ちがいい。

「んん……ぁ……雫……あ……」

 ペニスを受け入れて、アナルで快感を得られる事を俺のカラダは知っている。
 知っている。
 どこでだろう。
 頭で、それとも、カラダで?
 ああ、でも、それは、今はどうでもいい。
 どちらでも、変わりはしないのだから。

「雫……もう……イれて……」

 雫が、ペニスにゴムを装着して、俺のアナルと、雫のペニスにローションを垂らして、潤滑にペニスを挿入してくる。
 挿入される事で、その先にある快感に期待して、感じてアナルを締め付ける。

「幸生……」

 名前を呼ばれて、抽挿が開始される。
 アナルの内壁の感じる場所を目掛けて、的確にそこを突き上げてくる、雫のペニス。

「…ぁあ……イイ……あ……もっと……っ…!」

 望めば、雫が与えてくれると、そう知っているから。
 そして、きちんと、その求めに実際に応じてくれる雫。

「あ……んん……ぁ……雫……雫……」

「……幸生……」

 お互い、射精の時が近付いているのがわかる。
 その時を迎えようと、行為が激しくなっていく。
 それから、やがて、快感の中で吐精した。

 オトコ同士で、どうして性欲が芽生えるのかわからない。
 実際に、性欲があり、セックスをしても、そこに意味があるのだろうか。
 わからなくても、欲してしまうのは、何故だろう。

 雫に、求められて、雫を抱いていく。
 俺の愛撫で、快感を得ている雫。

 この快感は、一体どこからやってくるのだろう。

 けれど、やはり、欲望は芽生え、勃起したペニスを雫のアナルに挿入していく。
 抽挿して、締め付けられて、確かに快感を得ているのだけれども。
 雫も、同じように、俺のペニスを受け入れて、感じているのだけれども。

「ああ……イイよ……幸生……」

 雫は何を見ている?
 この行為の中に。

 ああ……でも。
 そういえば、オトコとオンナでも、生殖とは離れた所で、セックスをしている。
 人間は、他の動物とは違う。
 季節を問わず、セックスを行うのは、人間だけなのだ。
 その欲望が芽生えるのも。
 俺が、ゲイである事はわかっているし、認めている。


 そして、その行為が、生殖に結びついたとしても、俺のように捨てられる子供はいる。
 そんな、俺の存在の『カタチ』は、何なのだろう。

 もし、雫にそれを問うたら何と答えるだろう。
 それから、『幸せ』に『生きる』とは。
 そこに、どんな『カタチ』が存在するのだろう。



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