暴走書家

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『問題の問題-7-』

 頭の中がぐるぐるしてしまって、聞いてみたい事は沢山あるんだけど、何をどう尋ねたらいいのかわからなかった。
 佐原が、あのオトコと会話していた内容だって、もう殆ど頭の中には残っていなかった。
 話をするにしても、ここは大学の構内で、今、この場では出来ない。
 そして、あのオトコは何者なんだろう。
 弓道場から出て来たんだから、そっちの関係者なのだろうか。

「あの……佐原、今の人って、大学の関係者なの?」
「ああ。弓道部のOBで、後は、菅野ももしかしたら、会ったことあるんじゃないのか。医学部の准教授だから。」
「え? あ、そうなの? 医学部っていっても、色々教室あるからなぁ。どこの教室の人なの?」
「法医学教室。宮下准教授。」
「教授ならともかく、准教授とかだと、あんまり知らないからなぁ。」

「そっか。菅野、今さっきの話を聞いてて、お前が、何をどう思ったかわからないけど、やっぱり、お前とは、きちんと話しておきたい事がある。お前も多分、聞きたい事があるだろうし。でも、ここで今出来る話じゃないし、生憎(あいにく)、ここ2日くらいは忙しいんだ。明後日くらいに時間取れるか?」
「明後日……えっと、大丈夫だと思う。」
「悪い。お前のスケジュール確認してから、またメールくれ。」
「わかった。」

 佐原が話したい事って何なんだろう。
 今までだって、色々話してきたよ。
 その中で、全てがわかった訳じゃないし、もし仮に、今度会って話をしても、全てがわかる訳じゃないと思う。
 それでも、話をする事によって、少しでも近付けるかか、若しくは、遠ざかってしまうか。

 自分のバイトのスケジュールを確認したけど、明後日は空いていた。
 今日、明日と佐原と会えない2日間。
 今までだって、毎日会っていた訳じゃないんだから、そう自分に言い聞かせても、この2日間は、今までの会えない時間とは違う。
 それが、早く来て欲しいような、早く来て欲しくないような微妙な気分だった。

 佐原と『お試し』と言う名目で付き合ってきた日々。
 長く付き合っている内に、別に、恋人なんて呼べなくっても良いんじゃないか、とかも思っていた。
 だって、佐原が嫌になれば、俺との関係を切れば良いんだし、実際そうしてこなかった佐原は、佐原なりに、俺の事を、見てくれているんだと思ってたから。
 佐原にとって、俺はなんなの? とか問い詰める気も別になかった。
 佐原にとって、何となく、俺は特別な位置にいるんだと思ってた。
 だから、『お試し』でも、これだけ付き合って来れてるんだって。

 その2日間は、色々気掛かりでしょうがなかったけれど、やっぱり授業には出なくちゃいけないし、部活にも行くし、バイトもこなしていた。
 宮下准教授の事も何となく気掛かりで、医学部の友達に聞いてみたりした。
 実際、授業を受けている先生や、何となく俺が目指そうとしている、方面の教室の事は、知っていたが、それ以外の事は、あまり興味がなかったから知らなかった。

 法医学って結構特殊だと思う。
 一応基礎として、全員学ぶ事だけれど、専門的に進む人数はそれ程居ないんじゃないだろうか。
 それでも、宮下准教授の存在を知っている友人はいた。
 そして、その准教授の噂も。
 いや、多分、そういう噂があるから、知っている友人も居るんだろう。
 どこからそういう噂が流れるのかはわからないが、彼が、ゲイだっていう噂が。
 友達は、それが本当なのかどうかは知らない、と言っていたが。

 そんな風に過ごしている内に、2日間は過ぎ、佐原と会う日がやって来た。
 取り敢えずは、今までと変わりないように、夕食を摂って、俺の家へやって来ました。

「佐原、あのさ、俺は知らなかったんだけど、医学部の友達で、宮下准教授の事知ってる人居たよ。その……噂も、聞いたし。」
「噂?」
「うん。准教授がゲイだって……。」
「ああ、それか。俺も、部活が弓道だから、たまに、顔を出しに来る、先生が、ゲイだって噂は、聞かされたことあるよ。」

「でも、そういう噂ってヤバくないの?」
「所詮、学生の間に流れる噂だろ? 事実を確かめられる訳でもない。そういう噂話を宮下先生自身に振ったとしても、先生は、上手く受け流せるから。先生自身、そういう噂があるの知ってるし。実際のところを知ってるのは、教室でも、学部内でも上の方くらいみたいだし。」
「実際のところ……って事実なのか? それ。」
「ああ。俺は、偶然知ったんだけど、事実を知っている人間の間では、暗黙の了解らしい。噂が噂として残るのは、先生自身が、その噂を面白がって、煽ったりするからだろ。」


「佐原がゲイだって事も、宮下准教授は知ってるんだよな?」
「ああ。でも、始めっから、って訳じゃない。初めて会ったのは、弓道部の新歓の飲み会の時かな。噂は聞いた事あったけど、ただの噂くらいにしか思ってなかったし。俺、アルコール本当に弱くって、でも、まだ、そんな事認識してなかったから、周りが、飲んで盛り上がってる中で、適当に相槌を打ちながら、酒を飲んでたんだ。でも、その内、気分が悪くなり始めて、それに最初に気付いてくれたのが、宮下先生だったんだ。アルコールを覚えたての人間って、加減がわからないから危ないだろ? 先生自身は、アルコールを口にしてないから、周りのそういう変化とか、気付きやすかったんだ。実際、他の事にも、よく気の回る人だし。」

「ああ、そう言えば、佐原が酒飲んでるのって見た事無いな。飲めなかったんだ。」
「うん。本当に駄目みたい。あれ以来、口にしてないし。俺の場合、酔って赤くなる訳じゃないから気付かれにくいんだって言われた。」
「それなのに、よく気付いてくれたな。」
「俺だけじゃなくて、他の人間の事も、ちゃんと見ていたんだと思うよ。あの時はまだ、お互いがゲイだって事知らなかった訳だけど、俺の酒の飲み方とか、周囲との接し方とか見て、俺が本格的に気分が悪くなって倒れる前に、対処してくれたし。俺が、周囲の人間と距離をおいてるのも、気付いていたみたい。それに対しては、何も言われなかったけど、その点でも、宮下先生は、俺の事を気遣ってくれてたんじゃないかな。」

「そう言えば、佐原は、親は気にしない、って言ってたけど、そういう事も全然気にしないのか?」
「俺の家さ、俺が小学校に上がる前から、母子家庭だったんだよ。父親は病死してる。母親は、結構、父親が全てだったみたいなところもあって、あんまり俺に関心を寄せる事はなかった。父親の保険金もあったし、母親も、それでも何とか働いてたから、一応生活は出来てる。母親は、元々俺に感心がない上に、仕事のが忙しかったり、休みの日は休みの日で、殆ど寝てばかりだったから、当然、顔を合わせることは殆ど無くって、まるっきり、別の生活をしてた。家事も、自分の事は、自分の事、それが当たり前だったから。母親の収入なんて知れたものだから、高校も、父親の保険金と、奨学金とバイト代で通ったし、大学も、似たようなもんかな。」

「奨学金は受けてても、いずれ返さなきゃいけないんだろ? だからか、かなりバイト入れてるの。」
「まあ、そうだね。」
「休日とかも、殆どバイト入れてるだろ? それなのに、結構、俺の為に時間割いてたんじゃないのか?」
「別に、無理してた訳じゃないよ。前にも言ったように、疲れる訳じゃないし、菅野の為って訳でもないから。」

 心配するのは無駄、と言うよりも、その必要はないと思っても聞いてしまう。
 佐原は、始めから、気を利かせたり、気遣いはしないと言っていた。
 実際そうして来たんだろう。
 佐原は、俺の為ではないと言った。
 それは、佐原自身の為なんだろうか。

「俺の為じゃないって、じゃあ、何で?」
「始めの内は……どうしてなのかよくわからない。俺自身が、どうしてそうしたのか。菅野は、どんな話をしてても、俺が不快に思う事は言わないし、決して、俺のテリトリーを侵してこない。それを、居心地が良いと感じてしまったんだ。菅野は、誰とでも、そういう関係を築けるんだろうけど、それなのに何で、俺と、ずっと関係を続けてるのか不思議だった。」
「え、だって、佐原を誘ったのは俺の方なんだよ。だから、俺は、佐原の方こそ、関係を切ってこないのが不思議だった。」
「だからかな、俺は、宮下先生相手とは違った意味で、菅野に甘えてたのかもしれない。菅野から、切って来る事は無いんじゃないかって。」

 佐原が、俺に甘えてた?
 佐原は、しっかり自分の足で立っているようで、それは、ずっと幼い頃から、そうする事が当たり前のようになっていて、そうして、しっかり佐原が自分自身で己を支えなければいけないと、そうして生きてきたんだろう。
 俺は、知らず知らずの内に大勢の人間に支えられて生きてきた。
 勿論、一方的に寄りかかる訳じゃないけど。

「佐原、それは違うよ。俺は、佐原だから、必要だったんだ。宮下准教授が佐原にとってどういう存在なのかわからないけど、もし仮に、佐原が、俺に甘えてた、と感じるんだとしても、一方的なものじゃないだろ。」

 そうだよ。
 佐原が、断って来ないのをいい事に、俺も佐原に甘えていた。
 それを、『甘え』と呼ぶのかどうかわからないけど。

 もし、それが、『甘え』であっても、お互いが、求めているんなら、問題ないんじゃないだろうか。

「菅野、俺は、別にセックスを楽しくってしてる訳じゃないって言っただろ。あれには、別の意味もあるんだ。」
「でも、今は、そんなの関係ないだろ?」

 だって、欲しいのは、お互い様なんだから。
 佐原が、もう少し話そうとするのを遮って、俺は、佐原に口付けた。
 佐原も、それを素直に受け入れる。

「菅野……シャワー……」
「ん……ああ、でも、そんなに待てない。」

 一度、口付けを離して、お互い、急いでシャワーを浴びる。
 そして、今度は、ベッドの上で重なり合って、口付けた。
 舌を絡め合い、吸い上げて深く口付けながら、佐原の肌に指を這わせていく。

「…ん……ふ……」

 乳首に触れ、次第に尖ってくるのを指の腹で転がして弄る。
 声としては上がらないものの、確かに感じているように、口付けている端から吐息が漏れる。

「ふ……ん……ん……」

 割と性急に求めているのに、もう、お互いのペニスは十分昂ぶっていて。
 そのペニスを、更に追い上げるかのように、指を這わせ、愛撫していく。

 それから、佐原のアナルに指を挿入する。
 ローションの滑りを借り、受け入れられるように解してから、ペニスを挿入していく。

「ぁ……ん……ふ……ちょっと…待って…菅野……」
 やはり、いつもより、性急だったからか、佐原にはちょっときつかったようだ。
 少し待ったけれど、あまり我慢できなくて、佐原が許可を出す前に抽挿始めた。

「…ん……く……ふぅ……」
 それに対して、何とか佐原は、カラダの力を抜いて、俺の動きに合わせようとする。
 俺も、佐原の負担だけにはなるまいと、ペニスを扱きながら、アナルの裡を擦りながら突き上げていく。

 多分、もう、お互いの絶頂は近くなっていて。
 そして、それを、我慢する必要なんかなくて、そこへと導いていく。

「あ……ん……く……あぁっ…!」

 やがて、射精を迎えた。。

 それでも尚、お互いを求めるのは止める事が出来なくて。
 一度は、放っているから、今度はそれ程、急ぐ事なく、求め合っていく。

 佐原に触れられる指に感じて、再びペニスは昂ぶり、俺も、佐原のペニスを口に含み、刺激していく。
 それを、俺も欲しているから。

「は……ん……あぁ……」

 指で解されたアナルに佐原のペニスを受け入れ、突き上げられて、満たされていく欲望。
 そして、満たされて、解き放たれる二人分の欲望の証。

 その後の、まどろみの中でも、満たされるものがある。
 それは、性欲とは違って。

 そういえば、佐原の話を途中で投げ出してしまった。
 そんなに焦る事はない。
 まだ時間はある。
 きっと。

 本当に先の事なんてわからない事だらけだけれど、それでも、わかる事から、少しずつわかっていけばいい。
 どれだけ、その後ろに問題が残っていようとも。
 だから、今は、もう少しこのまま……。


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