暴走書家

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『白香桜乱-9-(完)』

 始めてきた家で、彼女と二人っきりになった僕。
 僕は、本当に何もわからなくて、行為を終えて、服はもう身につけていたけれど、暫らく、ボーっとしていた。
 そうしていた時に、彼女に『お紅茶、お飲みになります?』と声を掛けられた。
 とっさに、僕は『え、ああ。じゃあ、僕が』そう言ったけれど、彼女が、『貴方、こちら、初めてでしょう? (わたくし)が、入れてまいりますわ』そう言って、ソファから立ち上がった。

 一旦、全てのティーカップをキッチンへと下げて、彼女は、彼女と僕の二人分だけ、紅茶を入れて戻ってきた。
 それから、彼女が、家から持ってきていた、バッグから、クッキーを取り出し、僕に向かって、どうぞ、と勧めてきた。
 彼女が焼いたものだろう。
 彼女自身が、それを手に取り、口にしていたので、僕も、同じようにする。
 それは、いつも、僕が家で口にしているものと同じだった。

 けれど、僕の知らない場所。
 僕が知らなかった彼女の会話。

 今目の前にしている彼女は、僕が普段知っている彼女だ。
 『何度か、ここには、来た事があるのですか?』
 『ええ、そうね。貴方と一緒になる前には、一年に数度は。貴方と一緒になってからは……今日を除けば、一度だけね』
 『あの男性と、ですか?』
 『彼と? そういった時もありますけれど、成人してからは、彼と一緒に来る事は、殆どありませんわ』
 『もう随分昔から、ここへ?』
 『詳しくは覚えておりませんけれど、中学の頃、くらいかしら』

 中学の頃、僕が、全く知らない頃。
 十年以上は前の話だ。
 『あの男性とは、その頃から、お知り合いなのですか?』
 『そうね。彼は、(わたくし)より、確か、7つ上ですから、その頃は大学生だったんじゃないかしら』

 『知り合い』だと言っている、彼女。
 確か、男性も、知り合ってからは結構経つと言っていた。
 ただでさえ、希薄だと感じられる彼女の人間関係なのに、何故、どうやって知り合って、今尚、その関係を続けているのだろうか。

 彼女は、中学時代から、中高一貫の女子校に進み、その系列のやはり女子大に通っていたと聞いている。
 その時代の友人の話など聞いたことが無いし、親しい友人はいなかったとは聞いている。

 彼女と二人になって、どれくらい時間がたっただろうか、男性達が、戻ってきた。
 まだ残っていたクッキーを見つけて、初めて会った方の男性が口にしていた。
 『あ、これ、もしかして手作り? 美味しいじゃん。君が作ったの?』と僕に尋ねてきた。
 『え、いえ。僕ではなく、彼女が』
 『お前が? 珍しいな』
 その知り合いの男性も、その事は知らなかったのだろう。

 『そんな、お話をされに来たのではないでしょう? (わたくし)達に、というより、(わたくし)の前で、彼に話をされたかったんではなくって?』
 『まあ、そうだな。お前が、実際、結婚した、と言う話を聞いた時は、正直、少し驚いたよ。お前の家が、お前をどうにかしたかったのはわかるが、お前が、あの家を出たくない訳ではないけれど、お前とやっていける相手はいないだろうし、あの家が許したかどうかはわからないが、その内お前が、一人で出て行くんではないかと思っていたから』
 『そう……でしょうね。でも、一人で、と言うのは許されなかったでしょうね。一度、出てしまった以上は、もう戻る気はありませんけれども』

 『君は、君自身はどう感じたんだろう。彼女の家に対して。どこまで知っているんだろう』
 『僕……ですか? 初め彼女に会った時、彼女より、彼女の育ての親のほうが、必死そうなのは、気付いてましたが。それが何なのかは』
 『彼女が産まれて、彼女と、彼女の母親の存在を否定してきた家だからな。あっちとしては、体裁さえ整えば、こういっては何だが彼女のやっかいものをどうにかしてくれる存在であれば、誰良かったんだろう。まあ、勿論、彼女の性質上それは難しかったが』

 『詳しくわかりませんが、僕は、彼女と会えて、こうやって一緒にいられる事を、望んだから、そうしたんですよ? 僕は、僕の意志を無視されたとは思ってません』
 『今、現在ここにこうしていても、そう思っていられる? 君は、普通に、女性が好きなんだろう?』
 『普通に……それはどうかわかりませんけれど、以前も言いましたけれども、彼女が好きな事には変わりありません。彼女以外の女性の事も、考えたりしません』
 『君のそういう真っ直ぐなところはいい。君の言葉も、心強いと思った。けれど、君が、どこまでそういられるかは、やはりわからない』
 『貴方は、いずれは、と仰りましたよね? その為に、今日、この場と時間を設けたのではないのですか?』
 『ああ、そうだ。だが、君と彼女との事を考えると、やはり少し迷う。どこから、どう話せばいいのか』

 僕と男性との会話を聞いていた、彼女が、口を挟んできた。

 『(わたくし)、気が急く方ではありませんけれど、(わたくし)に対して、そうやってあまり気を使っていただきたくありませんわ。勿論、彼の事を考えない訳ではありませんが、(わたくし)から、申し上げましょうか。お兄様。(わたくし)は彼に知らせるつもりはありませんでしたわ。でも、お兄様はご存知でいらっしゃって、(わたくし)の誘いに乗ってこられた。そして、それを、彼に知らせようとしているのでしょう』

 お兄様……兄? 彼女の?
 彼女に、兄弟がいる事など知らなかった。
 以前、男性が言った言葉『それ以前に問題がある』と。

 『え? お前と、彼女って、兄妹だったの? 親しいのは知ってたけど』
 『お前は、口を挟むな』

 『あの、兄妹って……僕、彼女に、そういった関係の人がいるのは、全然知りませんでした』
 『でも、貴方は、(わたくし)が婚外子なのはしっていらっしゃるでしょう? 母は、正式に奥様がいらっしゃるのを知っていて、(わたくし)を産みましたわ。でも、そのままの立場でいる事に耐えられなかったのでしょうね。認知、の話もありましたわ。でも、母があんな状態でしたし、家のほうも、それを隠そうとしましたから、実際は、受けていませんわ。(わたくし)は知りませんでしたが、実の父の方は、(わたくし)の事知っていましたから、(わたくし)がある程度大きくなってから、お会いしましたわ。それから、何故、興味を持ったのか知りませんけれども、お兄様とも』

 『親父に、愛人がいるのは知ってたからね。俺も、母も。まあ、母は、快く思ってないけどね。彼女の母親だけじゃないよ。他にも。父の子もね、他にも2人いる。こっちは、認知してるけどね。初めに会ったのは、興味本位だね。話しかけても、名乗るつもりもなかったんだけど、話の流れ上何となくそうなってしまって、彼女の家に事情とかも、知って、それ以来、だね。他の2人とはあまり話さないけど、彼女とは割りと。父の方の祖父が、結構、彼女の事気に入っててね、彼女が、株を始めたのも、祖父の影響だし、たまに会ってるんだろ?』

 『ええ。そうですわね。ここの別荘もお祖父(じい)様のものですし』

 『彼女の亡くなったお母さんと、貴方の父親との間の子供、母親違いの兄妹、なんですか』
 『亡くなった? いつ亡くなったんだ? そこまでは知らなかった』
 『あれを生きていると言うのなら、まだ生きていますわよ。母は、(わたくし)の事など、わかりませんけれど、この間、病院へ行ってきましたもの』
 『あれ? じゃあ、何で、君、亡くなったって、思ってるの?』
 『え……? 彼女の母親の弟って言う男性が、そんな事を言っていたような……』
 『お前、そんな事まで、彼に黙ってたのか?』
 『黙ってたって……まさか(わたくし)彼が、そんな風に思っているなんて知りませんでしたし、病院に行くのも、平日の昼間の数時間ですし、その上、状況に変化もありませんから、取り立てて、報告するような事もありませんでしたもの』

 『勘違いの原因は、どちらにしろ、家の方だろうな。精神病院に入院させて、家に存在しないものとしようとしたんだろう』
 『まあ、母の存在も、(わたくし)も実感出来ませんけれど。(わたくし)が産まれて、本当に間もなくでしたものね。入院したのが。病院に会いに行くのも、(わたくし)だけですし』

 『あ……じゃあ、今度、病院に』
 『お気持ちは嬉しいんですけれど、基本的には症状は、落ち着いているんですけれど、男性と接する事が出来なくて。やはり、父の事を思い起こさせてしまうんでしょうかね』
 『そう……ですか』

 『で、君は、どう思う訳? 俺達が、半分とは言え血の繋がった兄妹と知って、その人間と、関係を持ってきた事について』
 『どう……ですか。あまりよくわかりませんけれど、特に違和感は』
 『それでも、彼女が好きな事には変わりない、と?』
 『ええ』
 『……これから先も、彼女が、同じ事を望んでも?』
 『彼女が望むのなら、それが、僕の望みですから。それに、より、彼女を身近に感じられるなら……』

 そうして、再び、日常の中に組み込まれていく。
 僕と、彼女と、彼女の兄と。
 時折、彼女の兄の相手を交えて。

 僕は、より深く、彼女に犯される快感を知ってしまったから。

 それから、彼女の兄に言われた事、『彼女が、実際、白い服を着ていると、怖いと感じることがある。彼女は、母親のようになるつもりはないというけれど、まるで、死に装束としての経帷子(きょうかたびら)のように感じる。まるで、生きていないかのように。でも、君がいて、実際は白いけれども、そこに僅かでも生きて血が通った桜色に染まって見える』と。

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『白香桜乱-8-』

 その日を向かえるまで、一ヶ月とちょっとあったが、男性から手紙が届いて、僕と彼女がその場所に 一緒に行くということは決まったのだが、その事について、触れる事はなかった。
 その間、1度、男性が家にやって来たが、その時も何も話さなかった。
 ただ同じように行為があるだけ。

 彼女と二人の時も同じ、そこで行われる行為とそこから得られる悦楽は変わりはしない。
 変わるとしたら何が変わるのだろう。
 そして、僕は何を知る事になるのだろう。

 生活の中でも変わった事は無い。
 家で行う家事は勿論、仕事上の事においても、毎日、毎日、全く同じではないけれど、大幅に変わる事はない。
 彼女も、僕の見える範囲内ではそう。

 彼女と一緒に出かける、そういえば、それ自体初めてだ。
 新婚旅行にも行っていない。
 彼女が、どこかに出掛ける、という行為自体もあまり想像出来ない。
 出会ってから、結婚するまで、確かに、外で会っていたのだが、一緒に暮らすようになってしまうと、家に居る事の方は、より自然に見える。

 そうして、その日を向かえ、僕は、彼女を助手席に乗せて、車を走らせて、目的地へと向かった。
 都会を離れ、それなりのリゾートなのだろう、車が走れるように舗装はしっかりしているのだが、緑が多くなってくる。
 そんな中の一軒の家の前で止まり、車を降りた。
 先に、一台の車が止まっている。
 男性のものだろうか。
 そこの空いたスペースに、僕の車も止めるように彼女に言われて、そうする。

 玄関に辿り着いて、彼女は、一応、呼び鈴は鳴らしたものの、出迎えを待たずに、扉を開けて、その家の中に入っていこうとするので、僕も、そのまま彼女についてその家の中に入る。
 呼び鈴の音に気付いたのだろう、玄関から上がった先で、男性に迎えられたが。
 男性に促されて、一室に入る。
 敷かれた絨毯と、その上に、透明なガラスのテーブルが一つ。
 そして、少し大きめのソファが二つ。

 そこに、見知らぬ男性がいた。
 僕と彼女がやってきたのを見て、ひらひらと手を振り、『やあ、いらっしゃい。久し振りだね』と話しかけてきた。
 彼女は、だまったまま、軽く頭を下げると、その見知らぬ男性が座っていない、もう一つのソファに腰を下ろした。
 僕は、取り敢えず『こんにちは。始めまして』と挨拶した。
 『どうもどうも、始めまして。よろしくね』そうにこやかに、話しかけてくる。

 『どうしてこんな事になってるんだろうねぇ』
 『何がですの?』
 『俺は、君達二人を、ここに招待したつもりなんだが、なんで、こいつまで、ついてきてるんだ?』
 『まあまあ、いいじゃない。折角だしさ。あ、お茶入れてくるよ。紅茶でいいでしょ?』

 そう言って、その初めて会った男性は、一旦姿を消し、ソーサーの上にカップを乗せ、それを四つ運んできて、そこに紅茶を注いで、それぞれ四人の前に置く。

 『俺は、今日の事は、誰にも話してない。こいつがそれを知るはずが無いのだが』
 『話さなくとも、知れてしまう事だってあるでしょう?』
 『それはそうだが、今回はそうじゃないだろう』
 『どうして、そうお感じになりますの?』
 『思い当たる節があるからだ』
 『では、それで、よろしいじゃありませんの』
 『いい? 何がだ? 当の本人を目の前にしたら尚更、よくわかる』
 『おわかりになるのならそれで十分でしょう?』

 『やはり、お前なんだな。何故、こいつに知らせた?』
 『何故? 貴方だって、お一人ではお寂しいでしょうに。それに、実際、お連れになったのは、貴方でしょう?』
 『ああ、そうだ。だが……』
 『何か、ご不満でもあおりですの? この方だって、楽しそうにしていらっしゃるじゃありませんか』
 『楽しそう……そういう問題ではない。お前は、大体、こいつの事を、知っているだろう』
 『ある程度は、存じ上げているからですわ。それとも、何か、貴方がお困りになることがありますの?』
 『俺の問題ではないだろう……。お前が……』

 『(わたくし)が、そういう風に、気を使っていただく事、あまり好まない事、貴方だってご存知でしょう』
 『だがな、やはり……』
 『それに、この場を持とうとされたのは、貴方でしょう? 何をお話になりたいのかわかりませんけれど、(わたくし)、取り立てて困るような事はございませんのよ』

 男性と、彼女が、僕と、もう一人の男性をその会話から、おいてけぼりにして、話を進めている。
 僕には、会話らしい会話をしない彼女が、男性と、話をしているのが不思議だった。
 そこへ、もう一人の男性が、割って入る。

 『まあまあ、いいじゃない? 何の話があるのか知らないけどさ。取り敢えず、お楽しみはお楽しみでさ』
 『お前が楽しむような事は何もない』
 『こういう割と感覚的に普通で、純粋な子、ってのも、面白いよね、見てても。それでいて、彼女みたいな人間とやっていけてるんだから』
 『あの……僕、全く初対面だと思うんですが、貴方は?』
 『俺? うん。君とは初対面だよ。でも、こいつから、聞いてるんじゃないの? これ。魔除けのステディリング』

 そうして、その男性は、左手の薬指に嵌っている、指輪を俺に見せた。

 『あ、じゃあ、貴方が……』
 『うんうん。まあねえ。君に手を出すのも面白そうなんだけどね、こいつが知ってる現場で手を出そうとは思わないよね。俺もこいつに、君に手を出すな、って言われてて、それを敢て侵して嫌われたくないし、全然知らないところだったら、君も応じないだろうし、無理矢理するのは、俺のポリシーに反するからね』
 『はあ……』

 『でも、やっぱり興味あるね。君みたいな子が、こいつにどういう風にされてるのか。残念ながら、俺が、直接介入する機会(チャンス)はなさそうだけど、それでも、いつもと違った場所で、やってみるのも、楽しくない?』
 『お前の勝手な感覚で決めるな』
 『この子はどうかは別にして、お前だって、それなりに楽しめるだろう?』
 『だから、俺達の感覚で、話を進めるな』
 『君は、どう? その気に、ならない?』
 『僕は……彼女が、そういう気分にならなければ、無理です』

 『ふーん。彼女が、ね。どう? いつもと違う場所、っていうのも』
 男性が、彼女に尋ねている。
 『そうねえ。もう一杯、お紅茶、いただけるかしら?』
 『それで、交渉成立、かな』
 『ええ』

 『という訳で、彼女の了承は得られたし、いつもみたいに、してくれる?』
 彼女も、新しい紅茶を手にして『どうぞ、いつものように』と、男性と僕に行為を促した。
 少し逡巡していた僕に対して、もう一人の男性の方が『彼女の為、なんでしょ?』と言ってきた。
 そう、彼女の為、彼女の望み、そしてそれが、僕の望み。

 服を全て脱いでいき、いつもほどは、勃起していないけれど、それでも、その兆しを見せ始めている僕のペニス。
 『ああ、でも、いつものもの、今日は持ってきてないんじゃないの?』
 『あ……』
 そういえば、こんな事になるとは思っていなかったから、用意はしていない。
 『何?』
 コンドームとジェル』
 『ああ、そっか。俺が持ってるから、それ、使っていいよ』
 そうして、それらを手渡された。

 いつものように、男性のズボンのジッパーに歯を立て、下ろしていく。
 ペニスを口で咥えて、口淫を施していく。
 口腔内で男性のペニスが勃起してくるのを感じながら、ジェルを手にとって、アナルに指を這わせ挿入していく。
 ペニスを受け入れる事が出来るように、挿入する指の本数を増やして、アナルの入り口を解す。
 準備が整ってから、コンドームを男性のペニスに被せて体勢を変え、四つん這いの状態で、彼女の方を見る。

 もう一人の男性は、少し離れたところで、壁に寄りかかり、腕を組んでこちらを眺めている。
 それだけ見て、視線を彼女の方に戻す。
 男性のペニスが、僕のアナルに挿入されてくるのがわかる。
 抽挿を開始されて、犯される事に慣れた僕のアナルは、突き上げられて、感じている。
 そして、絡み合った、僕と彼女の視線。
 その彼女の笑みに煽られてより昂ぶっていく僕のペニス。
 彼女の瞳に僕が映し出され、その視線に全身が包まれるように犯されている。
 その感覚に僕は全てを支配され、射精をむかえた。

 彼女は、ティーカップを置き、立ち上がって、僕と男性の方へ近付いてくる。
 僕は、いつものように、彼女の爪先に唇を落した。
 彼女は、自分の唇を、軽く男性の唇と触れ合わせた。
 行為を終え、僕は、脱いでいた服を身に纏う。

 『んー。見てるのもいいけど、俺はやっぱりねぇ。実際に欲しくなるよね。というわけで、暫らく、時間頂戴ね』
 『ったく。話は後で、ゆっくりね』
 そう言って、男性達二人が、連れ立って、部屋を出て行った。

 彼女は、ここを知っているのだろうが、僕は、初めて来た部屋で、彼女と二人きりになった。
 僕は、更に、謎に満ちた空間に包まれている。
 その先に、何を見る事になるのだろうか。

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『白香桜乱-7-』

 仕事で何度か男性と顔を合わせたが、初日の声を掛けられ、少し話をしたけれど、それ以降は、全くそういった事は無かった。
 男性は、『いずれは』と言った。
 今はまだその時ではないのだろう。
 それを態々、僕から話を持ち出すような事もしなかった。

 仕事での企画の方も、順調に進んでいる。
 これが成功すれば、僕の会社にとってもそうだし、男性の会社にとってもかなりの利益に繋がるだろう。
 上手く両社が折り合いをつける必要もあったが、お互い、妥協せず、かなり厳しい意見交換もあった。

 僕と彼女の生活面において、これは特に変わった事はない。
 男性と会った事は話した。
 それを特に、気に留めていなかった彼女。
 何を話したか、それを話してはいないけれど、少し話をした事、それは知っている。
 それに対しても、彼女は、興味を示してくる事はなかった。

 男性は、彼女に対して、僕が彼女に持っているような感情ももっていないにせよ、彼女の事を大切に思っている。
 彼女にしても、僕に『知り合い』として、その行為の相手にと紹介し、その上、彼女が運用している株から得た資金を、男性が興したという会社に対して、資金面でバックアップしているという。
 彼女は、株で大きな儲けを得ていても、彼女自身、その金に対して執着はしないし、これと言った、株以外の買い物をしないし、僕は僕で、それなりに収入があって、彼女との生活において、困る事はないのだが、儲けの内のどれだけの割合かわからないが、その男性の会社に対して当てている。

 今回の仕事においての成功は、彼女にとっても、利益に繋がるのだろう。
 まあ、そこら辺は、あまり興味がなさそうだが。
 では、何に対して、彼女が興味を寄せるのか、これも不可思議な存在だ。
 食べる事に対しても、ほぼ興味が無い。
 食事は、僕と生活するようになって、僕が作らなければ食べる事はない。
 僕には、彼女がキッチンに立つ姿、というのも想像出来ないのだが。

 だが、全く立たないか、というとそうでもない。
 結婚前の事はわからないが(僕が思うには、それまではやってこなかったと感じる)、スコーンやクッキーは作る。
 始め、その事実を知った時驚いた。
 その彼女の手作りの、焼きたてのスコーンやクッキーをいつも通りの紅茶セットと共に、僕も味あわせてもらっている。

 紅茶自体は、僕も彼女も入れることが出来るが、二人でいる時は、ほぼ確実に僕が入れる。
 彼女の入れる紅茶が不味いからではなく、僕がそうしたいからだ。
 平日は、昼間、彼女は、圧倒的に一人で家にいるから、その時は、彼女は自分で入れている。

 彼女はそんな風に自分でお菓子なら作るのだ、と思っていたから、まさか、ケーキが苦手だとは思わなかった。

 あの特別な部屋で彼女が一人、過ごすとき、小さなテーブルの上には、彼女の焼いたクッキーが置かれている事は、よくあることだし、実際彼女は、それを口にしているのだろう。
 その事は、僕にとっても特別な部屋になる以前、ただ、掃除の為にその部屋に足を踏み入れていた時から知っていた事だ。

 僕と男性が仕事で出会ってから、それからも、特に変わった事はない。
 男性も、彼女に対して何も言わないし、彼女も、男性に対して、何も言わない。
 僕は僕で、彼女にも、男性にも、何も言わない。
 そこでは、ただ、その行為があるだけだ。
 行為による悦楽を得る為に、余計な言葉など必要ない。

 そして、僕と彼女、二人きりの時でも。
 休日の昼間から、僕は、その部屋で、彼女の視線に曝されて、ペニスを勃起させている。
 下半身の衣服を脱ぎ去り、僕は、床の上に、両足を広げて、座った。
 彼女から『どうぞ、お始めになって』という言葉を貰い、僕は、ペニスに触れる。
 少し、扱いただけで、僕の欲望は高まり、先走りの液が流れ始める。
 それでも、すぐに達してしまわないように、彼女との、この時間を少しでも長く共有出来るように、ペニスを扱きたてていく。
 けれど、扱く手を緩めたりはしない。
 ただ、射精へ導く為ではないけれど、少し痛いほど強く、扱きあげる。

 想像ではなく、実際に、白いワンピースを着た彼女が、ゆったりとロッキングチェアーに腰掛けているのが僕の目に入る。
 そうして、今の僕の姿を、微笑みながら見つめていてくれるのを、感じている。
 その視線に犯されて、僕は、もう限界が近付いていて、『もう……達きそうです……』と伝える。
 本当に射精感がそこまで来ているのだけれど、彼女の許可を得るまで、何とか堪えて、『ええ、どうぞ』とその言葉を聞いた瞬間、僕は射精していた。

 僕は、床に放った自らの精液を舌で舐めとり、脱いでいた、下着と服を身につけた。
 彼女は立ち上がって、僕の方に近付いてくる。
 手にしたクッキーを、僕の口元に運んできたので、僕は、そのクッキーを口に含んでいった。
 最後の一瞬、彼女の指先が、僕の唇に触れた。
 ただ、それだけで、僕のペニスは再び、熱を持ち始めていて。
 しかし、もう、その事に対して、興味を失った彼女を目の前にして、自慰を行ったとしても、僕には、それ程の快感を得られない。
 射精する為だけの、行為は、僕にとって意味がない。

 そんな僕が、どうして、彼女を手放せるというのだろう。
 日常も、行為も、僕自身が彼女の感覚に支配される事を望んでいるのに。

 彼女は、詩集を手に取り、再びロッキングチェアーに腰を掛け、独り言を呟くように、その詩を声に出して読んでいる。
 今は、僕の存在を気にしてはいないだろう。
 けれど、僕は、その彼女の澄んだ囁くような声に耳を傾けていた。
 感情を介さない彼女の淡々とした声で、奏でられる詩。
 僕にはそれが、だからこそ、儚く、より澄んで美しいと感じている。
 消えてしまいそうな程、澄明(ちょうめい)な声。

 時計が鳴って、彼女の声が止んだ。
 詩集を閉じて、彼女が、僕の方へ視線を向けた。
 『どうなさいましたの?』彼女にそう声を掛けられた。
 何故、彼女がそんな事、僕に問うたのか、始めわからなかったが、僕は、涙を流していたようだ。
 『いえ、べつに』どうして、涙が流れているのかわからず、そう答えた僕に対して、彼女は『本当に、おかしな人ね』そう言って、微笑んだ。

 夕食を作る前に、夕刊を取りにいったついでに、郵便ポストを覗くと、一通の手紙が入っていた。
 名前は、僕と彼女宛。
 そして、差出人は、その男性だった。
 僕は、取り敢えず、封は開けず、そのままにしておき、夕食が終わった後、彼女に手渡した。

 彼女を、封の上から一瞥し、その封を解いて、便箋に目をやっている。
 彼女の表情からは、何も読み取れなかった。
 それから、僕に、その便箋を手渡してきた。

 少し先だが、日付と住所が書かれている。
 ただそれだけ。
 知らない場所だった。
 ただ、わかるのは、少し離れた場所だという事だけ。

 彼女に、その場所を尋ねると、彼女は、知っていると答えた。

 『(わたくし)と貴方に、来て欲しいという事でしょう』
 彼女はそう言った。

 僕が、彼女に行くのかと尋ねると、僕が行くと言うのなら、と。
 僕は、彼女に、彼女が行っても良いのなら、と答えると、僅かだが、殆ど見た事のない、複雑な表情をして、『貴方がそれで良いと言うのなら、行きますわ』と言った。

 男性が、『いずれは』と言ってから、結構経っている。
 男性自ら、その時を作ろうとしているのだろうか。
 そして、その時が来たら、何か変化を迎えるのだろうか。

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『白香桜乱-6-』

 彼女と僕、二人で、その部屋にて僕が彼女の微笑んだ視線によって犯されながら、僕自身の勃起したペニスに手を這わせて扱きたて、射精を迎えるか、そうではなくて、彼女の知り合いの男性を交えて、僕が男性にアナルを犯されながら、同様に彼女の視線を受け、そこに快感を得て射精を迎えるか、それは、その時その時によって異なってくる。
 やはり、男性の都合もあるのだろう。

 そして、その日は、男性を交えて、行為が行われた。
 その部屋に入った時から、僕は、その先の行為を期待して、性的高揚を覚え、服を脱ぐ前から、どうしようもなくペニスを勃起させている。
 彼女の言葉によって促されて、僕は、全て衣服を脱いでいき、その欲望の証である勃起したペニスを彼女の前に(勿論、その男性にもだが)曝している。
男性のズボンのジッパーを歯で咥え、降ろしていき、そこから半ば勃起したペニスに舌を這わせる。
 それから、ペニスを口の中に含んでいき、口淫を施す。
 このペニスが、彼女の視線と共に、僕のアナルを犯してくれるのだと、そして、そんな僕を彼女は望んでくれているのだと、益々、期待に胸を膨らませて、と言うよりも、ペニスを、張り詰めさせていくのだが。

 口淫を施しながら、僕は、アナルにジェルを塗りこめて受け入れられるように慣らしていく。
 そのアナルは、今、調度、彼女の視線に晒されている事だろう。
 直接見る事が出来ないのが、残念だ。

 コンドームを男性のペニスに装着してから、身体の向きを変えて、今度は逆に、顔を彼女の方に向け、アナルを男性に曝す。
 そして、男性のペニスが僕のアナルに挿入されてくる。
抽挿され、僕の身体を、揺さぶるように突き上げてくるその感覚を受けながら、僕は、必死で、彼女と の視線を合わせようとする。

 男性にアナルを犯されながら、彼女の綺麗な笑みによって、僕の全身が、犯されている。
 彼女が、普段、綺麗だけれども、無表情だからこそ、その笑みは、より僕を興奮させるのだ。
 犯されながら、限界が近付いているのを彼女に訴え、その時は、直接は言葉はもらえないのだけれども、より穏やかになった笑みによって、直接的に得られるアナルを犯される快感と、彼女の視線から得られる間接的な、快感によって、僕は、射精した。

 射精を迎えて、彼女は、ロッキングチェアーから立ち上がり、僕と男性の方へ向かって歩み寄ってきて、それぞれが、それぞれの箇所に口付けた。
 僕は、床の上に放った、僕自身の精液を綺麗に舐めとる。

 一連の行為を終えると、いつものように、彼女と男性が挨拶を交わし、男性は、去っていく。
 再び、彼女と僕、二人に戻った家で、これから、夕食時になるので、彼女は、自室に戻り、僕は、キッチンへ向かい、食事の用意をする。

 僕は、彼女から、男性の事について、知る必要がないと言われているし、僕も取り立てて知りたいとも思わないので、そのまま、ずっと知らずにいくのだろうと思っていた。
 彼女の希薄な人間関係の中で、どうやったら知り合いが出来るのかわからなかったし、男性が、僕と彼女の家に来る以外で、出会う可能性は、無いだろうと、どこかで思っていた。

 だが僕は、仕事の関係上で男性と顔を合わせる事となった。
 人と人との出会いの偶然性と必然性の境界線がどこにあるのかわからない。
 始めと言うのは、いつも偶然なのかもしれない。
 その偶然の出会いの中で、それで終わってしまったり、出会った事さえ気に留めなかったりする事もあれば、そこから、何らかの関係を結ぶ事もある。
 まあ、僕と男性とが、初めて出会ったのは、彼女の紹介であり、偶然ではないのだろうけれども。

 仕事のある企画で、他社との提携を組む事となった。
 それ程、相手は、大きな会社ではないが、企画としては、ある程度の規模でもあり、僕が、責任者、という訳ではないが、今後の僕が社で責任を負っていく上で、必要な経験だろうという事で、僕にもある程度の事が任されていた。
 主たる業務は、僕の会社の方にあり、それに相手の会社が参画する、という形だ。
 その時、相手の会社からやってきたのが、社長であり、代表取締役の人間と、数人のそれに関わるのだろう人間だった。
 その社長、というのが、その男性だった。

 顔を合わせた時、僕も気付いたけれど、男性も気付いたのだろう。
 だが、まあ、仕事という事ともあり、別段、表情を変えるのではなく、冷静に、仕事の話をしていた。
僕も、それが、出来ていたと思う。
 企画に関する、話し合いの中でも、それぞれ、意見が出たが、両社、ある程度、納得のいったところで、一段落つき、その日は、それで終わりとなった。

 その話し合いが、お開きになってから、僕は、男性に声を掛けられた。
 その日、僕が抱えてた仕事も、その企画の事だけだったし、断る事も出来ただろうが、特に知りたいとは思っていなかったが、こういう風に会った事で、多少は興味が湧いたのだろう、会社の近くのカフェに行った。

 そして、それぞれ、飲み物を頼んだ。
 男性から、『君は、俺の事、彼女から、何て聞いてるの?』と尋ねられた。
 『知り合いだと。特に知る必要はないと』僕は、彼女に言われている事を、そのまま男性に返答した。
 『そう。それで、君自身も、俺の事、特に気にしない、と』
 『まあ、そうですね』
 『ふーん。まあ、いいけどね』

 そう言った、男性の手元が見えた。
 左手の薬指に、指輪をしている。

 『あの……ご結婚されてるんですか?』

 年齢的に見ても、僕よりも、上なのはわかるし、まあ、一概に年齢だけで、結婚の有無を言えるわけではないのだが、特におかしくはないだろう。

 『何? 何で?』
 『いえ、指輪、されているので』

 男性は、その指輪を見て、僕に答えてきた。
 『これ? この指輪は、まあ、一種の魔除け、かな。一応は、ペアなんだけどね。結婚してる訳じゃないよ。君、始め、彼女が言った事、覚えてない? 俺が、ゲイだって』
 『え……ああ、そう言えば。でも、魔除け、って、何でですか?』
 『変に、女性が寄って来ないように、とか、あまり、結婚に関して触れられないように、とかね。』
 『はあ。あ、でも、ペアリング、なんですよね?』
 『一応、ね。まあ、だから、同じのを、持っている相手はいるんだけどね。勿論、男だよ。俺にしても、相手にしても、お互い、ある程度の付き合いはあるにしても、セックスフレンド的な付き合いだからね。相手にとっても、魔除け、だね。俺が、君に手を出しても、どうこう言う相手でもないし、相手にとっても、そう。それでも、別に、お互い、あちこち手を出してるわけじゃないから、病気に関して心配する事はないよ。彼女も、そこら辺の事情、わかってるからね。だからでしょ、俺に話し持ちかけたのだって』

 『僕よりも、彼女との付き合い、長いですよね。僕は、貴方が、彼女の事、好きなんだと思ってました』
 『付き合い……は、まあ、ともかくとして、知り合ってからは長いよ。彼女の事、好きか、嫌いか、と問われれば、好きなんだろうけどね。言ったように、俺は、ゲイだし、まあ、それ以前にも、問題はあるんだけど、彼女がそういう対象にはなったりしないよ。君に対してもそう。君が好きなのは、彼女なんだし、君自体を俺が、どうこうしようとする気はないよ』
 『まあ、そうですね。貴方が介入してきても、僕が好きなのは、彼女に変わりありませんし』

 『君が、どこまで彼女の事をそう思っていられるかは、謎だけどね。彼女にとっては、絶対に君が必要かって言うとそうではないと思うけど、かなり大きな位置にいると思うね』
 『彼女にとって、僕が? 僕にとって、彼女が今はもう、手放せないくらい大切な存在だと思ってましたけど』
 『……そういう君の存在は心強いよ。彼女と君とは、全く違うけど、俺には、何となく、運命的に感じるね。誕生日、一緒なんだろう? ある種、桜ん坊、みたいだね』
 『そう、ですか。でも、僕にはよくわからないですけれど、貴方にも、ペアリングを持つ相手がいらっしゃるんでしょう?』
 『それはねえ。俺が、君に手を出してる事、知らないけど、もし知ったら、きっと、面白がって、君に手を出しそうな奴だからね。まあ、そんな事はさせないけどね。それは、彼女が望む範囲じゃないから』

 『彼女が……ですか。貴方にとっても、どういう意味かわからないけれど、彼女は、大切なんですね』
 『まあ、色々な面でね。俺の会社にしても、彼女の資金も結構しめてるしね』
 『あ、そうなんですか』
 『君も、彼女の大方の事を知っているんだろうけど、それでも、君が知らなくて、俺が知ってる事もあると思うけど、まあ、これに関しては、彼女の承諾なくして話したくはないしね。いずれは……という気はするんだけど、今はその時じゃないと思うし』
 『いずれは、ですか』
 『何となくそんな気がね。まあ、取り敢えずは、仕事の方、よろしく』
 『あ、こちらこそおよろしくお願いします』

 そうして、男性と別れた。
 家で、仕事の話などしないけれど、彼女に、男性と顔を合わせたことを話した。
 彼女は、ただ『あら、そう』とだけ言っていたが。

 男性は、僕がどこまで彼女の事を思い続けられるか、謎だと言った。
 それが、僕にとっては謎だった。

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『白香桜乱-5-』

 彼女に、自慰行為を見つけられて、彼女の目の前で、自らのペニスを扱きたてて、そうして、精神的に、より興奮し、単なる自慰行為ではなく、得られる快感を知った。
 そして、彼女から、これからは、僕一人で勝手にしないように、と言われた。
 性的興奮を覚え、ペニスが勃起しても、物理的に、自慰行為を禁止されているわけではないから、彼女のいないところで、自慰行為を行う事も可能だったけれど、それでは、僕は多分満たされないから、そうしなかった。
 また、彼女の許可を得ずに、それを、彼女に見つけてもらえるように自慰行為を行って、誓約を守らなかった、罰として、彼女から、何らかのいさめを受けるのも、僕の心をくすぐらないでもなかったが、そうはしなかった。

 やはり、実際に、彼女が僕の目の前にいて、その視線にさらされて行うのが、良いから。
 だから、その時の為に、どうしようもなくペニスが勃起しても、我慢して、待ちわびた。
 彼女が、その事に対して、関心のない時に、行っても意味がない。
 それが、どういう時なのかわからないけれど、僕がいて、僕のそういった性的欲望に対して、興味を示し、それを微笑んで見続けてくれる時でなければ。

 初めての時は、見つかったのが、寝室だった事もあり、そこで、そのまま行ったが、その後は、ある洋室の一室で、ほぼ行われている。
 大した物はないのだけれど、彼女は、昼間など、自室にいるとき以外は、結構その部屋にいることが多いらしい。
 小さな書棚と、ソファ、ちょっとした物が置ける、丸いテーブル、それから、ロッキングチェアー。
 ソファかロッキングチェアーに腰掛けて、ただ、何もしないでいることもあれば、彼女が好きだという、ボードレールの詩集を読んでいる事もある。
 家自体がプライベートな空間だが、その部屋は、彼女にとって、その中でも、特別なときを過ごしている。

 僕は、そういう時以外、僕一人で、その部屋に入ることは殆どないのだが、いや、だから、僕にとっても、ある意味特別な部屋になった。
 僕が行為を行う時は、彼女は、ほぼロッキングチェアーに腰掛けている。
 僕のほうはと言うと、その時によって、直にフローリングの床だったり、ソファの上だったりする。
 今日は、ソファの上で、行うように言われた。
 僕は、下着の中で、既に半ばペニスを勃起させており、下肢に纏っている衣服を脱いでいく。
 全て脱ぎ終えて、ソファに背を預け、膝を立てて両足を開き、その頃には、ペニスは完全に勃起していた。

 そのまま少し間をおいて、彼女が、その先の行為を促すのを待ってから、ペニスに手を伸ばしていく。
 彼女の視線を意識しながら、ペニスを扱く。
 射精へと導くように、それでも、その瞬間が、すぐに訪れてしまわないように、かといって、動かす手の速さを緩める事はない。
 やがて、限界が近付いてきて、彼女に、その事を訴え、彼女の許可を得て、射精した。

 解放の余韻に浸りながら、僕は、床に飛び散った自らの精液を舌で舐め取った。
 そうして、彼女を見上げると、彼女は微笑んでくれている。
 再び、股間が熱を持ちそうになるのを、抑えながら、僕は、脱いだ、衣服を身に着けた。
 机の上においてある、ティーカップが空になっているのを見て、僕は、彼女に、まだ飲むかどうか尋ねると、折角だから、と、僕にもう一つカップとソーサーを言い、僕は、隣に置かれている、ティーポットを持って、台所に向かった。
 新しく、紅茶を入れ、再び、部屋に向かう。
 彼女のティーカップに注いでから、僕の方にも同じように注ぎ、それを口にした。
 純白色のセラミック製のセットで、僕達の結婚祝いに貰った品だ。

 そういえば、と思い出した。
 彼女は、興味なさそうだが、来月は、彼女の誕生日を迎える。
 何かを贈っても(例えば、アクセサリーや花束、ケーキ)、彼女は喜ばないだろうし、下手をすると、どちらかというと、不快にさせてしまうような気がした。
 それに、恐らく、今まで彼女に誕生日に良い思い出はないだろう。
 それが、一つの『記念日』という事さえなかったかもしれない。
 このまま無いものとして、過ごしていくか、結婚して1年目からそうしてしまえば、そのまま通り過ぎていくだろう。
 けれど、やはり、そうしたくなかった。

 ほぼ全てを望まない彼女に、僕が、なにか出来る事はあるのだろうか。
 取り敢えず、その話題を彼女にしてみた。
 彼女は、案の定、と言うか、誕生日の事など、全く気にしていなかった。
 それでも彼女は『嬉しいわ。気にしてくださって』と言ってくれた。
 ほんの些細な事でもいい、僕が彼女に何か出来る事はないだろうか、と尋ねてみた。
 彼女は、暫らく考えて(考えてくれた事も嬉しかった)、『そうすると、貴方の誕生日もすぐなのね』と言った。
 そういえばそうだ。
 彼女の誕生日、イコール僕の誕生日なのだ。
 彼女の事に気をとられていて、僕自身の事を失念していた。

 『そうね。些細……かどうかわかりませんし、当日、と言うのも難しいかもしれませんけれど、貴方もお気に召してくださると嬉しいわ』と彼女は言った。
 それが、どういうものなのかわからなくて、尋ねてみたけれど、彼女は詳しくは答えてくれなくて、彼女自身が支度をするから、と言われた。
 その事が、彼女の望みで、僕に出来る事なのか、と尋ねると、『そうですわね』と答えが返ってきた。

 それから、僕には何か無いのか、と尋ねられて、彼女があまり好まない事はいやだし、僕自身にしても、今年は欲しいものも思いつかなかった。
 彼女と一緒の時間を過ごせればいいし、定番だけれど、一緒にケーキを食べられれば、とそう言ったのだけれど、彼女から『ごめんなさい。わたくし、ケーキ、苦手なの。他のものに出来ないかしら』と、そう言われて、再び考え直し、ケーキのようなもののどこからどこまでが駄目なのかわからなかったが、これは、たまに、彼女が食べているから大丈夫であろう、スコーンを、という事になった。

 当日は、そうして、紅茶をいれ、スコーンを一緒に食べた。
 それから、その週の日曜日、初めて、彼女の知り合いだという男性と、会う事とになる。
 彼女からは、ただ、その日に、知人がやってくるから、という事だけを伝えられていた。
 彼女は、男性を家の中に迎入れた。
 僕も、彼女と共に、その見知らぬ男性を迎える。
 男性は、小さな、紙製の箱を手にしていた。
 それを、彼女に『誕生日だったんでしょう? 美味しいって評判のケーキだから』と言って、手渡していた。
 彼女は、それを受け取りながら『これは、わたくしへの嫌がらせですの?』と言っていたが。
 男性は、その彼女の問いには答えず、僕に、ケーキは苦手ではないか、尋ねてきた。
 僕は、好きな方なので、その旨を伝えると、2個しか入っていないし、僕が2つとも食べていいよ、と言ってきた。
 彼女も、『そうしてくださると嬉しいわ』と。
 もし僕が、苦手だったら、どうするのだろう。
 その事を聞くと、そうしたら、その男性が、自分で持って帰って食べる、と言っていた。

 ケーキの入った紙箱を冷蔵庫にしまい、例の部屋へ、おもむいた。
 彼女が、先に部屋に入り、ロッキングチェアーに腰を掛ける。
 入り口にいる、僕と男性に向かって『お入りになって』と声を掛けた。
 僕と男性は、促されて部屋の中に入る。
 男性は、彼女に向かって『大丈夫なのか?』と尋ねていた。
 それに対して、彼女は、『ええ。私では、出来ませんもの』と答えた。
 何が、なのだろうか。
 男性は、それを知っていて、彼女に尋ねたのだろう。
 そして、彼女の望みであり、僕に出来る事なのだ。

 僕に向かって彼女は、『今日は、全て、お脱ぎになって』と伝えた。
 男性は『俺は?』と彼女に尋ねていたけれど、彼女は『貴方は結構ですわ。』と答えた。
 それから、彼女は、僕に、後は男性の言葉に従うようにと。

 僕は、取り敢えず彼女の言葉に従って、身につけている衣服を、下着を、全て脱いでいく。
 何が始まるのかわからなかったけれど、僕のペニスは、勃起し始めていた。
 男性が、僕の後ろから、そのペニスに手を触れ、『うん。全然駄目、っていうわけではなさそうだね』と言っていた。
 そうして、数回、男性の手によって、ペニスが扱かれた。
 彼女の方に目をやると、彼女は、微笑みながら見つめていた。
 男性からの刺激か、やはり彼女の笑みからだろうか、ペニスは硬くなっていく。

 男性が、僕が今まで特に気にして触れた事のない、乳首に手を這わせ、その小さな突起を摘んだり、してくる。
 『どう? 感じる?』そう男性に尋ねられて、僕はありのままに『…ん……よくわかりませんけど、なんだか変な感じです』と伝えた。
 『んー。感度は悪くなさそうだね。ここも、きちんと感じられるようになるよ。』そう言われた。
 そのまま、暫らく、両方の乳首をいじられた。
 僕は、ペニスに触れたくなって、手を伸ばしたが、彼女に『駄目よ。今日は、まだ、触っては』と止められた。

 男性は、乳首から手を離すと、ソファに座り、僕をそちらに向かせた。
 そして、ジッパーを外し、その男性のペニスを咥えるように、僕に言ってきた。
 『抵抗あるかもしれないけどね、彼女の望みだと思ってやってごらん。どこら辺が感じるかは、わかるでしょう?』
 そう、彼女の望み。
 男性のジッパーに手をかけ、それを下ろしていき、半ば勃起している、ペニスを口で咥えた。
 男性に促されて、舌と唇で、ペニスを刺激していく。
 口の中で、ペニスが硬くなっていくのがわかる。
 『ふふふ。これでね、君のアナルを犯してあげるの。』

 そう言った、男性の言葉の内容が理解できなかったわけじゃない。
 実体験したことはないけれど、肛門性交を知らないわけではないから。
 けれど、それが、僕に……?
 男性が、彼女に尋ねていた。
 『どういう体位が良い?』と。
 『さあ。彼が、私の方を見られるようにしてくだされば』彼女はそう答えた。
 『んんー。後背位が良いのかな。では、彼女の方を向いて、四つん這いになって』
 僕は、言われた通りに、彼女の方に頭を向けて、四つん這いの体勢をとった。
 『ああ、それからこれ。今日は、俺がやってあげるけど、これ、君にあげるから、今度からは、君が自分でやってね。』
 ジェルを取り出し、男性は、それを指に付けて、僕のアナルに挿入してきた。
 潤滑剤によって、違和感はあるものの、スムースに入ってくる。
 挿入された指が、アナルの入り口を解し、内壁を探ってくる。
 内壁のある箇所を刺激された時、快感が走ったのがわかった。
 『……ん……』思わず、声が漏れる。
 それは男性にもわかったようで、そこを刺激しながら、更に指を挿入してくる。
 そのまま、ゆっくりと慣らされてから『もうそろそろ大丈夫かな』と男性が言って、指が抜かれていく。

 男性が自分のペニスにコンドームを装着し、再びジェルを塗りこめて、僕のアナルに挿入してくる。
 『入っていくの、わかるよね。ああ、息を詰めちゃ駄目だよ。苦しいだけだから。』
 僕は、彼女の方を伺って、その姿を、表情を見ながら、大きく息を吐く。
 その瞬間、男性のペニスが、より深く挿入されたのがわかった。
 『うん。いい子だね。ペニスも萎えてないみたいだし』
 そうして、男性は確かめるように僕のペニスに触れてきた。
 触れるだけでなく、扱いて欲しかったが、そのまま手が離れていく。
 男性は、ペニスを抽挿し始めた。
 その引きずり出されるような感覚と、飲み込まされる感覚。
 その不思議な感覚の中で、僕は、確かに快感を得ていた。
 アナルを犯されて、感じている、僕。

 未知の快感に戸惑いながら、僕は、彼女に視線を合わせようとする。
 彼女の綺麗な微笑と、僕の視線が絡み合った。
 彼女は、視線を外さないし、僕も、それを捕らえ続けようとする。
 こんな風にされながら、快感を得ている、僕を彼女が見つめている。
 そして、そこに、より興奮を覚える僕。

 達しそうで達しそうでたまらない。
 でも、中々、そこまで辿り着かない。
 『達けそうかな?』そう男性に尋ねられた。
 『ん……わかりま……せん……』
 『んー。まだ無理そうかな? どうする?』男性は、彼女にそう問いかけ、彼女は『仕方がないですわ。触れても構いませんわよ』と僕に言った。
 僕は、自分のペニスに触れ、扱いていく。
 彼女は男性に『でも、貴方が先に達してはいけませんわよ。彼に、犯されながら達する感覚を味わっていただきたいもの。』そう言っていた。
 男性は、抽挿を続け、僕は、彼女に見つめられながら、ペニスを扱き、その複雑に入り混じった快感の中で、射精していた。

 男性も、僕が射精したのがわかって、自らも精を放った。
 そんな僕と男性を見届けて、彼女が、立ち上がり、近付いてくる。
 そうして、彼女は、僕の顎に指をかけ、上を向かせる。
 『いかかでした? 少しはお気に召していただけたかしら。』そう、僕に感想を求めた。
 犯されて、感じて、射精して、それをずっと見られていて、嘘をつく事など出来ない。
 『はい。とても。』
 『良かったですわ。わたくしも、楽しませていただきましたわ。』
 その言葉も、やはりとても嬉しかった。

 僕は、感謝の印として、誓約の時と同じように、彼女の爪先に口付けた。
 『俺に、謝礼は?』
 『謝礼? 何に対して? 貴方も、楽しんでいただけたでしょう?』
 『それとは別に。』
 『何をお望みですの?』
 『君の口付けを。』
 『わたくしの? おかしな人ね。ご自身で、ゲイだと仰られているのに』
 それでも、彼女は、男性の望みどおり、軽く唇を触れ合わせた。

 『では。失礼して』
 『ええ』

 男性が、去っていき、彼女と二人きりになる。
 そして、日常の時間が再び回り始めた。

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