暴走書家

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『星降る言葉-5-』

 映画『箱庭の外』の水面下の進行は何とか順調なようで、俺以外の役者も決まったという。
 主役となる、人妻を演じるのは、俺より、10歳位先輩に当たるだろう、女優で、そこそこ知名度のある女性だった。
 脚本もほぼ出来上がっているらしい。
 という事は、成澤の今回の映画に関する仕事は、ほぼ一段落付いたのだろう。

 成澤の頭の中には、どんな世界が広がっているのだろう。
 登場人物達は、それぞれ、その物語の中で、やはり一つの人生を生きる。
 その架空の人生のシナリオ。
 それを創造する。
 役者は、それを、自分なりに解釈し、架空の人生劇の一部を、演じる。

 確かに、一つの作品を作り上げる、それは同じでも、こなす役割は異なる。
 作品を提供する立場にあるけれど、その世界にも様々な人が生きている。
 役者ばかりでも映画は出来ないし、脚本家ばかりでも、監督ばかりでも、映画は出来上がらない。
 それぞれが、それぞれとして、重要なのだ。
 そのパーツとして、何が欠けても駄目。

 そしてやはり、作品を作り上げれば、それを観てくれる観客も必要なのだ。
 俺達は、作品を通して、どれだけの観客に、どんな印象を与える事が出来るのだろうか。
 映画館に足を運んでくれる人、DVDを買ってくれる人、借りてくれる人。

 舞台とは違って、直に観客を目の前にして演じるわけではない。
 その観客の、人生の一部に、何かしら影響を与える。
 物語を描く人は、何を思ってそれを創り上げているのだろう。
 勿論、人それぞれ違うだろう、けれど、成澤はどうなのだろうか。

 仕事上がりに、会おうと思って、連絡を入れておいたけれど、思っていたより、時間が押してしまって、再度、成澤に連絡を入れた。
 成澤は、今は脚本も仕上がったし、余裕があるらしく、自分の方は、心配ないと言ってくれた。
 だが、俺が、仕事で疲れているのではないか、休める時は休んだ方がいいのではないか、と、気を使わせる結果になってしまった。
 明日はオフだから、その間に、休むから大丈夫だ、そう言うと、成澤は、それ以上は、反対する言葉を発してこなかった。

 少々無理をしても、本当は会いたい。
 けれど、無理をした結果、自分の体調を崩してしまっては何にもならない。
 仕事をする上で、カラダは資本だ。
 その自己管理が出来ないようでは、駄目なのだ。
 勿論、それでも、風邪をひいて、熱が出て、カラダがだるくなる場合もある。
 その日やその後の仕事内容によるが、大きく影響が出ないように、取り計らう。
 無理を押して、体調が悪いのを隠して、仕事をする場合もあるし、休んだ方が、迷惑をかける程度が少ないのなら、そうする。

 成澤の家に着いたら着いたで、やはりまた、心配されてしまった。
「本当に大丈夫だったんですか? 疲れていらっしゃるんでしょう?」
「いえ、確かに、仕事時間としては長かったですけれど、拘束されている時間が長かっただけで、肉体的にそんなに疲れているわけでもありません。待ち時間の方がながくって。脚本を読み返したり、他の人の演技を観ている時間の方が長かった気がします。」
「待ち時間は、待ち時間で、それはそれで、疲れるでしょうに。」
「本当に大丈夫ですよ。自己管理も仕事の内ですから。」
「ご自身でわかっていらっしゃるのなら、こちらが、いくら心配しても仕方がないですね。」
「仕方がない、なんて、そんな。こちらこそ、気を使わせてしまったようで、申し訳ないです。元は、俺が言い出した事なのに。」
「ああ、いえ、そんなつもりで言ったのでは。すみません。」

 お互いに気を使った結果、余計に相手に気を使わせる事になってしまった。
 相手の立場や調子を尊重しようとするのは、悪い事ではない。
 しかし、やはり、その度合いというのは難しい。

「あ、あの、成澤さんは、物語がないところから、物語を創り出すのですよね? どうやったら、そういう世界が生まれてくるのですか?」
「脚本の土台となる構成を練る時、ですか。」
「ええ。」
「全く『無』の状態から創り上げるわけではないですよ。例えば、偶然耳にした会話から、何かヒントを得る場合もありますし、社会問題ですとか、何かを観てふと湧いた自分の感情から、それを、ワンシーンと捕らえて、そこから、どう世界を広げていくか、ですね。出来上がるのは架空の世界ですが、現実から、何かしら影響を受けていますね。」
「でも、それにはやっぱり、想像力が必要でしょう?」

「元々、そうですね、例えば、何かの物語を読んで、この先、この登場人物たちは、どうなっていくのだろう? とか考えるのが好きでしたからね。頭の中で、世界が広がっていくのが面白いんです。」
「世界を、広げる、ですか。」
「そうすると、何となく、自分の中で、現実に世界が広がったような感じがして。もちろん、錯覚に過ぎないんですけれど。」
「それでも、それを、文字にして表現するのは、また違いますよね。」

「ええ。それは勿論。でも、脚本の場合は、それは最終形態ではありません。演じてくださる役者さんがいてくださって、その役者さんの、個性や感覚もありますから、それで、更に世界が広がってくれるのは嬉しいですね。」
「貴方の描いた世界を、具現化して、それでまた、あなたの世界が広まるんですね。」
「そう、様々な感覚に触れることによって、私自身がより触発されます。私の脳内で遊んでいるだけでも良いのですけれど、実際に、カタチにしてみる事で、それを、また別の側面から見て取る事も出来ますし。」

「成澤さんは、何かを見ても、きっと、他の人と違う世界を捉えているんでしょうね。」
「それは、私だけに限ったことではありませんよ。反応をする対象も人それぞれでしょうし、それに対する、感じ方も人それぞれです。共有する部分があるのも確かでしょうが。」
「感覚は、人それぞれだから? 俺自身も、やっぱり、そうなんでしょうか。」
「ええ、実際に、脚本をもらって、貴方なりに、貴方にしか出来ない演技をされるのですから。」
「俺にしか出来ない……それは、考えた事がありませんでした。」
「貴方が演じてきた作品の中で、もしかしたら、別の役者が、その役を演じていたかもしれません。でも、そうしたら、その作品は、また、別のものになっていたでしょう。」
「役者が違えば、出来上がる作品もまた別の世界のものになっているんですね。」

「ある種、固定観念を植え付けますよね。容姿にしてもそうだし、その声、その仕草、台詞回し、間合いの取り方。その役者、役者によって、違いますから。」

 それが、俺の個性というものなのだろうか。
 俺じゃなければ、出来ない役ではなくても、俺が演じる事で、1つの世界を創造できる。
 勿論、俺だけの力ではないけれども、俺の力も必要なのだと。
 個性派俳優と呼ばれる人もいる。
 その強烈な個性を持った人間。
 俺は、それとは、違うと思う。
 俺の、両親を見ても、それとは違う気がする。

「個性、ってなんなんでしょうか。」
「そうですね……『個性』『個性』と言われながら、表に表れる部分は少ないのではないのでしょうか。まあ、こういう風に表現をする世界の人間は、個性的な人間が多いと思います。目立つのも『個性』でしょうし、目立たないのも『個性』でしょう。」
「目立つばかりが、『個性』ではないと?」
「それはそうでしょう。嘗て、『個性』を求め始めた時代。そして、『平等である事、他人と同じである事』を求め始めた時代。『出る杭は打たれる』と言われます。元々、日本人はそうでした。でも、世界との競争の中で、それでは、日本は生き残っていけないと。」

「『個性』と『没個性』は共存しうるのでしょうか。とても、矛盾した事のように思えます。」
「共存……はしているでしょうね。でも、その矛盾は取り払えません。そんな矛盾した世界の中で、人間は生きているんです。」
「不条理な生き物ですね。」
「矛盾、不条理、そして様々な問題を抱えて、それで尚、社会を形成して、生きています。それに目を背ける人もいますが、その事に悩む人もいます。そして、どちらもまた人間なのです。そして、そんな様々な人間像を描く事。それもまた、創造する事に繋がります。」

「人間が、人間の現実を元にして、架空の世界で、人間というものを描いていく。そして、その人間像に触れて、何かを感じ取る。」
「ええ、それを創造する人間も、そして観客も。観ている人に、世界を広げてもらえたら、創る側としては、嬉しいですね。」

「自分という人生のドラマの中で、違う世界に触れて、その中に何かを感じ取って、自分のドラマの中に取り込んでいく、と。」
「見知らぬ他人の人生の中に、架空の作品とはいえ、存在する事が出来たら。直接その人と、関わり合う事はないでしょうが。」

「でも、もしかしたら、何かの契機(きっかけ)で、関わり合う事もあるでしょう?」
契機(きっかけ)は、どうやって降って来るかわからないですからね。」
「振って来るばかりでもないでしょう。」
「俺にとっては、始めは降って来たようなものでした。貴方が、俺を観て、俺を起用しようとしてくださらなかったら、俺は、貴方の事を知る事はありませんでした。」
「私は、まさか、ここまでは、望んでいませんでした。初めてお会いした後、偶然また会って、そして、貴方が、声をかけてくださらなかったら……。」
「確かに、あそこでの再会は、降って来た契機(きっかけ)かもしれませんね。」

 だって、そうしなければ、こんな関係に発展するはずはなかった。
 俺は、成澤に望まれていると、思ってもいいのだろうか。
 俺が、成澤を望んでいるように。

「成澤さん……」
「仕事で、疲れていらっしゃったのではないのですか?」
「言ったでしょう? 肉体的には、今日は、そんなに疲れてはいないと。だから、もう少し、疲れた方が……」

 口付けを求めて、カラダを引き寄せる。
 そうして、縺れるようにベッドになだれ込んだ。

 もどかしいようにお互いの衣服を脱がせあって、再び、肌を重ねる。
 何度も口付けて、より深い口付けをねだって、そうして、それが、与えられて。
 絡ませ合った舌と舌が、求め合うことを止めない。

 それでも、名残惜しげに離れた唇が、今度は、俺の肌に触れてくる。
 その舌で、指で、俺の肌の熱を上げていく。
 乳首に触れられて、指で弄られて、舌で触れられて、尖り始めたところに歯が優しく立てられた。

「ん……あ……」

 そこで、感じている快感は、ペニスにも熱を持たせていく。
 その昂ぶってきたペニスを口に含まれた。
 始めは、手と舌で、刺激を与えられ、より深く、咥え込まれたと思ったら、指は、アナルの方を刺激してくる。

 ローションの滑りを借りている指は、すんなりと、アナルの裡に挿入されてくる。
 入り口を広げられながら、アナルの裡の感じる場所を刺激される。

「…ぁ……成澤さん……もう、大丈夫ですから。」
「はい。」

 抜かれた指の代わりに、ペニスをあてがわれて、ゆっくりと挿入される。
 そして、抽挿され、奥まで突き上げられて、その感覚を受け入れている。

「あ……は……ん……はぁ……」

 繰り返される抽挿による刺激に、俺は、確かに感じて、その熱をより昂ぶらせていく。
 動きが、より激しくなり、成澤の手が、俺のペニスに触れられ、扱かれることによって、射精感が高まってくる。
 成澤も、多分同じなのだろう。

「んん……あ……あぁ……」

 それから、まもなく、射精した。
 成澤もまた、俺の裡で。

「成澤さんは……」
「何でしょう?」
 言いかけて、問われたけれど、結局言葉が見当たらなかった。

「俺も、成澤さんが、欲しい。」
「私も、あなたが……」
 本当に、一番欲しているものは、何なんだろうか。
 ただわかるのは、今、互いのカラダを求め合っているという事。

 俺は、成澤のアナルにペニスを挿入していった。
 そうすることで、何かがわかるわけではないけれども、今は、それが、欲しかったから。

 そして、その行為の果てに達して。

「このまま、眠ってしまいたい。」
「川島さん、さすがにこのままというのは……せめて、シャワーだけでも浴びてください。」
「ああ、そうですね。すみません。お借りします。」

 かいた汗は、心地良かったけれど、やはり、洗い流した方がいいだろう。

「川島さん、明日オフなんですよね? 広くないですけれど、ゆっくりしていらっしゃって構いませんから。」
「ありがとうございます。」

 まだまだ、色々話したい事、知りたい事が沢山あって、それにはまだ、時間が足りないんだ。
 多分、時間の他にも、何かが。

 そういえば、映画の製作発表が、もうすぐだったな、そんなことを考えながら、眠りについた。


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