暴走書家

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『星降る言葉-3-』

 実際に会いたいと思っても、そんなに頻繁に会える訳ではない。
 俺自身も仕事があったし、成澤も、脚本を仕上げなければいけないだろう。
 けれど成澤は、俺のスケジュールの方が、もし、影響が出れば、他者にも迷惑がかかってしまうから、自分は、多少は、融通する、と言ってくれた。
 例え真夜中でも、成澤自身、昼夜という感覚をあまりもたずに仕事をしているから、構わないと。

 詰め込まれたスケジュールの中で、時間が出来そうな時を見つけて、成澤に連絡を入れて、判断を請う。
 成澤は、快く、それを受け入れてくれた。
 俺は、間違いなく、成澤に惹かれている。
 成澤はどうなのだろうか。

 今まで、俺は、相手に拒まれる、という事は殆どなかった。
 別に当たり前だと思っていた訳じゃなく、拒まれても、別に、どうって事はない、他に相手を探せばいいだけだ。
 成澤は、確かに、俺の誘いを断らない。
 だが、それが、ただ単に俺の立場上の事を考えてなのかもしれない、という不安はよぎる。
 そして、もしかしたら、拒まれるのではないか、という不安。

 俺自身が、成澤にとって、魅力的な人間でいられるだろうか。
 今の俺に、どれだけの自信がある?
 そんなものはありはしない。
 大体、仕事にさえ、自信を失いかけてきているのだ。

 しかし、今は、成澤にまだ拒まれていない、それだけが助けだった。
 どこに、俺を拒めない理由があったとしてもそれは、構わない。
 拒否されない事が、受け入れられている事に繋がらなくとも。

 恋愛なんて信じられなくて、今まで、誰とも、まともに恋愛などしなくて、それでも、俺自身の欲求として、また、相手が、俺を求めたから、抱いてきた。
 相手が、俺に求めているのは、幻想に過ぎないと、やがて冷めてしまうものだと、割り切っていた。
 俺が、今、成澤に惹かれている、これもまた、幻想なのだろうか。

 一時の恋愛に身を焦がしても、それが、永遠に続くことはありうるのだろうか?
 恋愛体質の人間はいる。
 短い期間でも、恋愛を、楽しみ、その熱が冷めてしまうと、別れていく、カップル。
 そして、それを繰り返す人間。

 それとは別に、それが、穏やかな恋愛なのか、それともまた別に絆なのか、長く付き合い続ける人間もいる。
 長く付き合い続ける、ゲイパートナーもいるし、男女の間にしたってそうだ。
 他の家庭の事情など知る由もないが、俺の両親を見たってそうだ。
 俺と同じく、俳優である父親と、女優である母親。

 共演したのが契機(きっかけ)で、と言っても、恋人同士の役ではなく、殺人犯役であった父親と、その殺人犯に恋人を殺され、憎み、復讐を誓った役の母親だったそうだが。

 俺の出産時に一時期、母親は、休業したが、芸能界を引退して、主婦に収まる事はなかった。
 父親もまた、母親に、引退を望んだ事はないと言う。
 お互い忙しい仕事の中で、生活にかなりすれ違いはあったけれど、一緒に家にいる時に、不仲であるようには感じられなかったし、寧ろ、僅かな時間でも、一緒にいるのはごく自然な感じがしていた。

 俺自身も、両親に構ってもらった覚えは殆どないが、確かに、不満に思った時期は、あったにせよ、接してくれる時に、親としての愛情を受け取っていた。
 そして、また、両親が、外に出れば、ブラウン管の中から、俳優として、また、女優としての両親の顔を眺めていた。

 そんな両親を尊敬していたからこそ、俺自身も、そこを目指してみたいと思ったし、現に芸能界に身を置いている。
 勿論、実力派の両親の影が付きまとっても、ある程度我慢できるのは、やはり、俺自身も、両親を認めているから。

 そして、俺は、あまり、恋愛体質ではないような気がする。
 が、それでも、今、成澤に惹かれている事実を認めない訳にはいかない。

 成澤の家にたどり着き、インターホンを鳴らすと、カチャリと鍵が開けられる音がして、成澤が、玄関の戸を開けてくれた。
 促されて、靴を脱ぎ、「お邪魔します」と声をかけて、部屋へ上がっていく。

「仕事、されてたんですか?」
「え、ああ。そうですけど、川島さんがいらっしゃるとおっしゃってましたから、きりはつけてあります。」
「あの、お仕事場、見せていただいてもよろしいですか?」
「構いませんが……散らかってますよ。」

 確かに整頓されている、とは言い難いが、それでも、山積みになった本は、部屋中に散らばっているわけではない。

「こういう仕事場って、あまり他人に踏み込まれたくないものじゃないんですか?」
「どうなんでしょう。今まで、他人に見せたことありませんが、こういう整っていない場所って、相手の方が、嫌じゃないかと思うんですけど。」
「俺は、興味ありますよ。でも、やはり、個人の仕事場として、テリトリーという拘りがないのかと。」
「拘り……ですか。この件に関しては、あまり気にした事はありませんね。川島さんに、興味を持っていただけるとは、恐縮です。」

「ここに重ねられている本は、資料ですか? これだけあって、大体把握していらっしゃるんですか?」
「ええ、そうですね。書く為の資料です。何がどこにあるかは……一応、自分でわかりやすいように並べているつもりなんですが、たまに、見失ってしまって、山の中を漁ったりしてますよ。」
「この山の中を漁るのは、大変そうですね。」
「本当は、本棚にわかりやすいように並べるのが一番良いんでしょうが、多分、もし一旦そうしても、手に取りやすいところに、と無精してしまって、結局こうなってしまうでしょうね。」

「それが、成澤さんなりのスタイルなんでしょうね。」
「いやいや、お恥ずかしい。そんな、スタイルなんて代物じゃありませんよ。」
「でも、俺からみると、きちんと、成澤さんご自身がこだわりをもって、仕事に望まれている感じがします。俺は……成澤さんがご指摘されたように、今の俺自身の仕事に悩んでいます。変に、こだわりをもったりして、俺自身の、プライドって何なのだろうと。」

 そう、拘り。
 ああはしたくない、こうはしたくない、それじゃあ、どうしたらいいのか、という事もわからない。
 それでいながら、世間が、俺を束縛するのと同様に、俺も、俺自身を束縛している気がする。

「悩んでいらっしゃてそれを認めていらっしゃるのは、川島さんが、成長されようとしているからではないのですか? 私自身、確かに、川島さんよりは、少し、年上かもしれないけれど、実際、悩んだり迷いますし、川島さんを諭せるような熟練した大人ではありません。」
「成澤さんでも、迷ったりされるんですか?」
「当然ですよ。人間なんですから。例え、どんなくだらないことだとしても、迷ったり、悩んだりしている時点では、本人にとっては、重要なことなんです。……って、偉そうにすみません。」

 言われてみれば当たり前の事かもしれない。
 悩まない人間なんかいない。
 成澤もまた人間なのだから。
 でも、成澤がいった事に、気付けるか、気付けないか、また、その考え方次第でも、生き方は違ってくる。
 迷っても、悩んでも、その中に希望の兆しを求めて努力し、生きている。

「いえ。そういう風に言ってくださらなかったら、俺は、道を見失いかけていたかもしれません。」
「他人と、話してみて、初めて気付く事ってあるんですよね。その相手が、誰でもいいという訳ではありませんが。」
「確かに、誰でもいい訳でもありませんが、俺は、それでも、本当に誰とも、話す機会が今までありませんでした。出生を恨む気は全くありませんが、周囲は、大概、俺の両親の事を気にしてしまいます。」
「川島さんのお立場も、大変でしょうね。恐らく、人並み以上に出来なければ、認めてもらえないのでしょうから。」

 人並み以上、確かにそう。
 どれくらいを、人並み、と言うのかはわからないが、それでも、その名前を覚えてもらうには、成澤だって、人並みでは駄目なのだ。
 ある程度出来れば、生き残っていくことは可能かもしれない。
 そして、どちらを選んでも、その人の人生として、非難されるべきものではない。

「話をするのが、誰でも良いという訳じゃない。それは、俺にとっては、成澤さんだから、話したいと思いました。ご迷惑ではありませんでしたか?」
「そんな、迷惑だなんて。川島さんとお話が出来て、私の方が嬉しいですよ。」
「そう言っていただけると、俺も、嬉しいです。」

「川島さんは、変な拘り、と仰いましたけれど、拘りを持つ事は、決して悪い事とではありませんし、必要な場合もあります。勿論、捨てた方が良かったり、特に意識する必要もない事もありますが。」
「それが、どっちなのか、今の俺には、まだわかりません。ある程度はどこかで、使い分けているのかもしれませんが。」
「そうですね。気付かない内にやってしまっている事もありますね。」

 どうでもいい事に拘って、馬鹿をみる事もある。
 その拘りが、必要なのかどうか、見極めるのは難しい。

「俺は、成澤さんが、他の誰も気に留めてくれなった、俺の一面を見つけてくれたから、もっとよく、俺の事を知って欲しいと思いました。だから、俺は、普段、タチしかやってこなかったけど、成澤さんに抱かれたいと思ったんです。」
「私が、川島さんに見たのもほんの一面に過ぎません。そして、どうように、川島さんも、それを通して、私の一面を見たに過ぎません。川島さんが、普段の自分とは、違う一面を知って欲しかったのと同様に、私も、それを、川島さんに願うのは、贅沢でしょうか?」
「あの……それは……」

「セックスが全てだとは思いません。そして、その役割も。けれど、また、違った立場に立って、相手の事を、感じたいと思ってしまいます。実際そうしたところで、何かが見えるとは限りませんが。」
「それでも、その可能性があるなら、と?」
「ええ。拘り、と言ったら変ですが、タチしかしないのも、ネコしかしないのも、その人の性質上、仕方がない事です。私が、基本的に、そう言った相手に合わせるのは苦痛じゃありませんが、『相手に合わせる』と言った時点で、自分自身がないのか? と言われてしまえば、それまでです。それでも、私は私なりに拘りがあります。」

 成澤が言った、役割や立場は、セックスに限った事ではないだろう。
 相手の視点に立つことはできないけれど、自分の視点を、少し変化させることは可能だ。
 違った側面から見る事によって、完全に相手を理解する事は出来なくても、距離を縮めることは可能だろう。
 俺は、あの時、ほぼ完全にタチだったからこそ、抱かれる事に拘った。

 しかし、成澤が俺を求めてくれるなら、そして、そんな成澤のようなオトコを相手にするなら、そのこだわりは、不要なのではないだろうか?
 拘り、と言った、成澤のセックスに関するスタンスは、柔軟性と曖昧性を秘めている。
 そして、それもまた、感じる相手次第だろう。

「成澤さん、俺は、俺の事も知って欲しいと思いますし、あなたの事も知りたいと思います。」
「川島さんにそう言っていただけて光栄です。ただ……私も、タチとして見られる事の方が多いので、それ程、ネコの経験の方は、あまりないのです。でも、川島さんなら、タチの経験、多いから、抱く方は、慣れていらっしゃるでしょう?」
「あまり、期待されても、困りますが……。」

 けれど、成澤にそういう風に求められて、成澤を抱く気にならない訳がなかった。

 シャワーを浴びて、ベッドに移行して、成澤のカラダに覆い被さる。
 交わされる口付けは、その濃密さを増していく。
 絡まりあう舌が、唾液が、口腔内で、交じり合う。
 その舌の味覚で触覚で、お互いを感じあって。

 指を、舌を成澤の肌に這わせて、刺激し、その感触を味わう。
 同時に、成澤も、俺の、指と舌先の動きを、その肌に感じ取っているだろう。

「は……あ……ぁ……」

 俺の愛撫に感じて、反応するのを、逃さず捕らえていく。
 官能の欲求を煽るように刺激して、その成澤が感じている様に、俺の欲望も高まっていく。

 勃ち上がったペニスに交互に口淫を施し、更にお互いの欲望を高める。
 それから、成澤にローションを借りて、アナルに指を埋めていった。
 解しながら、成澤の感じる場所を探っていく。

「ん……あ……はぁ……」

 探り当てた箇所を刺激すると、成澤の声が、堪らずに漏れる。

「そろそろ、大丈夫ですか?」
「あ、ええ。」

 指を抜いて、ペニスにゴムを被せ、更にローションをたして、挿入していく。
「ん……く……はぁ……ゆっくり……お願い……」

 きつい締め付けの中、成澤の負担が、少しでも、軽くなるようにと徐々に奥へと埋め込んでいく。
 挿入しきった段階で、一旦動きを止め、成澤の様子をうかがう。
「ありがと……も……いいよ……動いても……」

 ゆっくりと抽挿を開始して、始めは浅く、そして、徐々に深く、攻めていく。
 勿論、成澤がアナルの裡で感じられる場所を擦りあげながら。

「あ……はぁ……ん…ああ……ん……」

 俺自身、限界が近付いてきて、律動のスピードが速まっていく。
 そして、成澤も、達せられるようにペニスに指を絡ませ、扱いていく。

「く……ん…イきそ……」
「ん……私も……も……」

 そうして、射精して果てた欲望の後に、再び、唇を重ねあった。

 初めて会ったとき、お互いに持っていたイメージ。
 そして、今持っているお互いのイメージ。
 叶うなら、これから、知り合う中で、感じ取っていくイメージ。

 どこからどこまでが一緒で、どこから変化していくのか。
 それを、見つめていければ良いと願っていた。


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