暴走書家

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『星降る言葉-7-(完)』

 映画の製作発表を終えて、もうすぐいよいよ始まるのだという実感が湧いて来た。
 主要な3人の役者の中で、俺が一番若い。
 年齢をとってもそうだし、役者経験としてもそうだ。
 一役、一役をこなしていく事は、役者を続ける上で、勉強になるのは当たり前の事だし、これが、最初だとも言わないし、最後だとも言わないけれど、俺にとって、1つの大きな山になることは間違いないだろう。
 少なくとも、俺は、そう思っている。

 相手の女優とも、その夫役の俳優とも少し、話を交わした。

 女優は、これだけ若くて、カッコイイ男に、気を狂わせるほど惚れ込ませられるなんて、女冥利に尽きるわね、と言っていた。

 夫役の俳優の方は、実際結婚していて、子供もいる。
 俳優として立派に仕事をこなしている人だとは思うけれど、家に帰ると、奥さんに頭が上がらないらしい。
「人間として、一皮向けた女性は強い。男なんて、太刀打ちできないよ。よく言われるのは、出産時の痛み。あれを乗り越えられる男はいないだろう。そんな機能自体ないけどな。お互い、捨てられる者同士だけれど、頑張ろう。実際に、私は、本当に妻に捨てられないように気を付けないとな。」
 そう語っていた。
 俺にも気をつけるように、と助言してくれた。

 これから、一緒に仕事をしていく仲間。
 第一印象として、悪くはなかったようだった。

 監督やプロデューサーとも再び挨拶を交わした。
 そして、成澤とも。

 その場がお開きになって、それぞれ、別れていったけれど、その後、もう何度目になるだろう、成澤の家に行った。

「いよいよですね。」
「ええ。現場に立ったらもっと違うでしょうけれど、あれだけの関係者と顔を合わせれば、やはり、そういう気分になりますね。」

「ねえ、成澤さん。もし、もしですよ。青年の願いが叶って、それ程恋焦がれた女性と結ばれたとしたら、その関係は、続くと思いますか?」
「さあ……どうなんでしょうね。その熱い想いが、続くかもしれませんし、穏やかな愛情に変わっていくかもしれませんね。もしかしたら、もっと、違う絆で結ばれるかもしれませんし。続いていくとしたら。」
「恋は一瞬の幻想に過ぎないのではないかと、感じてしまうんです。」

「一瞬の幻想。確かにそういう部分もありますね。生きている事自体が幻想のようなもの。その中での人の、想い。そう、例えば、恋。感情は、永遠ではあるとは言えないけれど、移り変わる中で、何か別の想いを抱いているのではないでしょうか。」
「恋じゃなくなっても、何かしらの感情が、ココロに残り続ける、と。」
「ある二人の関係性において、『恋』が『愛』に変わる瞬間。そして、その『愛』がまた何か違うカタチに変わる瞬間。その瞬間瞬間を捉えることができなくとも、自然と、二人の間で時が流れていくかもしれません。」

「『恋』でも、『愛』でもない別のもの……」
「そのそも、『愛情』と言うものも、とても、色んなカタチを持っていますよね。恋愛関係における『愛情』も、親子の間にある『愛情』も。そして、人間ではなく、何か、物に対する『愛情』も。」
「物に対する『愛情』。『愛情』を込めて花を育てる、とか言いますよね。ペットに『愛情』を注ぐ人もいますし。そんな花が、きれいに咲いてくれたら嬉れしいでしょうし、ペットが懐いてくれたら嬉しいでしょうし。」

「もちろん、見返りがあったら嬉しいでしょう。そういう場面を想像して、『愛情』を与える。まあ、見返り、と言っても、その人それぞれでしょうがね。ただ、単純に『愛情』を注ぎ続けること、それが出来ることも、また嬉しかったりします。」
「成澤さんは、そういうのがあるんですか?」
「そうですね。言葉に……でしょうか。小説を書かれる方は、特に、かもしれません。その人達が、紡ぎあげる、言葉の1つ、1つに、それぞれ、想いを込めます。何気ない単語でも、そこに書き込んだからには、作者にはそれなりの想いがこもっていると思います。読む側が、自然と受け流してしまう単語でも、作者にとっては、その作品にとって、欠けてはならないものなのです。深い意味なんて、ないかもしれないです。けれども、必要なのです。」

「脚本を書かれる時だってそうでしょう?」
「もちろんそうですよ。ある人物が話す言葉、1つ1つをとっても、それを大切にしたいです。長い台詞でも、たった一言でも。どれだけの単語が、この世にあるでしょう。日本語だけに限ったとしても。同じ1つのものを指す場合でも、複数の単語があります。少しずつ、それはそれで微妙にニュアンスが異なりますが。それを使い分ける時、どう表現したら、一番しっくりくるか。言葉の数を例えるなら、砂漠の砂のように、夜空に瞬く星のように。」
「数え切れないほど沢山ありますね。無限なわけではないけれども。」

「ええ。そして、私が選んだ言葉を、実際に川島さん達、役者さんが、もっと幅広いものに変えてくださる。」
「演じて、表現することによってですか?」
「その声のトーン、言葉と言葉、会話と会話の間合い、その時の表情、その全てが、観る人達に、降りそそいでいくのです。」

 その大切に書き出された台詞を、丁寧に読めばいいわけじゃない。
言葉に合わせて、その時の、演じている人物が、何を思っているか、何を感じているか、それを解釈し、口から発する。
 そしてまた、役者にとっては、台詞を話しているときだけが全てではない。
動くにしても、じっとしているにしても、カメラが回っている間は、演じ続ける。
そうする事とによって、より、その世界は広まっていく。

「成澤さんは、言葉を大切にされていらっしゃいますけれど、言葉を用いなくても、繋がっていける関係は、あると思いますか。」
「そういう場合もあるでしょうね。言葉なんて、必要ない時も。でも、やはり、言葉がなければ、伝わらないこともあると思います。もちろん、言葉にしたからって、完全に伝わるわけではありませんが。」

「成澤さん、俺は、ずっと怖かった。もし、言葉にして、拒否されたらどうしよう、と。でも、それでも、言葉にしなければ、始まらないんだろうなって思いました。……俺は、成澤さんが、好きです。」
「川島さん……」
「この映画の話を持ちかけられたとき、成澤さんが、俺を起用したいと望んでいると知って、貴方に興味を持ちました。本来なら、それだけで終わっていたかもしれません。でも、実際、お話をさせていただいて、貴方に惹かれていくのがわかりました。カラダも重ねて、その後も、色々、お話をさせていただいて、どんどん、惹かれていって、やはり、貴方の事が好きなんです。ドラマで、色んな愛の台詞を囁いてきたけれども、今の俺には、こう表現する事しか出来なくって、精一杯の、気持ちなんです。」

「私にとって、川島さんは、ずっと、別世界の人で、憧れの存在でした。実際映画を一緒にお仕事させていただくとしても、それは、大して変わらないだろう、と。川島さんが、ゲイだとわかって、私に興味を持ってくださって、色々お話をさせていただいても、それ以上の、関係を望むまいと思っていました。……私も、川島さんの事が、好きです。本当にシンプルな言葉だとは思いますけれど、それが……一番嬉しいです。」

『好きだよ』『愛してるよ』その使い古されたシンプルな台詞でも、こんなにも、ココロに響くものなのだ。
星の数ほどある言葉の中で、選ばれた言葉。
シンプルだからこそ、余計な装飾を持たずに、すっと、ココロに入り込んでくるのだと。

もちろん、それでも、人々は、様々な愛の台詞を考えるだろうが。
それもまた、言葉という文化を生み出した人間の(さが)なのだろう。

「成澤さん。この気持ちが、恋なのか、愛なのか、どんなカタチを今しているのかわかりません。それでも、受け入れてくださいますか?」
「私は、どれだけ短い時間でも、川島さんと、同じ時を過ごせるのなら、その時を、大切にしたいです。」
「恋人として、一人に人間として、貴方と共に生きていきたいです。」
「川島さんに、そう言って頂けるなんて、夢みたいです。」
「そんな、俺こそ、夢を観ているようで。」

 それでも、夢なんかじゃない。
 こうして二人、今目の前にいる。
 人生自体が、夢、幻だとしても、それを、共有できるなら。

「夢じゃない証拠を、確かめてみますか?」

 そうして、また、カラダを重ねる。
 お互いの気持ちを、その存在を、より深く刻む為に。

 求め合う口付けも、絡みあう舌も、今、その為にあるのだと。
 息継ぎをする間も惜しいほど、激しく口付けあって、それでも、足りないくらいで。
 けれど、それだけで、満足できるわけもなくて。

 更なる刺激を求めて、成澤の指が、俺の肌に触れてくる。
 愛撫を受けて、それに反応していく。
 感じる乳首を、弄られて、声が漏れる。

「…ん……ぁ……」

 それを、隠す必要もない。
 逆に、確かに感じている事を、伝えたくて。
 でも、今は、言葉にしなくても、感じている事は、確かに伝わっている。

 お互いの昂ぶったペニス。
 俺は、成澤のペニスを深く咥え込んで、より、快感を引き出していく。
 そして、また、今度は、成澤も同様に、俺のペニスを咥えてきて。
 指を挿入されたアナルも、その先にある行為を期待している。

 待ち望んだアナルに成澤のペニスが、挿入されて、その存在をより実感する。
 もちろん、それだけではなくて、抽挿され、刺激されて、与えられる快感を追う。

「あ……あぁ……は……ぁ……」

 感じているのは、成澤も同じで。
 お互いの目の前にいるのが、お互いである事が嬉しい。

「ん……ふ……ぁ……ぁあ……」

 突き上げられながら、ペニスを擦られて、射精していた。
 それから、成澤も、俺の裡で達した。

 俺も、また、成澤も望むように再び行為を始める。
 俺の手で、成澤の快感を煽って、そのアナルに俺のペニスを挿入する。
 俺のペニスでちゃんと快感を得ている、成澤。
 勃起し続けるペニスが、その先端から滲み出る先走りが、それを示していた。
 俺自身も、限界が近くて、より抽挿を激しくして、成澤のペニスを刺激して、欲望を放った。

「成澤さん、もう少しこうしていてもいい?」
「ええ。」

 射精して、ペニスは萎えたけれど、もう少しその裡の感覚を味わっていたかった。
 いつまでも、そうしている訳にはいかないから、抜いたけれども。

 映画の撮影が始まれば、二人きりでこうして会える機会も少なくなる。
 実際にクランクインして、忙しくなった。
 もし、映画が終わって、としても、仕事を続けていくのなら、頻繁に会えなくても仕方がない。

 そんな中で、時折重ねる逢瀬。
 カラダを重ね、言葉を交わすうちに、少しずつ変わっていくこともある。

 二人で会うときだけ、『尚司』『恭平』とお互いの事を呼ぶようになったし、話し方も、変わってきた。

 肝腎の映画も、成功して、世間から、それなりの評価も受けた。
 その後の俺の演じる役柄も、少し幅が広くなった。

 俺も、成澤も認められればそれだけ、忙しくなるのだけれど、それで、会う機会が減ることに不満はない。
 会っている間が、充実しているから。
 結婚する事はもちろん出来ない。

 ただ、『好き』だから。
 それだけだったら、この関係は成り立たないだろうし、続かないだろう。
 もちろん『好き』であることには変わりないけれど、そこに、何か別の感情が交じり合っているから。

 これだけある言葉の中で、その感情をなんと呼ぼう。
 色々な言葉が生み出されていくけれど、名付けなくてもいいのではないだろうか。
 俺たちが、人生の一部分を共有していけるのならば。



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